16・臆病な悪役
きりり、と胃が痛む。
忘れようとすればするほど、鮮明に思い出す。
馬鹿をやる毎日に、少しずつ薄れゆく記憶。
もう忘れたと思ったのに。
「ずっと聞かなかったけど、なんでテツと藍は喧嘩したの?」
「……、」
俺が悪かったのだと、その一言が言えない。
そんな自分が嫌いで、誰にも知られたくなかった。
だけど、一番知られたくなかった人に、緑里に気づかれてしまった。
「……藍?」
「俺が、」
俺が。
続きは、やはり出てこなかった。
しばらくして、どちらが先とも言えぬ同じタイミングで歩き出した。
その背中を見ている人間がいるなんて、知りもせずに。
●
「ただいまー」
「あ、お兄ちゃん!おかえりなさい」
バイトを終えて帰った頃には、緑里はいつものように家事をこなすためにヒョイヒョイ動き回っていた。
あんなに寝込んでいたんだから、と俺が言っても、やると言い出したら絶対にやる緑里。
頑固だなぁと思う一方で、ほっとする。
いつもの緑里だ。
「お兄ちゃん、」
「ん?」
「朝頼んだこと、ちゃんとしてくれた?」
「あー、うん、まあ」
「よかった!ありがとう、お兄ちゃん」
ニコニコ笑顔、あぁ、その八重歯が可愛い。
だけど、確実に誕生日を機に緑里は変わっている。
「それじゃお兄ちゃん、昨日の続きを話すね」
「……分かった」
テレビを消して、緑里に向かい合う。
今分かっていることは、テツは攻略対象者で、俺は悪役ということだろうか。
こんばんは。
皆さんは悪いことをしたときに素直に謝ることができるタイプですか?
わたしは極力そうしようとは努めているんですが、時々そっぽ向いちゃって後悔することがあります。
後悔しないように頑張ろう。ランラン。
閲覧ありがとうございました。
明日もよろしくお願いします。
20160319