附属病院①~診察室
学園医学部附属病院の玄関ロビーは意匠を凝らす吹き抜け
いかにも斬新なデザインでさも新興勢力たる私大の雰囲気が溢れている。
ゴシップに見舞われた後の附属病院は斬新な吹き抜けも私大のプライドもみごとに潰されてしまう。
その最たるものが…
「ヤダァ~また来ているわあ」
入院する芸能人に逢いたい一念さ。
招かざる招待客がロビーに外来病棟に現れた。
病院に無関係な芸能人フアン
ざわざわとした患者さんの行き来に混じり殺到したのである。
外来診療の待ち合い廊下ではその手のフアンがうようよ。
内科担当のナースは弱り顔である。
「困ったものね。(芸能人の)フアンさんならなあ。コンサート会場に行けばいいのに」
みるからに健康的なふくよかな若者ばかり
キャラクターグッズに身を包むような女の子がキョロキョロ。
「附属病院にいこう」
憧れのトレンディ俳優がいる
「とんでもない嘘を真に受けて」
ナースは女子高生に敵愾心を剥き出しにする。
「女子高生って暇なの?学校はどうなるの」
白衣の姿が眩しい18歳はムカムカ!
化粧も不馴れな雑な感じ。
それもそのはず
新米のナースさんである。
外来の待ち合いは
私の守備範囲よっ
目を見張る。
診察室の前にうようよとするヤングたち
携帯や色紙を携え待ち構える女子高生
「だいたいが不思議なのよね」
なぜかなあ
「あの手の週刊誌にウチの先生が間違って撮られちゃったのかなあ」
待ち合いにいる"患者さん"でない"女子高生"の太い脚をじっくり見る。
「邪魔は出ていけー」
院内から追い出したい。
シッシッ~
フンッ!
医科大学院生。
週一回の診察である。
ゴシップにトレンディ俳優と間違って以来附属病院に居づらくなっていた。
「私のせいです。私の至らぬ行動から学園や附属病院に迷惑を掛けました。申し訳ありません」
責任を感じてしまう。
週一の診察は辞退を願い出る。
附属病院としては国立大医は貴重な存在そのもの。やすやすと辞めたら"減収"になりかねない。
学園当局は宥めたりすかしたり思い止めていた。
「辞めては困ります。先生が悪くいなんて」
誰も迷惑を言いません。
「辞表は胸に納めてください」
経理部長は引き止め策として臨時医職の給与を手厚くする。
「先生は附属病院にどうしても必要なんでございます」
新人ナースの研修は評判でございました。
「大学との契約が切れましても引き続きお願いします」
国立大からの医師派遣は附属病院の宣伝。
聞けば優秀な人材で内科外来の患者さんに評判もなかなかである。
現在は大学院にいる一介の医学生で医師の卵。
だが…
将来に名医の譽れ高き医師になる。
修士課程卒業後は母校に帰属し留学で箔をつけることは理の当然だった。
そこをなんとか…
学園の医学部に教授職として残らないかと画策である。
学園から強く説得されとりあえず辞表は撤回する。
「わかりました。以後間違いのないよう気をつけたいと思います」
神妙な面持ちで附属病院勤務を続ける。
「内科外来の診察を開始いたします」
順番に名前を呼びまぁ~す
「患者さんは診察室にお入りください」
白衣のナースは診察カルテをくくり一人一人名前を読み上げた。
平日の診察である。
女子高生が患者としてちょこんと入っている。
ナースがもらった問診票に"からだがだるい"と自覚症状である。
女子高生は立派なご婦人である。
内科で診察を受けたとしても産婦人科に回されるのがオチである。
女子高生はナースに呼ばれる。
ハイッ!
明るく健康的な返事をした。
どこが病んでいるの?
ナースは声の主をじろじろ
至って健康的なお嬢さんに見えてしまう。
「診察室にお入りください」
医科大学院生はひとりひとり丁寧な診察・検査を心掛けていた。
街にある開業医とは異なり大学附属病院は精密な医療であると信念である。
さて。
女子高生の問診票を読んで診察である。
「お嬢さんはどうされました。(問診票を見て)からだがだるいのですね?」
年齢を見れば17歳の女子高生。
検温は平熱で血圧も脈拍も異常はなかった。
"ツキのもの"からくる軽い脱力感かもしれない。
ならば産婦人科である。
「倦怠感ですと婦人病のひとつかもしれませんね。僕は内科ですのですいません。専門外ですから」
さらさらとカルテを書いて婦人科へ転科させよう。
ナースにも知らせようかとした。
女子高生はアラッと顔つきを変えた。
「先生っ。私は生理日ではありません」
ちょっと目眩がします。
「なんとなく…キュッと胸がときめいてしまいます」
じっくりと医師を見つめる。
「私困るんです。胸のときめき。夜いつまでも興奮して寝つけないんです」
眠れない?
「ハンサムな先生が好きになってしまって」
だって…
トレンディ俳優そっくりなんですもの
「だから私は病気なんです。先生に診てもらえたら治ります」
"診察してください"
女子高生は自分から服を脱ぎ捨てる。
胸がときめいたり?
夜寝つけない?
う~ん??
内臓機能の精密検査を受けてもらうか。
「胸がときめいたり。心臓機能に何か引っ掛かるやしれない」
聴診器をブラジャーにあてがう。
心電図なら異常チェックがあるだろう。
「ここだけでは仔細はわかりません。検査して内臓機能を診断いたします」
心音には異常なし
「検査ですか?」
精密検査と聞き女子高生はエッ!と驚いてしまう。
「そんなあっ~検査だなんて」
(大袈裟だわ)
「私の病気は難しいことではありません」
私の望みは…
ハンサムな先生に私を診てもらいたいの
先生にじっくり診ていただいたら「
病気はちゃんと治ります。明日から学校も行きます」
聴診器で診てもらうだけで治りそうです。
「先生っ。ちゃんと…診てください」
がばっ~
何んの前触れなく
女子高生は白いブラウスをはだかせピンクフリルのブラジャーを若い男にこれ見よがしに
セクシーに見せつけた。
小さな胸だって…
可愛く微笑ましい幸せがそこにあった。
「あちゃあ~」
横で見つめるは診察補助するナース
同世代の女子高生の露出を不快に思う。
大胆なことを
最近の若い娘は!
"恥を知りなさい"
黙っていたら何をしでかすかわかったものじゃあない。
ナースは女子高生に"あかんべー"と"お尻ペンペン"をしてやりたかった。
女子高生の肩を叩き
ポンポン
"ブラウスを着てね"
次の患者さんのカルテを取り出した。
「どうぞ診察室へお入りください」
ブラジャー丸出しの女子高生
まだ診察である。
キョトンとしてしまう。
「あの私はまだ診察中ですよ。なんか間違っていませんか」
間違ってなんかいませんよっ!
仮病の方は医学的に病気ではありませんの。
さっさと身支度をされて帰ってくださいな。
それに先生はドクターですよ。あなた方が憧れるトレンディ俳優ではありませんからね。
女子高生はもっとちゃんと診て欲しいと苦情である。
些細なことは
診察室は知りませんわっ
ぷいっ!
ソッポを向いてしまった。
「グスン。本当に頭が痛いなあ」
女子高生はベソッかいてブラウスを押さえつけ出ていく。
ナースは診察室に清め塩をパラパラしたくなった。
ドクターはおろおろして厄介祓いしたナースを見つめるだけであった。




