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17・乙女ゲームのルート


雅の書いてくれたカラーネームリストを見て、緑里はふんふん唸っている。


「み、緑里?どうかしたのか?」


「んー、思った以上にキャラが多くて……」


そうなんだ、とも思ったし、「キャラ」と言った緑里をやっぱり緑里として受け入れがたく思った。


「確か攻略サイトで見た限りでは、苗字に色が入ってる人が攻略キャラで、名前に入ってるのがライバルだったはずなんだよね」


「?」


それを言われると、なんかちょっと変だ。


黒島 哲平、青山 雅、赤川 篤、黄丹 凉


苗字に色が入っているのは、この4人だ。

だが、名前に色が入っているのがライバルとすると明らかにおかしいのが2人いる。

それが俺、松野 藍と灰見沢先生こと灰見沢 橙吾である。

俺の場合は男であるということ、そして灰見沢先生の場合は苗字にも名前にも色が入っているということだ。


「緑里、それだと俺や先生はおかしくないか?」


「お兄ちゃんはあれだけど、先生はサポートキャラ兼隠しキャラだから問題ないよ」


俺はあれって、どれ?と思う間もなく、サポートやら隠しやらよく分からないことを言われて結構焦る兄17歳。

つまりは、どういうことだ?

そんな俺の心が透けて見えているかのように、緑里は続けた。


「サポートキャラっていうのは、名前の通り主人公をサポートするキャラクターで、操作方法とか学校や攻略キャラのこととか、あとは攻略キャラの好感度も教えてくれたりするの」


「ほぉ」


「それで隠しキャラっていうのは、最初は攻略できないんだけど、ある手順を踏むと攻略できるようになるキャラクターで、ちなみに攻略中のことをルートに入るって言うの」


「……ふーん?」


なんとなーくだけど、分かった。

要するにあのイケメン先生はハイスペックなイケメンということだ。灰見沢なだけに灰スペック。……口に出したらスベるから言わないけど。


「それで、俺は?俺はどうなるの?」


「お兄ちゃんがライバルっていうのは、正直わたしもよく分かってなくて」


「え?そうなの?」


「うん、私は黒島 哲平ルートしかしてないし、しかもそれも途中までだし」


そこで「愛の証明」イベントに出会った、というわけか。

駄洒落じゃないけど、愛と藍ってかけられてるような気がするんだけど。

まあゲームとは言え、人の命に関わるイベントにそんなしょうもないことするとは思えないし、俺の名前は「あい」じゃなくて「らん」だしな。


「ただお兄ちゃんは結構悪役だったから、そういう意味なのかもしれない。主人公には優しかったけど、黒島 哲平のことに関しては冷たかったし」


「主人公には優しいの?ていうか、主人公って今みたいに現実世界の場合でも存在するわけ?」


「えーと、私もそこはよく分からないけど、攻略キャラもライバルもいる以上、主人公がいてもおかしくないなって。それで転校生について聞いたんだけど……」


「え!あの子が主人公なの!?」


頭の中には今日見た絵筆 美桜という女の子の姿でいっぱいだった。

とてもとても人を殺すだなんて考えられないような普通の美少女だった。……普通の美少女って、なんか変だけど。

でも、とにかく愛情表現として人を殺すような気狂いには見えなかった。


「緑里、なんかの間違いじゃないか?あの子、とてもそんな子には見えないけど……」


「ゲームのストーリー上では、そうなるってことだけは確かだよ。ただここは現実だし、絶対そうとは言い切れないんだけど……」


「……そういえば俺もちょっと気になってることがあって、」


「?」


「あの子の苗字、絵筆だったんだよね」


「絵筆……?」


「絵と筆、って言えば、やっぱりゲームタイトルを思わせるし、特に筆なんて書き手側のようにも思えて、なんかちょっと気になって」


「うーん、主人公の名前はユーザーが決めてたから、そこは分からないけど。でもお兄ちゃん、気になるってことは、やっぱり『そうは見えない』としても、その可能性は捨てきれない、って思ってるってことだよね?」


「……いや、んー、考えすぎって思うんだけど、ただ……やっぱり、なんだろう、上手く言えないんだけどさ」


「そうだね、とにかく警戒心を常に持ってる方がいいと思う」


「分かった」


可愛い子だったんだけどな、とは言わない。

緑里の目が真剣だったから。

もしゲームの俺が主人公に優しかったのなら、それは主人公が可愛かったからなんだろうか?ゲームの俺と緑里はどんな感じなんだろうか?

……そういえば緑里にも色が入っているけど、これは流石に考えすぎだろうか。

名前に色の入ってる人なんてたくさんいるわけだから、必ずしも関係者というわけではないだろう。特に緑里は他校なんだから、余計に無関係のはずだ。


「ところでさ、主人公があの子だとして、どうやったらどのルートに入ってるとか分かんの?やっぱ好感度とか知ってる先生に聞くとか?」


「んんー……、そこだよね。現実世界で先生が好感度知ってるってなると、結構怖いし、有り得ないって思っちゃうしで、下手に聞くのもなぁ」


「まぁそのくらい全然俺は平気だけど。あ、でも、」


「?」


「雅が最近テツとあの子が仲良いって言ってたなぁ」


「え」


雅自身は名前呼びはしてるものの、いつも俺と一緒にいるし、特に話してるのは見たことはない。

赤川先輩はファミレスに来るときは一人か、もしくはカラコンしている後輩との二人かだ。それ以外の時のことは分からないけど。

金髪の先輩は、……分かんないけど。


「ね、ねぇ、それって……、」


「もしかしてだけどさ、これってテツルート入ってる?」


「っ、そんな」


「え、ど、どうした?」


「だ、って!お兄ちゃん、何そんなヘラヘラしてるの!?」


へ、ヘラヘラ?

緑里にこんな風に怒られたの初めてだ。

ちょっとドキドキしてしまった、悪い意味で。


「『愛の証明』イベントを回避する方法、ずっと考えてて、それってやっぱり黒島 哲平ルートに入らないことしか思いつかなくて」


「え、待って。緑里。『愛の証明』って、テツルート以外起こらないわけ?」


「そりゃそうだよ!青山 雅や黄丹 凉ルートでも起こったら変でしょ、関係ないのに」


絶句してしまった。

じゃあこのゲームは本当にクソなんじゃないだろうか。

いや、もしかしたらどのゲームもこうなんだろうか。

俺が傷つけたテツの心は、テツのルートに入らない限り直らないということなんだろうか。

例えば雅のルートに入ってたら、俺たちの亀裂は主人公はずっと知らないもので、テツは、今日笑ってたテツはいなくて、まだ一人ぼっちのままだったんだろうか。

つまりテツルートならゲーム上の設定で、それ以外のルートならただの俺の罪なんだろうか。

そう思うと、後者の方がよっぽど良いと思った。思った、けど。

もしこれがゲームの設定だと言われたら、俺の心はどんなに楽になるんだろうとこっそり考えた。

そんなことを考えつつも、金髪先輩の黄丹が「おうに」と呼ぶことを初めて知った。

なんで緑里は一発で読めたんだろう。お兄ちゃん、ちょっと立場的に辛い。





こんばんは。

何となくゲームの雰囲気分かっていただけたでしょうか?

次話でもう少し詳しく説明させていただきます。

そういえば前に乙女ゲームしたことないと言ってましたが、行方をくらました半年の間できちんと攻略してきました。

楽しかったんですが、すぐ飽きてしまいました(^_^;)

飽きっぽいんですよね。ゲームが苦手で。


閲覧ありがとうございました。

明日もよろしくお願いします。


20160319



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