日常1
ジリリリリリリリリリリリ・・・
けたたましい目覚ましのアラームがなっている
まだだ・・・まだ眠っていたい・・・
しかし朝起こしにやってくるお節介系幼馴染並に睡眠を妨害してくる。
朝とは残酷にやってくるなぁ・・・ そんなくだらないことをいまいち回ってない頭で考えながら
アラームを止めた。
朝日が部屋に差し込んでくる。一度大きくのびをして、布団からでた。
家から出るとすでにニ人の友達が待っていた。
「おそーい!また夜中までアニメみてたでしょ!」
ふん!とそっぽをむいたのは神谷茜、小柄で二つ結びが特徴の同級生だ。
「まあまあ、悠梨がオタクなのは前からだし、しょうがないよ!」
あまりフォローになっていないフォローをしてくれたのは形山桜子、茜とは逆で背が高く、でこだしで色素の薄い髪の同級生だ。
「ごめんごめん!昨日は新アニメがいっきにはじまっ・・・」
言い終わらないうちに茜のグーパンチがとんできた。くそ、相変わらず人間離れした怪力だな。
「それで頭いいとかむかつく!ばかばか!」
「茜!女の子が女の子をグーで殴るのはだめだよ!悠梨!大丈夫!?」
茜パンチをくらった私の顔面は鼻血でおそらくぐちゃぐちゃであろう。泣きたい。
「ふん!悠梨なんかそのまま出血死したらいいんだ!ばか!」
「なんでアニメ見ただけでここまで罵倒されないといけないんだよ!個人の趣味でしょ!」
「ばかばかばか!悠梨のばぁーか!」
そのままそっぽを向いて歩いていった・・・私の目の前にポケットティッシュを落として。
「べっ、別に!鼻血が汚いから、し、心配なんかしてないんだからね!」
やれやれ顔で見守る桜子、私は茜の謎のツンデレによって落とされたティッシュを拾い、血をふいて二人を追いかけた。
私たち三人はいつも学校に30分前に着く。部活の朝練をやっていた頃からずっとだ。
部活を引退した後にまでなぜ早く行くんだ、と昔茜に講義したがなぜか茜パンチをくらったのでそれ以来何も言わないことにした。
「・・・またやってるよ」
茜が舌打ちしながら言った。視線の先には、2人から一方的に殴られる女子生徒がいた。
「・・・風香」
桜子が呟く。いじめられているのは城田風香元陸上部の部長、私達の部長だ。
「・・・ねぇ、いこうよ。気づかれるよ」
茜が私と桜子を引っ張る。桜子は複雑そうな顔で見ていた。
そういえば、桜子と風香は昔同じ孤児院だった、幼馴染なんだったっけ。
「あ、私、職員室行かなきゃ・・・。ごめん、2人とも先行っててー」
「えー、悠梨なんで学級委員なんかになったんだよー。ばーか・・・。桜子、いこー」
2人を見送った後、私は職員室に向かわず、風香のもとに行った。
幸い、あのいじめっ子たちはどこかへ行ったようだ。
「風香、大丈夫?」
「・・・なんだよ、ぶす」
眉上まで切りそろえたぱっつんの下から、くまのついた鋭い目が私を捕らえた。
風香の目つきは昔からよい方ではなかったが、最近は更に悪い気がする。
「あー、人のことぶすとかいっちゃいけないんだー、せーんせーにいっちゃうぞー」
「・・・だるい。何か用?」
「別にー。風香、なんでやり返さないの?脚に痣、できてるよ・・・」
「あんたも神谷に殴られても何もしないじゃん。鼻血、止まってないよ」
えっ、止まってないの・・・。茜パンチ凄いなおい。
「・・・でもあんたらは仲良しでやってんだよね。ばからしい」
ぽんぽん、とスカートの埃を落として風香が立ち上がった。
「いいと思うよ、そういう友達ごっこ」
おもいきり私を睨んで風香は去って行った。
部活をやっていた頃はちょっと口が悪いだけのいい奴だったのに、あの日から変わってしまった。
私達7人の陸上部が、互いを裏切りあったあの日。
私は首をぶんぶんと振った。思い出したくない。
思い出してはいけない。そう私の記憶がいっている。
「・・・悠梨?」
はっと、声のした方を振り返る。そこには桜子が立っていた。
「どうしたの?職員室はもう行ったの?」
「え、あぁ、うん。」
「・・・風香に会いにいったんだね」
ドキッとした。桜子は怒るわけでもなくただ、まっすぐ私を見て言った。
「・・・悠梨は優しいね」
「優しくなんかないよ。私も結局、見てみぬフリだし」
「そうじゃないよ。・・・ううん、やっぱいいや。教室戻ろうよ。茜が怒るよ」
寂しげな笑みを私に向け、歩いていった。
私も、桜子に続いて隣を歩いていった。 続く