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誤魔化し

「「……………………」」

 加賀竜也は休憩所の畳にぶっ倒れていた。

 お昼休憩とかいうやつなのだが周りから見れば体調不良で倒れてるようにしか思えない。

 因みにその横には白い髪の黒ジャージを着た竜也と同い年くらいの少年が竜也と同じように倒れている。なんかふわふわと魂のような物が浮いてるが一応生きている。はずだ。

「竜也さーん? 生きてますかー?」

 竜也が顔を上げると早苗がいた。その手にはおにぎりと漬け物が乗った皿がある。

さくさん、大丈夫ですか?」

「……安心しろ。半分しか死んでない」

 隣の少年が結構危ないことを言っていた。竜也は知らないが、本当に半分死んでたりする種族だった。

 その少年を心配して見ている少女も、少年と同じように魂がふわふわ浮いていた。竜也としてはそっちより腰とかにある剣の方が気になるのだが一々聞くほど体力も気力もない。

「食欲はありますか?」

「はい。吐き気とかはしてないんで大丈夫です」

「じゃあとりあえずおにぎりでも食べてお腹を満たしてください」

 早苗から貰ったおにぎりを食べる。腹を満たすより休んでいたかったが後で腹か減ってきても困るので食べておく。

 竜也がおにぎりを食べていると、遠くから太鼓の音が鳴ってきた。休憩は終わりのようだ。

 残っていたおにぎりを口に詰め込んで無理やり飲み込む。

「それでは行ってきます早苗さん」

「倒れないようにしてくださいね」

 早苗に見送られながら、竜也は歩いていく。

 同じ場所にいた、少年とは別の道を。



「よっこいしょ」

 荷物を運び終わった竜也は辺りを見渡す。

 沢山の人(妖怪)達が荷物を運んだり何かを組み立てたりしている。

 とはいえ、今日はあくまで準備。祭りは明後日に行われ、明日はそれぞれの店が準備するための日らしい。

(丸一日店の準備に使うってよくあることなのかな? 地元の祭りは朝から準備して夜には始めてたんだけど)

「ん?」

 竜也が辺りを見渡していると、さっきの少年と霧雨魔理沙と名乗った魔法使いがいた。

 竜也は少年、正確にはその近くを浮遊している白球を見ながら思う。

(まだ魂出てる。……もしかして幽霊?)

「おらおらどいたどいたー!!」

 ドドドドドドドドド!! と、筋肉ムキムキの大人数名が走り去って行った。土煙が巻き上げられ、視界が少し塞がれる。

 その直後だった。

 ゴッ!!という音と共に、竜也の身体が光に埋もれた。



 白い髪の少年、津後森つごもりさくは大変疲れていた。

 つい最近まで色々なことがあった。ほんの数日のはずなのに数ヶ月動き回ったように感じていた。

 まあ彼の能力が『速度を操る』なので、そこも関係しているのかもしれないが。

 色々あって恋人になった半人半霊のご主人様のおかげで疲れを少しも取ることが出来ず、更には恩人である境界の妖怪に祭りの準備に駆り出され、そろそろ倒れてもおかしくないんじやないのかと自分でも思い始めていた。

 そんな彼の目の前には、魔法使い(泥棒)の霧雨魔理沙がいる。

 嫌な予感しかしなかったが、放っておいたら何だかとんでもないことをしそうなので話しかける。

「よお魔理沙。何やらかすんだ?」

「何で私が何かやること前提なんだよ……私は人を待ってるだけだぜ」

「そんな危なそうな弓を持って、一体誰を射抜くつもりなんたか」

「よおし分かった。月の神から貰った弓の力を見せてやろう」

「物騒過ぎる! やめろやめろ向けるなすみませんでした!!」

 両手を上げて謝罪すると魔理沙は笑う(弓が朔の方を向いたままだ)

「冗談だよ。これは威力が高すぎて里の中じゃあ使えないんだぜ」

「何で持って来たんだよ」

「神に貰ったマジックアイテム、中々に人の目を集めそうじゃないか」

「客引き用かよ」

「おらおらどいたどいたー!!」

 ドドドドドドドドド!!と、筋肉ムキムキの大人数名が走り去っていき、大量の土煙を巻き上げる。

「ゲホッゲホッ! もうちょっと落ち着けばいいのにな」

「くしゅん!」

 朔が文句を言い、魔理沙が可愛らしいくしゃみをする。


 そのくしゃみのせいか、

 ゴッ!!という音と共に、弓から光が放たれた。


「……ま、まま、魔理沙、さん?」

「へ? いや、私は何もしてないぜ!? 弓の力だよ弓の元からある力!?」

「どっちでも良いよ! てかさっきそこに誰かいなかったか!?」

 周りの人や妖怪もザワザワと騒ぎ始めている。まあ目の前でいきなりビームが撃たれたら当然で、パニックを起こしても不思議じゃなかった。

「やばいやばい! 妖精や妖怪はともかく人間はあんなのくらったら死ぬ!?」

「ええい土煙が邪魔だ!!」

 そんなこんなで騒いでいると土煙が消えてきた。朔と魔理沙はそこにあるであろうグロテスクな死体を勝手に想像して気分が悪くなる。

 土煙が完全になくなり、姿が現れる。

「へ? え? な、なに今の?」

「……あれ?」

「よ、良かった! 生きてる! 五体満足だ!!」

「ビームが目の前で止まったんだ! 良かった良かった」

 そこにいた少年は何が起きたのかよく分かってないのだろう。幻想郷では見慣れない服を着ているので、もしかしたら外来人かもしれない。

 朔がどう説明したもんかと悩んでいると、魔理沙が少年の腕を掴み取る。

「ほら竜也向こうに早苗がいたぞ行けよほらほら!」

「え? 何でって魔理沙さんそんな引っ張らないでください!!」

 どうも事情を知らないうちに誤魔化してしまおうという考えらしい。そのまま少年は連行されていった。

 呆れながらも祭りの手伝いに戻ろうとして、あることに気付いた。

「……?」

 道の地面が端から端まで線引きするように削られていた。ただし、少年のいた場所の周りだけは無事だった。

 まるで、あの少年の周りだけが、光の影響を受けなかったかのように。

津後森朔という人物は、別の話の主人公です

『東方太陰塔』

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