優葬
優しかった。ただ、優しくて私は彼を好きになった。大好きで、ただどうしようもなく、好きで。愛していて。
‥‥‥‥‥そして私は、それだけではどうにもならなくなってしまったと、今悟った。
「好きだよ。」
と私を抱きしめている手が、腕が、身体が、背中が。ガタガタと震えている。
「‥‥‥ごめんね。」
私がそう言って、彼の手を私の首まで持っていく。
‥‥そして彼は私の首を絞めた、ぐっと親指に力を込めて、力強く。‥‥けど、私をいつも優しく見詰めていた瞳からは、大粒の涙を流して。‥‥‥何がそんなに悲しいの?これが、貴方の優しさでしょ。大好きよ、愛してるわ。私の願いを叶えてくれたもの。だって、これが私の望みだもの。
「‥‥‥ありがとう。」
最後は貴方への感謝の言葉を言って、優しい貴方の手に抱かれて死にたいのよ。
僕は、明日死にます。それは、予め決めてある事実で、運命で、そして彼女も今日死ぬことが運命で。‥‥嗚呼、この世の神とは残酷で優しくなんか無い。
世界で一番優しいのは、僕を壊してしまうほどの君であると、僕は悟った。
(貴方が死ぬ1日前に私は死んで、貴方が死んだときに世界が何色に染まるか確かめてみたいのよ。)