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第九話 Time of conviction(最終回)

「お前を、倒す!」

「倒す、ですか? 倒した所で意味などないのに、副リーダーである私を、裏切るというのですか?」

「最初からお前の味方になる気など無い!

お前は、俺達を欺していただけだ。

そんなもので、俺達を配下にしたつもりか?」

 松田信繁は、ズボンのポケットから飛び出しナイフを取り出す。

 そして刃先を向ける。

「兄には劣りますが、これでも私も数多の人間の命を奪ってきたんです。

人を殺していた頃の記憶を奪われた貴方に、私は倒せませんよ」

 言い終えると、俺に向けていた刃先を下にして構えた。

 お互い、メスとナイフで違う武器ではあるが、同じ構え。

 その状態から。

 同じタイミング、同じ速さ、同じ構えで両者は激突した。

 そして攻撃は。

 俺はナイフに振り上げる形で、信繁はメスに振り下ろす形で行われた。

 二つの刃が激突し、キィンという音を立てる。

 二度、三度、四度と俺はメスの攻撃を仕掛けるが、奴のナイフに阻まれる。

 そしてナイフとメスの打ち合いが終わり、俺は後退してから、全速力で信繁との間合いを詰める。

 そして右手を引き絞り、一撃。

 素早く戻して、また同じ速さ、同じ威力で二撃。

 同じ工程を十度繰り返す。

「何ッ!? メスの連続刺突だと?

バカなッ! 私と兄にしか不可能な筈、なのに、何故貴様はッ!」

 俺にも、何故このような事が軽々と出来るのかは分からない。恐らく、凶悪犯だった時にナイフ術を極めたのだろう。それならば、俺が死刑囚だったという奴の言葉は、間違いではないのかも知れない。

 致命傷を与えることは出来なかったが、奴に多大なダメージを与えたことは確かだ。

 次で決める。

「はあああああああああッ!」

 先よりも右腕を引き絞り、奴に接近する。

 心臓に向かって、自分の限界のスピードで右腕を突き出す。

「調子に乗るなァァァァァァ!」

 一瞬にして動いた信繁の右腕。ナイフの刀身で、メスの刃を防ぐ。

 信繁は空いた左腕を引き絞って、突き出す。

 左拳は、俺の右肩に命中した。

 その右肩からの破砕音が、俺の耳に響く。それと同時に、激痛も。

「ぐっ!」

 左肩で押さえそうになるのを我慢し、左拳をすかさず信繁の顔面に突き出す。

 その拳には奴の右手に握られたナイフが、先端から挿入され、大量に出血した。

 慌てて左拳を自分の体に引く。

 俺も奴も、お互いから距離を取る。

 自分で言うのもなんだが、お互い致命傷を与えることが出来てもおかしくない状況だった。それなのに、信繁の娘らしき人物・松田小日奈は無表情だ。まるで人が殺し合う状況になれているかのような顔。彼女は、本当に少女なのかと疑いたくなる程だ。

 俺はメスを握り直し、左手を前に出した。

 顔を下に向け、左足に重心を乗せる。

「何のつもりだ、人殺しの医者!」

 その状態から。

 右足をまず地面から離し、その勢いで左足も地面から離して飛ぶ。

「面白いですね。空中にいたまま、殺して地に落とす!」

 信繁もナイフを構え、突撃した。

 俺の胸にナイフを突き刺すつもりで飛び上がる信繁。

 その信繁の顔面を、左掌で掴む。これは攻撃の為ではなく、混乱させる為の一撃。この状況からの対処を考えるまで、数秒は必要だろう。

 俺は左掌に全体重を乗せて急降下し、信繁の後頭部を地面に叩きつけ、そのまま数センチ引きずってから、地面に両足を乗せる。

 そのまま俺は、信繁の胸にメスを振り下ろした。

 心臓を突き刺したことによる大量出血。血しぶきは俺にも掛かり、白衣とワイシャツに赤い模様が辺りに付着する。

 もう死ぬのは確定だ。

 その瞬間。驚くべきことが起きた。

 何があろうと、例え父の命が奪われる危機が来ようとも、顔色を変えなかった少女が。

 目と口を大きく開け、何も言わず死にたての父の骸に向かって近づく。

 少女は父に近づいてから、俯いた。

「お父さん・・・・・・お父さん・・・・・・・」

 涙は流さず、ただその言葉を繰り返して呟く少女。

 涙は無かったが、声は涙を我慢しているような感じにも聞こえ、なんというか痛々しかった。

 これで、良かったのだろうか?

 

 それから、数日後。

 俺と武田、早乙女と青葉と小日奈は別の警察に引き取られることになり。

 俺達が洗脳されてやったこと、洗脳の方法などを説明し、釈放処分とされた。

 洗脳されていたとはいえ、自分達が多くの命を奪った事実は消えない。だから釈放されて嬉しいかと聞かれれば、微妙だ。

 だから俺達は、償い続けるんだ。自分の幼馴染みである、彩花をはじめとする人間達の命を奪ったこと。弱さに負けて洗脳されてしまったことを。

 だけど同時に、忘れていることもあった。

 

 デスゲームの舞台となった刑務所内。

 警察が回収し損ねた物が一つある。松田信繁が使用していた携帯端末。無傷の状態でそのまま落ちていた。

 警察の調査が終わり、死体が全て消えた数日後。

 携帯端末が一瞬だけスリープモードから覚醒し、スピーカーから少年の声が発生した。

『まだまだ、ゲームは終わらせませんよ』

 そして端末は、再びスリープモードに入った。


松野心夜です。これにて汝は裏切り者なりや?2完結となります!

今まで応援して下さった皆様、ありがとうございます!

また機会があれば、3を書きたいと考えております!

それでは皆様、またどこかで!

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