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お酒は程々に

 少年が、道路の真ん中で叫んでいた。

 少年の側には一台の車が倒れている。少年は中にいた自身の両親を引っ張り出す。

 どちらも血だらけで、素人目で見ても助かるようには見えなかった。

 野次馬がザワザワと騒ぐ中、少年は両親に必死に呼びかける。それでも、二人は声に反応しない。

「…………クスクスクス」

 女性の笑い声が、少年の元まで届いてきた。声のした方へ少年が振り向く。

 野次馬の中に、一人の女性がいた。ニコニコと、慈愛に満ちた顔で、少年を見ていた。

 女性の口が動く。

 唇が言葉を紡ぐ。

「……、…………」

 サイレンの音が鳴り響いた。救急隊員の人が少年に呼びかけるが、彼は聞こえていなかった。

(……あの時)

 少年の意識が覚醒する。

(あの人は、なんて言っていたっけ……)

 幻想郷を太陽が照らし、

 龍神祭の二日目が、始まる。



龍神祭の二日目は、パレードが主になるらしい。

 パレードといっても、遊園地とかでやるような物ではない。僅かに入ってくる外の世界の情報を幻想郷の人たちが手に入れ、それを元に幻想郷独自にしたものらしい。

 神奈子たちも天狗や河童と一緒にパレードを行うので、今日も竜也は一人だ。

(……でも何するんだろ? パレードなんて言うくらいだから派手にやるんだろうけど)

 神奈子たちのパレードはお昼頃に行うと聞いていた。今はまだ十時なのでまだまだ時間はある。

 さてどうやって時間を潰そうかと辺りを見回すが、特に気になるものはない。

(そもそも五日間も祭りするって、長すぎない?)

 毎日屋台などは変わるみたいだが、殆どの人が酒を飲んで過ごしている気がする。中には屋台を放ったらかして飲みに行ってる人もいるし。

 未成年の竜也にも遠慮なしに酒を勧めてくる人間や妖怪を適当に流しながら竜也は里を歩く。

「……ん?」

 そうこうしていると、道の端で人形劇が行われているのを竜也は見つける。結構な数の子供がいて、中々好評のようだ。

 興味を持った竜也は近づくが、ちょうど人形劇は終わったらしい。子供たちがパチパチと拍手している。

 残念に思いながらもどんな人がやってるんだろうと気になった竜也は背伸びしながら見てみる。

 だが、そこには金髪の等身大の人形がいるようにしか見えない。置き物かな? と思えばそんなことはなく、普通に喋るし動いている。

(あぁ、きっと人形の妖怪だな。人形が人形劇をしてるって、なんか良くわかんないな)

 ……人形の妖怪ではなく魔法使いなのだが、竜也がそれに気づくことはない。彼女は一見すると人形に見える容姿をしているので仕方ないのかもしれないが。

 他には何かないかなーと思いながら再び歩き出す。

「うなぎ〜、ヤツメウナギはいいがですか〜」

「……鰻、焼き鰻屋? 屋台で売ってるのなんて初めて見た」

 思わず立ち止まって屋台を見ていると売り子の少女と目が合ってしまった。視線で買ってけーと訴えてくるので仕方なく近寄る。

「幾ついる? 全部買う? 全部ね毎度!」

「いやいや全部もいりませんよ!?」

「冗談よ。竹林とかでならともかく里でそんなことしたら巫女にボコボコにされちゃうじゃない」

「……赤い方?」

「紅白の方」

 そんなやり取りしながら竜也は焼き鰻を買う。あと近づいた時に気づいたが、この少女鳥の妖怪みたいだ。翼生えてるし。

 適当に設置された椅子に座って焼き鰻を食べてみるが、これが凄く美味い。結構値段が高かったのだが、おの美味しさならお得だったのだろう。

 見れば焼き鰻屋には結構お客が来ているようだ。買っていく人たちは一度に五個ほど買っている。竜也が食べれたのは運が良かったのかもしれない。

「「「おおー!」」」

「?」

 焼き鰻を食べ終えて一息つくと、遠くから歓声が聞こえてきた。なんだなんだと野次馬精神を出しながら声がする方へと向かう。

 が、答えはすぐに分かった。歓声が聞こえる場所でやっていたのは、酒の飲み比べだ。

「へえ、私に付いてこれるのか。二人ともよくやるね」

「そりゃあ俺は酒豪なことで有名な蛇だからな。オラオラもっと酒をもってこい!」

「……酔いとかじゃなくて腹がタプタプになって限界がきそうな気がするんだけど……。なんで俺こんなことしてるんだろ」

 頭に角を生やした少女(多分鬼)に八岐大蛇(人間バージョン)に白髪のジャージ少年(津後森朔)が大量の酒を飲んでいた。一升枡片手にワイワイ言いながら水のように飲む姿はなかなかに凄い。何人かは途中参加しようとしているが一瞬で酔い潰れているし神奈子は乗り込もうとして早苗に止められてるしって何してんだそこの奴。

「神奈子様! そろそろパレードの時間なんですから行かないでください!」

「待って早苗! ちょっと、五分でいいの! 三百秒であの三人を打ち負かしてみせるわ!」

「神奈子、それは流石に無理じゃない? というか私たちが参加したら他の人が飲むお酒もなくなっちゃうし」

 そんな三人(一人と二柱)の会話を聞いていたらしい鬼がひょうたんを掲げる。

「酒虫がいるから無問題!」

「早苗!」

「駄目ですってば!」

 引きずられる形で去っていく神奈子を見て、

「あそっか、もうすぐパレードか」

 竜也はそんなことを言っていた。

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