1-15 [5歳]いざ街へ
さてデート当日なわけだ。街に繰り出すのが楽しみすぎたのか、あまり眠れなかった。いかにも子供らしくはあるんだが。今日は毎日やってきた魔法の訓練が出来る時間を取れないと思ったので、予想以上に早く起きたことだし、この時間に少し練習させてもらおう。最近は魔力調整がうまくなったのか、出る音もだいぶ小さくなったし。
朝食は、一般的な貴族の朝食であった。意外だ。母上なら豪勢な食事を用意するのではないかと思ったんだが。いや・・・よくよく見ると母上が密かに含み笑いをしている。これは・・・夕食が凄いことになりそうだ。あまり買い食いはしないようにしよう。といってもこの不気味な笑いが夕食のことだけかどうかはわからないが。
父上は親指をグッと上たてて笑っている。父上、ずいぶんと楽しそうですね。てかそのジェスチャーこっちでも通じたんだ。
フェルムはというとなんとも形容しがたい表情を浮かべている。歓喜と苦悩といった相対するものを同時に含んだような表情だ。大丈夫だろうか。
そして食事は終わり、おれとフェルムはついに外の世界に出発した。
エル・シャルル家の領地の街の一つ、グランドン
「ここがグランドンか。自分の将来継ぐであろう家がある街なのにここまで街にはいったのは初めてだな。」
「グランドンは自由市場があるから、みんなここにあつまってくるんだってよ~」
「市場があるのか。それはみてみたいな。さてどこに行く?・・・本来なら僕が予定やらなにやらを決めないといけないんだけどね。どうにも街にくるのは初めてだからよくわかんなくて予定がたてられなかったよ」
「うーん、私が知ってることはあっちの方にはおいしいご飯を食べれるところがあるって事くらいだね」
「そういや、ずいぶんとこの街に詳しいね、来たことある?」
「ここの、もう少し離れたところに、私は住んでいたから・・・。パパと一緒に・・・。」
やっば。墓穴掘った。さっさと話題を変えねば。
「・・・じゃあとりあえず、昼食はそこで食べて、昼食までは街をぶらつかない?僕は市場にいってみたいんだけど」
「いいよー」
「じゃあそうさせてもらうね。」
当日、市場
「ここが、市場?」
「うん」
「・・・すげー」
これが市場か。俺は転生前は日本から出たことがなかったし、日本ではあんまり市場にいったことがなかったので、こんなでかい市場に来たのは初めてだ。この町は内陸であるので魚はほとんど見られないが肉や野菜、山菜といった食材から毛皮の加工品にみられるような衣類まで様々なものが並んでいる。俺はすごいとおもった。感想が、ただただ凄いの一言になってしまうのが悔やまれる。もうすこしおれにボキャブラリーがあったなら、
『まるで食材のたまてばこやー』
見たいな事をバンバン言えたんだろうが。
「ここの露天は?これは一体何?」
「それはたぶん魔道具の一種だと思う。ほんとに使えるかわからないけど。」
「これは指輪?こっちの指輪と値段がかなり違うんだけど。たぶん同じ材質だし。何でこんなに価格に差異が生まれているんだ?」
「魔道具は便利なだけじゃないってことなんだと思う。戦いにも有効なんじゃ」
「ふーん」
「・・・この指輪きれい」
おれはその指輪を見てみた。本当に綺麗だ。エメラルドが指輪の中心にはめられている。でもエメラルドの材質が良ければいいほど、値段も跳ね上がる。
「・・・Gだって?」
大体1C=10円くらいだったから、大体十万くらいか?高すぎるだろう。でもフェルムにめっちゃ似合うんだよなぁ。
俺の葛藤はしばらく続いた。
指輪の値段の計算が酷く間違っていたので修正