3.終わりの始まり
のほほんとした時間がゆっくりと流れた。
テレビなんかつけずとも、自然と会話が続いて心地いい。
「それでさ、すっげー忙しくって混んでるっつーのに、先輩ずっと店いてさ」
「ええっ、先輩って、でも高校生なんでしょ?大丈夫なの?こんな遅くまで」
「さあ?毎日のように来てるしなあ」
バイトの話も終わりを向かえ、ケーキを取り出した。
母さんが買ってきたのか、緑里が買ってきたのか、はたまた二人で買ってきたのかは分からないけど、駅前のケーキ屋さんの切り分けてあるケーキが3切れ入っていた。
母さんの好きなイチゴショート、俺の好きなクラシックショコラ、緑里の好きなフルーツタルト。
どれも美味しそうでキュンとくる。
ああ、早く食べたい!
俺は最近流行り(であってほしい)の甘党男子である。
「今日ね、ケーキ屋さんのとこでね、すごいカッコイイ人見たよ」
「…へぇ」
緑里がカッコイイとか言うだなんて、なんか変な感じ。
旬の俳優を見ても「この人大根だね」しか言わないような子なのに。
「お兄ちゃんと同じ高校の制服着てたから、もしかしたら知ってるかな」
「えー、どうだろ。俺、そんなに人脈広いわけでもないしなあ。
でも、そんだけカッコイイっつーんなら知ってんのかな」
「なんかね、髪の色が結構明るくて、ちょっと軽そうな感じの人だった」
「え」
「知ってる?」
「や、知らないけど。つーか、緑里、お前そんなのがタイプなの?」
知らないと言いつつも、一人だけ心当たりがある。
そもそも髪染めてる奴って結構少ないし。
ちなみに俺はその場のテンションで染めてしまった少数派に入ってたり。
毎回点検のときに髪色で引っ掛かってはいるものの、ずっとこのまま、藍色のままだ。
「ううん、ただお兄ちゃんみたいにキラキラしてたから知ってるかなって」
「キラキラって…、照れんだろーが」
「えへへ、だってお兄ちゃんは世界で一番輝いてるもん!」
緑里はなんというか、ブラコンだ。
その一言に尽きる。
面白いくらいにブラコンだ。
可愛すぎるくらいにブラコンだ。
なんだよ、俺はシスコンだよ文句あんのかチクショウ!
あっという間にケーキを平らげ、いよいよプレゼントを渡すときがきた。
正直いうと、ちょっとドキドキしてる。
誰よりも緑里のことを知っているつもりではあるものの、気に入ってくれるかなって。
ピンクの包装紙を外す白い指、表情は明るく、嬉しそうだった。
俺は笑った。
「緑里、誕生日おめでとう」
箱を開いたその瞬間、緑里は倒れた。
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20150228 夏野 五朗