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不思議なヤマネ

時間にして、どれくらい経ったのだろうか

「よっこいしょ」

日の光を浴びながら竜也は起き上がる。身体は随分と軽かった

「・・・・・・」

ぐるぐると身体を動かし、少し跳ねたりする。身体に異常はなく、むしろ昨日より元気だった

(昨日の夜、何か声のようなものが聞こえて気分が悪くなってそのまま気絶したのに、昨日より元気とはどういうことなのだろう?)

そんなことを考えていると、唐突に腹が空腹を報せる音を鳴らした

「・・・お腹すいた」

竜也は何か食べようと早苗を探す。流石に勝手に食材を使うわけにはいかないからだ

「早苗さーん。早苗さー・・・ん?」

台所に向かうと、机の上におにぎりとメモが置かれていた

『竜也さんへ

里に行ってきます

本当は竜也さんの近くにいるべきなんでしょうが私じゃないといけないことがあって無理でした

神奈子様も諏訪子様も同様です。すみません

おにぎりで足りなければ何か作ってください

追伸

危ないので神社からは出ないようにしてください』

そんなことが書かれていた

竜也はありがたくおにぎりを頂戴する。結構数があったのだが全部食べた

神社の時計は午後一時を示していた。竜也は昼まで倒れてたということになる

(昨日のあれ、なんだったんだろ?)

単に気分が悪くなったにしては異常だった。つまり竜也の知らない領域、魔法なんかのオカルトが原因なのだろう

だがその場合、竜也に出来ることなど何もない。非常識についての技術や知識は竜也には一切ないのだ

仕方ないので絵でも描いてようとスケッチブックを持って神社を適当に歩いて何を描こうかと思う

「・・・・・ん?」

すると、ヤマネを見つけた

いや、ヤマネと呼ぶのは正しくないかもしれない。体色が白でタテガミが青く、瞳が赤いヤマネなど少なくとも竜也の記憶にはいない

だが竜也にとってそんなことは大して重要じゃない。絵を描くのにいちいち品種を調べなどしないからだ

というわけで早速描こうとするのだが、その前にヤマネに動きがあった

具体的に言えば、竜也に向かって全力疾走してきている

「わわっ⁉︎」

慌てて避けようとしたその瞬間、ヤマネが大きく跳躍した

そのままくるりと空中で一回転し、竜也に向かって飛び降りてきた所を竜也は受け止める

ヤマネはそこで止まらず竜也の腕を伝って肩に登る

竜也は「ここでひっかき攻撃でもするのか⁉︎」とビビっていたが予想に反してヤマネは何もしてこなかった。ただ竜也を見ているだけだ

「なんだろう。その眼、何処かで似たようなのを見たような・・・・・?」

竜也もしばらくヤマネの瞳を見つめ、気付く

「そうだ!猫が餌を寄越せと言ってる時に似てるんだ‼︎」

ペシペシとヤマネは竜也の顔を叩く。早く寄越せということらしい

だが竜也にはヤマネが何を食べるかなんて知らない。とりあえず何か見せて反応を伺おうと思い台所へ向かう

台所に入った瞬間、ヤマネは竜也の肩から降り立ち、冷蔵庫をペシペシと叩く

「・・・今さらだけど、冷蔵庫を動かす電気は何処から来てるんだろ?」

そんなことを呟きながら冷蔵庫を開ける。しかしそこにある物は幾つかの野菜のみだ

ヤマネは戸棚をペシペシと叩いている。そこには金網があった

金網を取り出し、野菜、正確にはトウモロコシを見て、竜也はあることを思いつく



「〜〜♪」

このヤマネ、焼きトウモロコシを食べてご機嫌である

そもそもトウモロコシは夏に作られる物なのに何故あるのかという疑問もあったが、竜也はそのことについて考えないことにした

非常識の世界だ。竜也の常識で考える方が間違っている

というわけでよくわからないことを横に置いて、竜也はヤマネの絵を描いていた。ヤマネは焼きトウモロコシに釘付けなので描きやすかった

「やっと見つけた」

と、そこで誰かがヤマネを抱き上げた

赤っぽいピンクの髪にシニヨンキャップ、怪我でもしてるのか右腕が包帯で包まれている

その女性は竜也を見てぺこりと頭を下げてくる

「すいません。うちのペットがお世話になったようで」

「ああいや、こっちも絵を描けたので別にいいですよ」

「・・・ん?」

何か引っかかったように女性は首を傾ける

竜也はスケッチブックをしまい自己紹介をしておく

「加賀竜也と言います。現在この神社に居候中の身です」

「えと、私はいばら華扇かせん。この山に住んでる仙人です」

「仙人・・・?」

竜也は華扇と名乗った女性を見て首を傾げる

竜也の仙人のイメージは、もじゃもじゃの髭を生やしたお爺ちゃんだ。こんな若い女性が仙人と言われても何となく飲み込めない

それに

「仙人というより、こう、里で見た妖怪のような感じが・・・・」

「へ?」

妖怪という単語に反応して華扇は妙な顔をする。失礼だったかと竜也はフォローしようとする

「え?ああいや、別に仙人らしくないとかそういうことじゃないですよ?」

「・・・どうして、私が妖怪のようだと?」

華扇は興味深そうに竜也に問う

「あー、その、特に理由と言えるものじゃないんですが・・・」

竜也は感じたことを上手く言葉に出来ずに質問に質問を返してしまう

「あの、仙人って普通の人が修行してなるもの、ですよね?」

「まあ、そんな感じですが」

「・・・・茨さんは、人間に見えないんですよ。人間らしい感覚が一切ないというか。妖怪ですと言われた方がしっくりくるっていうか」

そこまで言って、竜也は華扇に頭を下げる

「すいません。自分でも分かってないのにこんなことを言って」

「いえ、お気になさらず」

竜也にそう言った後、ポツリとこんなことを呟く

「(それにまあ、間違ってませんからね)」

「?」

そんな中、華扇に抱き抱えられた状態のヤマネが不満そうにバチバチと火花を散らしていた

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