1-10 [4歳]フェルムの最終定理
タイトルは適当です。
さて、食事も終わりリビングにて尋問タイムの始まりだ。
「じゃあまず、名前を教えていただけるかしら。」
「・・・私は、・・・フェルムといいます。」
「苗字が無いってことは、平民ってことで間違いないかしら。」
「・・・はい」
「じゃあ、まず、何で盗賊に追われてたのですか?」
なんで母上は盗賊に襲われてたこと知ってるのかな?・・・冒険者が伝えたのか。まぁ雇われてんなら当たり前か。
「それが、よくわかんないです。盗賊の方たちは私が貴族に凄く高く売れるとかで・・・。それで・・・お父さんが・・・殺されて・・・。家も・・・焼かれて・・・。ヒック」
母上よ、フェルムちゃん泣いてるじゃねぇか。いきなりそんな核心に迫ること聞くなよ。
「貴族に売れる?それは何故?」
お構いなしかよ母上。何でか知らないが、焦ってるのか?父上も止める気配すらないし。まぁそっちにもそれなりの事情があるのかもしれないけどさ。でもフェルムちゃん、もう答えられる状態じゃないんだぜ。
「・・・私が・・・エルフの血を引き継いでるから・・・とか盗賊の人は言ってました・・・」
「・・・」
父上と母上は驚愕の顔を浮かべて固まっている。てかフェルムちゃん、そんなこと簡単に暴露しちゃって良いのかよ。君からすればこの人たちらはまだ信用に値する人間じゃないだろう。
「・・・それは、本当なのですか?」
「・・・わからないです」
「それが本当かどうかは内在魔力量を測って見ればわかるよ。といってもその機器をかりるのにはかなりの時間とちょっとのお金がかかるけどね。けどイータの魔力測定するために1年と半年後に予約いれてあるから、そのときになればわかるね。本当はイータが6歳を迎えてから測りたかったんだけど、そんな程度のことに権力を振りかざしたくはないからね。」
この世界は魔力に満ちているため、魔力量が測れない。正確に言えば、常に針がメーターを振り切っている状態になっている。そのため魔力を測る機器はそれなりに安いのだが、魔力を測るための場所、つまり外魔力が存在しない場所を借りなければならない。そういう場所はあるにはあるのだが、いかんせん場所が少なく、なかなか借りれなかったりする。ちなみに魔法学院に入る前に、1回測定済みでなければならず、学院入学前にも生徒たちを集めて1回測る。おそらくクラスわけの際の選考基準にでもするのではないか。
「・・・それが本当かどうかはわかりませんが、実際盗賊が襲いに来てるという観点からみると信憑性は高いかもしれません。それはさておき、貴方、お母さんは?」
「・・・生まれたときから居ませんでした。父親には死んでしまったと言われました」
当たり前の話ではあるがこの世界で子供を生むということは難しい。医療技術がほとんど発達してないからだ。それを魔法でカバーしているのだが。
「・・・父親に続き、申し訳ないことを言わせました。・・・他に保護者とかはいらっしゃるのですか?」
「・・・わかりませんが、そういう人には会ったことがないです。」
「そうですか、それでこれからどうするつもりですか?」
「・・・それは・・・」
・・・なんか聞いてて辛いな。ここらで助け舟をだすか。
「母上、家に済ませてあげればいいのではないでしょうか?」
「・・・」
「この子は身寄りがない。このままでは奴隷になることは必至でしょう。それにそうでなくとも、噂をかぎつけた盗賊が襲いにくるかもわかりません。盗賊を雇ったのが貴族であるならこんなことで終わるはずがないです。」
「それで、どうして家に住まわせてあげることになるのですか?」
「この子はエルフの血を引くものです。そうであるならば、母上たち貴族からみても利用価値があるのでは?盗賊の話だと、貴族は子供を生ませるために買うとか」
「つまり貴方は、こういいたいのですか?自分の子供を生ませるから今のうちに買ってくれと。この子がエルフの血を引くものかどうかもわからないのに・・・」
「・・・それは・・・」
「・・・まだまだですね。」
「・・・」
「ですが目の付け所は間違ってないですね。・・・この子は家で買い取るしかないでしょう。実際、エルフの血を引くものをめぐって、国同士で争いが起こったこともあるぐらいですし、貴族たちにとってはかなりの利用価値があります。そんな紛争の火種となる可能性があるものを放置してはおけないのですから。それに若干ではありますが、この子の境遇もかわいそうです。」
「自分の昔の境遇と似てるから、同情しちゃうかい。シータ。」
「・・・」
「ま、いいけどね。聴いたかい?君はこのままだと奴隷必至だ。だけど君のその疑惑が結構問題だから、普通の奴隷にはできない。だから君は家で使用人として買い取ることにするよ。家だったら他の貴族とかから、護れるし君にとっても悪い条件じゃないとおもうけどね。でも君がエルフの血を引くものかどうかはわからないから、買い取り価格は普通の値段になっちゃうけど。仮にそれが本当だったら、そのときはその分をちゃんと払うからさ。」
「・・・」
「但し、他の貴族たちのおかげで買取理由を示さないといけないんだよな。ま、使用人ということにしておくけど、使用人として買うには歳が若過ぎるんだよな。・・・そうだ、イータ専属の使用人にしよう。そうすれば同い年の使用人をつけようと思ったで、なんとかなるかもしれない。・・・どの道苦しい言い訳に過ぎないけど。」
「イータ?」
「君を助けた王子様だよ。そこにいるじゃないか」
「イータの・・・」
「おお、顔赤いねぇ。もしやこれは・・・」
「父上、悪ふざけがすぎます」
「すまん、すまん。まぁ問題ないみたいね。じゃあそれでいいかな?」
「・・・はい」
この日、俺に使用人(仮)ができました。
「そういうことですから、あなたとフェルムちゃんは契約を結びに行ってください。イータあなたにはまだまだ、いっぱい話がありますのでここに残りなさい。」
・・・そんなぁ。
学業が再開したので連日更新が意外と辛いです。
そのうち隔日更新になっちゃうかもしれません。
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