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2016 0921 バイクという乗り物

作者: 双六人生

 秋雨の合間の晴れ、というわけにはいかない曇天の下、バイクを走らせる。

バイクと一言で表すとエンジン付きの二輪車を連想するらしいのだが、自転車に

乗っている期間が長かったものだから、私個人としてはエンジンの無い物を連想する。


 どちらにせよ、私はバイクを走らせるのが好きだ。


 ガソリンを喰らって騒音を撒き散らしながら走る醜態を見ていて、始めは顔を

しかめたものだけれど、慣れればどうということは無い。残念なのは屋根が無くて

雨を全身で受けねばならないことだろうか。

 翻って、エンジン無しのバイクは静かでガソリンも要らず、ついでに言えば

免許も必要ない。ただし疲れる。走るほどに疲れる。だが、それがいい。


 しばらくぶりに聞くエンジンの音は、ヘルメットのせいでよく聞き取れない。

排気量の大きい種類だから対応するヘルメットもゴツくて、半球型の簡単な

物を被って走ると捕まってしまう。排気量が大きいほど良い音を奏でる、

というか吠えるのに、もったいないことだ。

 ふと、ハンドルの中心部に据え付けたスマートフォンの画面が明るくなり、

着信を知らせてくる。意識は前方に残しつつ、画面に触れる。通話モード

になったことを確認し、スピーカーモードにして周囲の音を拾うようにする。

まともに会話など出来るわけがない。それでよかった。なにせ職場からの

着信なのだから。休日に電話をしてくるということは個人の自由時間に

割り込む行為なのだから、たまにこうして嫌がらせをしてやる。

どのみち走行中に通話するのは基本的に法律違反だ。インカムなどの装置は

持っていないし、たぶんすぐ壊してしまう自信があった。


 さて、目的地は何処にしようか。走りながら決めることが多いけれど、

夜になれば再び雨が降ってくるかもしれない。そうだ、海沿いへ行こう。

職場のお土産に何か買って行けば、さっきの電話が良くない知らせでも

少しくらいは身代わりになるだろう。

 スマートフォンを操作して目的地を入力し、案内画面が表示される。

けれど確認ぐらいにしか見ていない。ヘルメットからの広くはない視界でも、

移り変わっていく風景を見ているのが楽しいから。そこはエンジンの無い

バイクも共通していて、なぜかそれだけで楽しいのであった。

 アクセルを回し、爆音を響かせながら加速する。その時ばかりは過去と未来が

意識の外へと追い出され、今その一瞬に意識が集中する。走り続けている限り、

今という時間は永遠に続くのかもしれない、そんな錯覚を覚える。


 だからこそ、私はバイクを走らせるのが好きだ。



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