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赤い眼

 太陽がそろそろ隠れそうな時間。

「「…………………………………………」」

 少年二人は、自分で設置した椅子に腰掛けてぐったりしていた。

 二人の周りの色が妙に薄い。片方は魂が口から出てるし、もう片方は「燃え尽きたぜ……真っ白にな……」と呟いている。二人とも案外まだまだ余裕なのかもしれない。

「おい! そこの二人手伝ってくれ!」

 と、そこで二人に声がかかる。

「ワカリマシター」

「イマイキマース」

 ゆらりと、ゾンビのような動きで二人は手伝いにいく。

「竜也、今って何時か分かるか?」

「すいません朔さん。時計持ってません。携帯も消えました」

 この作業をしてるうちに二人はだいぶ仲良くなっていた。

 白い魂を連れた黒ジャージの少年、朔は呟く。

「俺ら働き過ぎだよな。どう考えても」

 質素なシャツとズボンに黒髪、幻想郷では外来人と呼ばれる少年、竜也も呟く。

「なんで俺らと同じくらいの人がいないんですか?」

「知り合いから聞いた話だけど、ここ十年くらい女の子しか生まれなかったらしい。だから俺らくらいの歳の男がいない」

「ははっ。それじゃあ朔さんは一人だけ男だからモテるんじゃないですか?」

「残念だが、俺も一年前に記憶なくして来たばっかだからなあ。それに妖夢がいるからモテたいとも思わないよ」

「リア爆」

「リア充爆発しろの略か?」

「なんで知ってるんですか?」

 ベラベラ喋っているうちに辿り着いたのは広場だ。十人近くの人間が龍の像の周りに集まっている。

「あの像が龍神ですか?」

「ああそうだ。幻想郷最高神である龍神を、人間が忘れないように河童が作ったんだとさ」

「……河童、河童か…………」

「どうした?」

「なんでもありません」

 竜也はつい昨日河童らしき少女に自分の携帯を壊されてそのままだったりする。

 そんなこと知らない朔が、龍神の石像の眼を指差す。

「あの像の眼の色で天気が分かるんだとさ。白で晴れ、青で雨、灰色で曇りだ」

「天気予報も出来るんですね」

「おい、そこの二人! こっち来てくれ!!」

 筋肉の塊みたいなおっさんから指名がかかる。

「こいつを持ち上げて向こうに運ばないといけねえんだ。一緒に持ち上げてくれ」

「分かりました」

「鬼にでもやらせればいいのに……」

 朔が何か文句を言いながらも手伝いに入る。竜也も手伝おうと近付くいた、その瞬間。

 ゴンッ!! と突然後ろから誰かに殴られたような感覚がした。

「っ!?」

 慌てて後ろを振り返るが、誰もいない。

 そう、誰も。

 さっきまで沢山の人が作業をしていたのに、だ。

「え? えぇ?」

 誰もいなかった。さっきまで龍神の石像を持ち上げようとした人達もいなくなっていた。

「さ、朔さーん! すいませーん! 皆どこですかー!?」

 叫び、人を呼ぶが、答える者がいない。

 困り果てた竜也は、何故か龍神の石像を見た。

 その眼の色は、

「あ、か? 赤色って、いったい何を……」

 そんな竜也の呟きの直後、ガタッ、ガタガタッ、という音がした。その音を、誰かいるのだと竜也は勘違いする。

「誰かいるんですか!? お願いです! 出てきてください!!」

 ガタガタガタガタガタガタッ! と音は段々大きくなってくる。

 そこで、ようやく気がついた。

「……あ」

 その音は、龍神の石像から出ていた。石像がガタガタと動いていた。

「や……」

 脚が震えた。何故かは知らないが、凄く怖かった。

「……たつや」

 いったい何が怖いのか。

「おい、竜也」

 知りたくもあり、知りたくなかった。

「ふんっ!!」

「ごふっ!」

 突然腹に殴られたような痛みが走り、竜也は腹を抱える。

「おーい、竜也。目は覚めたか? 後殴ってすまん」

「…………朔、さん?」

「おい、本当に大丈夫か?」

 気が付けば周りには沢山の人が戻ってきていた。

「いったい、何が……」

 彼らの視線は、龍神の石像に集まっていた。

 正確には、石像だった物だ。龍の形なんて、もうしていない。完全に石クズとなっている。

「龍神様の石像が」「なんでいきなり……」「見ろよ、龍神様の眼が」「赤色だ」「異変が起きてるんだ」「石像が壊れたのもそのせいなんだ」

 ざわざわと騒ぐ声の中から、諏訪子の声が聞こえてきた。

「……まさか、ねえ」



「おーい、亜美! 炎は足りてるか?」

 幻想郷の何処かで、少年は問う。

「足りてる足りてる! これだけあれば神器をどれだけ作れるか」

 少女の声。テンションが上がっているらしい。

「亜美さん、私益の為に素材を無駄にしないでくださいね」

 窘めるように言う少女の声は、氷のように冷たかった。

「よぉぉし! 元気注入しちゃいますよぉぉぉ!!」

 元気が有り余ってそうな少女の声。

「柚さん! 出し過ぎッス! 壊れちゃうッス!」

 慌てるような少年の声。

「柚さーん。出力が足りてないですよ〜」

 ふわふわとした、本質を掴めそうにない声。

「もっとか! ならば根性もちゅううう!!」

「沙良さん! 嘘言わないでくださいッス!! 本当に壊れちゃうッス!!」

 ギャーギャー騒ぐ少年少年の声を聞きながら、足りてるかを聞いたリーダーである少年は少年少女に聞こえないように呟く。

「やれやれ、クソッタレな神様に復讐出来るのはいつになるのやら」

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