奇妙な違和感
魔理沙に捕まり、アリスにした話をしていると、なんか遠くでザワザワと騒ぐ声が聞こえてきた。
「なんか騒がしいですね」
「んー? 確かパレードやってるんじゃなかったか?」
「……あ、しまったー完全に忘れてた」
「綺麗な弾幕見たいなら幽々子辺りでも呼んでやろうか? あいつなら屋台の飯食わせれば喜んで舞ってくれるだろうし」
「いや、弾幕とかそういう問題じゃなくて、見にいく約束してたんですよ」
「ふーん……、それじゃあ行くか」
「へ?」
ガシッ! と魔理沙が竜也の腕を掴み、そのまま二人の体が宙に浮かぶ。
「え?」
パチンッと魔理沙が指を鳴らすと、どこからともなく箒が飛んでくる。魔理沙が箒に腰かけ、竜也を隣に乗せる。
「落ちるなよ」
魔理沙がそう言った瞬間、ドッ! と箒のブラシの先からよくわからない光が吹き出す。
「おわっ!?」
箒は急加速し、あっという間にパレードをやっている場所の上空に移動する。
下を見ると、人間や妖怪がイカ焼きやら綿あめやらを片手にパレードを見ていた。何人かが魔理沙たちを見上げてるが、すぐに視線はパレードの方へと移る。この程度は日常茶飯事らしい。
「やってるやってる。この人数でやるとやっぱ壮観だなぁ」
「そうですね…………?」
「どうした?」
「いや、なんていうか、んん?」
竜也はパレードを見ながら思う。
これ、前にも見たことなかったか?
沢山の綺麗な球が飛び交い、弾けて光の粒子を降らす。確かに綺麗だ。綺麗なのだが、妙に引っかかる。
どこかで似たような物を見たのかと思うのだが、竜也が弾幕を見たのは博麗神社の時の一回のみだし、あの時の物とは全く違う。
「なんだろ、なんなんだろ、そういえばさっきも似たような感じがあったし……」
「竜也?」
竜也はパレードに目もくれずに辺りをキョロキョロと見回す。
人間も妖怪も楽しそうに騒いでいる。どこを見回してもそんなものしか見えない。ように感じるのだが、やはり何か違和感がある。
「…………」
注意深く、何一つ見過ごさないようにしながらもう一度辺りを見回す。
すると、他と違う場所を二つほど発見した。
パレードをやっている場所から少し離れた場所に立っている男二人。他の明るく楽しそうな雰囲気とは別に、二人の周りだけが冷たい空気が満ちているようだった。
もう一つはパレードの場所から比較的近い場所。他の誰かと喋るでもなく、屋台の食べ物を食べるでもなく、ぼうっとしながらパレードを見ている女性。
「っ!?」
ズキンッと、頭に痛みが走る。魔理沙が何か言っているが、頭に入ってこない。
「……なんなんだよいったい」
そんな竜也の呟きが聞こえたわけではないだろうが、女性が竜也を見上げてきた。
女性は竜也の顔を見て、ニコッと明るい笑顔を見せる。しかしそれは一瞬のことで、すぐに雑踏へと消えていってしまう。
「……魔理沙さん、降ろしてください」
「え? わ、わかった」
竜也は魔理沙に地上に降ろしてもらい、さっき女性が歩き去った方へと走り出す。
人を避けながら走るが、女性はどこにもいない。完全に消えてしまっている。
「どこに行ったんだ……」
思わずそう呟き、直後にあることに気づく。
雑踏に紛れて、さっきの男の片割れが立っていた。顔をしっかり見て竜也はその男を思い出す。
(確か、神波蒼さんだっけ)
蒼はこちらを一瞥した後、ゆっくりと歩き出す。追いかけようと思えば簡単に追いつける速度だった。
付いて来い、ということらしい。
若干迷いつつも、竜也は蒼を追いかけることにする。
この違和感の正体を教えてくれるかもしれない、と思いながら。




