4月2日・告白
―4月2日―
「世界一大切にするんで、彼女になってください。」
「えっ?」
部活の帰り道。いつもの時間。いつもの風景。いつもの二人。そんな“いつも“を揺るがす突然の告白。自分の声に驚いた。次の言葉には自分でもはっきり分かるくらいの動揺を含んどって、ちょっと震えとった。
「どぉいうこと?」
「そぉいうことです。読んで字の如くです。」
「……。」
「好きです。初音さんが。」
「ごめん。何て答えるんが正解なんかな?」
「どんなんでもOKです。『Yes』とか『No』とか『ごめん。ムリ。』とか『空とは付き合えない。』とか何でも良いです。アンドいつでも良いです。」
「そっか。」
「はい。」
流れる沈黙。伝えたいことはいっぱいある。でも、口が動かない。なのに、沈黙に耐えきれない。気まずい。
「えっと……。初音さん?」
「えっと……。そっか……。にしてもネガティブ過ぎるやろ……。『No』って言って欲しいの?」
「んなわけないでしょ。欲しい答えはひとつです。」
「えっと……。うん。答えは………、『Yes』私の彼氏になってよ。空。」
「はいっ!喜んで!!」
「よし。んじゃ、帰ろ。」
「はい。」
祝福するような優しい夕日を背に、歩き始める。いつもの時間。いつもの風景。いつもよりほんのちょっと近づいた空と私の距離。空は私が好き。聞いてびっくりした。でも、すっごい嬉しくて、何かくすぐったい気分。恋の味を噛み締めながら、ゆっくり、ゆっくり歩く。私の隣には、広前空。テニス部の後輩で中学二年生。私が大事にしなきゃな人。私は空が好きなんかな?まぁ良いか。今日からよろしく。今日は、恋の始まり。