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19・キラキラ輝いて見える


気まずい空気を変えるためにも、当たり障りなくへらっと笑ってみた。

すると、緑里が眩しそうに目を細める。

その目の中にはまるでたくさんの愛情がつまっているようだった。


「お兄ちゃんは、いつもキラキラしてるよね」


「えーと、どういうこと?」


「言葉通りだよ。輝いてて、王子さまみたい」


お、王子……。

それはないと思うんだけど。

俺自身はまあまあ顔はイケてる方だと思うけど、テツや雅を見てると、自分ってそんなに特別じゃないなあと思ってしまう。

例えば赤川先輩が坊主にしても格好良いだろうけど、俺は髪型とか雰囲気に助けられてるとこが多いしなあ。


「私ね、お兄ちゃんより格好良い人なんて見たことないよ」


「いやいやいや、テツとか知ってるじゃん」


「てっぺーくんって、そんなに格好良いの?それってお兄ちゃんの主観じゃなくて?」


好みとかってあるとは思うけど、でも流石に俺とテツで俺の顔の方が格好良いって客観的に言える奴はいないだろうと思ったが、よくよく考えると緑里はテツの子供の時しか知らないんだった。

あの時のテツはチビだったし、目も大きくて、女の子と間違われたこともあったくらいだ。

それだったら納得だ。あの頃は俺の黄金期だからなぁ、そりゃ俺のが格好良いわ。

クラスで一番背もでかかったし、運動も勉強もできて、今よりも無鉄砲に明るくて、あのテツよりもモテた時代だからな。あの時は楽しかった。ほんとに。


「時間が過ぎ去るのはあっという間ってことだな」


それを過去というわけだから、どうも寂しい。

もう戻ることはできないんだもんな。


「でもお兄ちゃんはずっとずっとキラキラしたままだよ」


「……んー、ありがとな、緑里」


「本当だよ。今も思ってる。そういうところに惹かれる人はたくさんいると思うよ」


「そうだな、そうだといいんだけど」


俺にとってキラキラ眩しいものは、何だろう。

特に見当たらない自分の視界に寂しさを覚えた。


「それで緑里、他に知ってることってないの?」


「んー、そうだなぁ」


今まで出た情報でもかなり刺激的だが、「愛の証明」イベントを中止するだけの情報ってのは見つからない。

まぁゲームの中じゃ必ず起こるわけだから、中止する情報なんてあるわけないんだろうけど。


「また何か思い出したら、その都度教えてくれたらいいから」


「うん、頑張るね」


「それで、……どうするかねぇ」


「うーん……、」


「そういや、『愛の証明』イベントが始まるきっかけって何なの?どういう状況?普通に考えて、テツがあの時のこと語るとは思えないんだけど」


そういえばこのイベントクリアしたら、友情から恋愛に変わるって言ってたけど、よくよく考えたらテツは雅のことはもう吹っ切れたんだろうか?

というか、テツって女もイケるんだろうか?

雅が好きって打ち明けられた日からホモなイメージが抜けてないんだけど。


「あ!そうだ!思い出した!」


「え、なに?どうしたの?」


「そうだよ、確かあのイベントはてっぺーくんの一言から始まるんだよ!」


「?」


そんな決定的なことがあるのか、と思ってたら、


「でも、……ごめん、正確には覚えてなくて」


……まあそらそうだわな。

俺も漫画のキャラクターの台詞とか覚えてないし。

内容だけは覚えてるんだけど。


「確か、……んー、なんか、『嫌い』とか言ってたような……?」


「嫌い?テツが?」


「うーん、多分」


テツと小さい頃喧嘩したときに、「絶交だ!」と言われたことはあったが、「嫌い」と言われたことはない。付け加えて言うなら、テツが誰かを「嫌い」と言っているのさえ見たことがない。

どうもテツがそんな子供じみたこと言うとは思えないが、なんせゲームである。

シンプルな方が分かりやすいのかもしれない。


「ええっと、それでね、場所は図書室だった。それは間違いない」


「図書室?」


えー、という俺の不満顔を見て、緑里は笑う。

どうも昔からそういう場所は好きじゃない。

本を読むのは好きだけど、人がいるところで読むのは気が散って嫌だし、何より静かにしなきゃならない空間というのが苦手だった。

そんな場所でイベントは始まるのか、……憂鬱だ。


「とりあえず図書室と、テツの『嫌い』って言葉に気を付けておけばいいってこと?」


「うーん、多分、そうかなあ」


……思ってたよりも難易度低いかも?

これなら何とかなるんじゃないだろうか。

ただ厄介なのは時期がはっきりしないことだろうか。

いつまで張り続ければいいんだろう。


「イベントの中止条件に必ず必要なのが、てっぺーくんの恨みをなくすことだから、お兄ちゃん頑張ってね」


「……、謝って許してくれたら苦労しないんだけどなあ」


だけど。だけど、これは。

素直に「俺が悪かった」と言えない俺にとって最大のチャンスであり、最後のチャンスだと思う。

明日、きちんと謝れるだろうか。





こんばんは。

緑里の目の中には愛情がたくさんつまってるように見えるとランランは表現しましたが、そんな緑里の目の色は黒色。

緑里の愛情は黒色。というお話でしたー!……って、それで終わりなわけもなく。

明日はついに学校。


閲覧ありがとうございました。

明日もよろしくお願いします。


20160319



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