表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/22

4. 知らない妹


「緑里、緑里緑里っ!!」


急に倒れた緑里を揺さぶるものの、目を覚ます気配はない。

さっきまでピンク色だった頬っぺたも色を失って、ただただ青白い。

こんなことってあるか。あっていいのか。

だって緑里は今日で16歳で。

俺のことを健気に待っていて、すごく心配をして。

それだけでも可哀想なのに、ああ、なんでなんで。

白雪姫のように眠る緑里が恐ろしくなった。

このまま父さんのように…いや、そんなことは。


「そうだ、か、母さんに電話しないとっ」


あ、いや、でも救急車が先か?

スマホを取り出しながら、出来るだけ冷静に考える。

駄目だ、駄目だ!父さんみたいに死んじゃイヤだ!!

緑里がいるから今まで頑張ってこれたんだ、…ああっ、くそ!手が震える。

震える手からするっと滑り落ちたスマホ。

俺のあ、という声と共にパチッと緑里の目が見開いた。


「っ、緑里!!おまっ、大丈夫か!?救急車呼ぶか!?」


「……、」


「なあ、緑里、なんか言えよっ」


泣きそうなくらい慌てる俺をじっと見つめて、それからゆっくりと辺りを見渡すように体を起こした。

そして再び俺を見てカッと目を見開く。


「ら、ランラン!?」


叫ばれた。

一瞬時間が止まったような気さえした。

や、だって、え、…は?

らんらん?らんらんっつったの、この子。

俺を見てらんらんって言ったよね?え?

確かに俺の名前は藍だけど、そんなパンダみたいなあだ名はなかったはず。

いや、仮にあったとしても、なんで緑里がそれを呼ぶわけ?

つーかこいつ倒れたよね?叫んで平気なの?あれ?


「みど、り?」


「ランランが!ランランが喋ってる!!」


…なんか、俺がらんらんっぽい。

よく分からないけど、興奮状態であるらしく叫びっぱなしだ。

元々緑里は大人しい子だから、意外というか、違和感というか。

とりあえずは大丈夫そうだけど、明日は学校休んで病院に行ったほうがいいのかな。


「緑里、その、大丈夫か?」


「ひっ、」


スッと手を伸ばせば、躱された。

それだけならまだしも、緑里の顔色は再び青くなって、ひどく怯えているようにも見えた。

兄としてこの反応は初めてで、いつもすり寄ってくるはずの緑里を思うとショックを受けずにはいられなかった。


「…緑里?」


じっと見つめ合うと居心地が悪くなったのか、ふっと俯く緑里。

帰ってきた頃に見たつむじには愛おしさでいっぱいだったけど、今は何故だか恐怖を感じる。

なんだろう、何か変だ。

緑里の反応もだけど、雰囲気も変わったように見える。

この世でたった一人の妹のはずなのに、どうしてか知らない人に見えた。

そう感じた自分に対してゾッとする。

とにかく目が覚めてよかった。それだけでいいはずなのに。

なんで、どうして、この子は……。


「あの、」


「どうした?」


声が震えた。

いや、声だけじゃない。


「ここ、どこですか?」


脳みそに冷水をぶっかけられた気分だった。





閲覧ありがとうございました!



少し更新に間が空きましたが、また詰めて書いていけたらな~と思います。

中々お相手の男の子が出てこず、BLジャンルということを忘れそうになります…。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
web拍手
→頂けますと大変励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ