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外来人

「ちょいと、そこのお兄さん」

 帰る途中、道端で声をかけられた。声のした方を見ると、どうもパワーストーンを売ってる露天商のようだ。

 声をかけてきた人は言ってしまえば少女だった。綺麗な紫の髪を地面につけ、魔女のような紫のローブを着ている。

「あの、なんですか?」

「いいから、こっちに来て」

「は、はあ」

 どうせやることもないので近寄る。すると少女はジーと顔を近づけてこちらを見てきた。

「お兄さん、名前は?」

加賀かが竜也たつやです」

「たつやのたつって竜?」

「おかげで小中学校の時のあだ名はドラゴンです」

「へーへーほーほー」

 少女は興味深そうに竜也の顔を見ている。竜也の方も少女の顔を見ていると、その眼も髪や服と同じ紫で、まるで紫水晶ラピスラズリのようなことに気づく。

「お兄さん、一つ質問いいかな?」

「なんですか?」

 少女はもったいぶるように間を置き、たっぷり時間をかけてこう言ってきた。


「神様に、会いたくない?」


「え?」

『神様』

 その単語を聞いて想像するのは、誰も覚えていない神社の、誰も覚えていない二人の神。

「あの、それはどういう!」

 スッと少女は竜也の口に人差し指を当てて魅力的な笑みを浮かべる。

「ついて来て」

 そう言うと少女はいつの間にか纏めた荷物を担いで歩き出す。

 迷いはなかった。竜也はついていくことにする。

 ビルとビルの間、家と家の間なんかの、あまり知られていない道とも言えない所を歩いていく。

 そうやって歩いていると、いつの間にか山を登っていた

 少女は突然立ち止まり、竜也の胸に倒れこむ。

「え!? あ、あの、大丈夫ですか?」

 少女は笑顔のまま、竜也の首に手を回し、何かを着けた。

「あ、あの? 一体これは……?」

「それはとある神器。のレプリカ」

 竜也は首にかけられた物を手に取る。

 それは勾玉だった。半分が白で、もう半分が黒の石で作られている。

「人でいたいなら、外しては駄目よ」

「あの、それはどういう……?」

 竜也が再び少女に目を向けようとした時には、もう少女はいなかった。

「え、あの、帰り道知らないんですが……」

 少女を探して辺りを見渡したその瞬間、

 バゴン! という音がどこからともなく聞こえてきた。

「へ?」

 音と共に感じたのは、寒さだ。

 寒いのだ。今は五月で、段々暑くなってくる季節のはずなのに、急に温度が下がったのだ。

「……と、とりあえず帰ろう。道なんて携帯使えば楽勝だようん」

 ポケットから最近買い換えたばかりのスマホを取り出す。圏外の表示がそこにはあった。

「なんで!?」

 風も吹いて来た。とりあえず動こうと竜也は足を動かそうとして、ずっこけた。

「のわっ!」

 地面に倒れる中、その音を聞いた。

 ゴッ!! と何かがさっきまで竜也の首があった辺りを通り抜けた。

 バキバキバキッ! と木が倒れて行く。

その光景を地面に倒れたまま、竜也は呆然と見ていた

(なに、なに!? 何が起きたらあんな感じに木が倒れて行くの!? 何が今通り抜けたの!?)

「そこの貴方!」

 いつの間にか一人の少女が降りて来ていた。落ちてきたのではなく、降りて来た。

 少女は白いブラウスを和風に変えたような服に、黒と白の市松模様が描かれたミニスカートを着けている。

 ちなみに竜也は地面から見上げて見る形になってるがスカートの中は見えそうで見えない。

「貴方人間、よね? しかも外来人」

「え、にんげ、がいらいじん?」

「そうよねそうよね。そんな格好してるのだもの外来人よね」

 そんな格好と言われて竜也は自分の格好を見る。帰りに高校に寄るつもりだったのでワイシャツにネクタイと普通の学生服だ。

 少女は一人納得したようにして話しを続ける。

「最近さあ、私もストレス溜まってるのよ。分かる? 暇した上司に延々と話かけられる気持ち」

「な、なんとなーく分かります」

「そう、話しが早いわね」

 竜也が立ち上がりながら対応すると少女はとても可愛らしい笑顔を浮かべて言う。


「じゃ、鬱憤晴らしに死んでくれない?」


 ドゴンッ! と大砲の物と似た音と共に何かが放出され、竜也の腹に当たった。

 メキメキ! と聞いちゃいけない音を竜也の耳は捉えた。

「ごっ、ふっ!?」

「いやー、里の人間だと色々面倒なことになるのよね。貴方が外来人で助かったわね。おかげで思う存分『痛めつけられる』」

 少女が何かを言っていたが竜也は聞いていない。いや聞くだけの余裕がない。

 恐怖で満たされた心が取る行動は単純だ。恐怖から逃げるため、竜也は全力で走り出していた。

「天狗から逃げられるわけないよね。まあ、ちょっとくらい遊んでもいいけどね」

 少女は軽く地面を蹴って宙を浮き、余裕の笑みを浮かべて竜也に告げる。

「鬼ごっこしましょうね、外来人」

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