独り
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前作『東方太陰塔』
読まなくてもある程度は分かるように頑張ります
電車に揺られて三時間、ようやく目的地に辿り着く。
そのまま歩いて移動する。最初は辿り着く頃には疲れ切っていた気もするが、もう三年近く通い続けているからか体力はある方だった。
目的地に着き、いつもの定位置に座り込み、スケッチブックをカバンから取り出す。
スケッチブックには、ここ一年ほどの絵がある。そしてそのスケッチブックとは別にもう一つスケッチブックがある。
そのスケッチブックの一枚目を見る。大きな神社と、巫女さんのような人が描かれている。
二枚目には、巫女さんの顔が描かれている。そっくりそのまま描いたので飛び出して来ないかと聞かれたこともある。
三枚目には二人の女性が描かれている。自称神様の、中々に愉快な人たちだった。
その後も、ずっと彼女達の絵が描かれていた。
「ここに、証拠はあるのに」
悲しそうに呟く。
「彼女達がいた、神社があったという証拠はあるのに」
風が吹いた。バサバサとスケッチブックが暴れる。
「……何処に消えたんだろうね」
湖の近くの空き地。
かつて神社があったはずの土地で、
少年は独り呟いた。