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スイーツ

作者: 安堵うぃず

池袋駅東武百貨店にて。

中年サラリーマンがショーケースの前に立ち、その中に並ぶスイーツを眺めている。

しばらく経つと中年サラリーマンはそこから数個を選び、購入した。

店員の女性からスイーツの入った袋を受け取る。

中年サラリーマンの顔には、優しい笑みが浮かんでいた。


足早に改札を通り、ホームに向かい、電車に乗った。

電車はいつものように混んでいたが、さほど苦に感じなかった。

それどころか彼の口元にはいまだ笑みが残っていて、向かいに座る女子高生からは気持ち悪がられるほどであった。


しかししばらくすると、電車は突然に停車し、アナウンスが流れ始めた。

『○○駅にて人身事故が発生したため、運転を見合わせております。』


はじめはよくあることだと気にしなかったが、時間が30分40分と経つにつれ、彼から笑みが消えていった。

彼は焦っていた。

一時間を過ぎたあたりでやっと電車は動きだし、自宅の最寄駅に着いた。


急いで自宅に向かったが、帰宅するころには家族はみんな寝ていた。

かろうじて彼の妻はドアの音で目覚めたが、彼を見ると迷惑そうにまた寝室に戻っていった。


彼はふと気づき自分の手元を見た。

彼は焦りのあまり、大切なスイーツを電車に忘れてきてしまったのだ。

彼は静かにリビングのソファーに座り、そのまま朝をむかえた。


家族が起きるよりも早く出て、電車に乗り、会社へと向かった。

彼にとって会社は、決して居心地の良いところではない。

上司には気に入られず、後輩ともうまくやれていない。

業務も自分に向いていないと気づきながらも、家族を思い、我慢して働いてきた。


昨日は小さな契約が決まり、褒められるまでではなかったものの、自分なりにやりがいを感じた瞬間があった。


でも今日は普段通りの一日。

心地よく感じる瞬間は一度もなかった。


仕事が終わり、会社を出て、駅に向かった。

彼に帰る場所はない。

力なく改札を通り、ホームに向かい、電車を待った。


中年サラリーマンは線路に身を投げた。



先日池袋駅で、中年サラリーマンがスイーツを買っている光景を目にしました。

その光景から妄想して作ったショートストーリーです。

はじめ5行が事実。あとは妄想です。

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