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『貴殿の葬方』  作者: 魚目
1/7

水葬

(肉体を崩さないように沈めてね)


「何この大きな水槽。」

 僕が彼女の家に行くと、大きな水槽が部屋を占領していた。もともと、彼女の部屋には彼女が寝るパイプベッドと、其処まで大きくはない本棚があるだけだった。

「いいでしょ、ネットで安かったの。」

 彼女はニコニコと笑いながら、僕に言った。それにしてもこれはこの部屋には大きすぎる。

「何に使うんだい?魚でも飼うのか。」

 彼女はクスクスと笑い、イイエ、と答えた。

「私、もう少しで死ぬのよ。」

「‥‥‥は?」

「だから、その準備なのよ。」

 彼女は黒い長い髪を揺らして僕の後ろから抱きついてきた。

「私、死んだら水に帰りたいの。」

「意味わかんないよ。」

「そうかもね、けど貴方ならわかってくれると信じているわ。私には貴方しかいないのだから。」





 1ヶ月後、彼女は急死した。

 彼女には家族はいなかった、友達も親戚もいない。僕は彼女の葬式を一人で行った。

 彼女の部屋に陣取られた、水槽にたっぷりの水をいれて、彼女の遺体を、沈めた。痛めないように、傷つけないように。

「おやすみなさい。」

 彼女は水に帰りたかった。

 だが彼女の死体は、何年たってもその水槽の中で綺麗に残っていた。腐らず、痛まず、まるで僕を呪うように。


(相変わらず、君は言葉遊びが好きなようだね。)

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