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オカルト部の魔女先輩は、僕の心が読めている(気がする)  作者: NN


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2/5

魔女先輩とダウジング

 その日、部室に入ると、先輩は針金ハンガーを曲げて作ったL字型の棒を両手に持っていた。


「あ、透くん。いいところに。ちょっとこれ持ってみて」

「……なんですか、これ」

「ダウジングロッド。探し物を見つけるための魔法の道具だよ」


 静久先輩は、またしても胡散臭いアイテムを得意げに掲げている。

 窓からの風で、サラサラの黒髪が揺れる。今日も先輩は無駄に神秘的で、無駄に美しい。


「ダウジング……ですか。地下水脈や鉱脈を見つけるというあれですね」

「そう。でも、もっと身近な探し物にも使えるの。透くん、昨日『生徒手帳』なくしたでしょ?」


 僕はカバンを置こうとした手を止めた。

 心臓がドクリと鳴る。


「……なんで、それを」

「ふふ、魔女には何でもお見通しだから」


 先輩は口元に人差し指を当ててウインクする。

 実は昨日の帰り道、ポケットに入れたはずの手帳がないことに気づき、家で青ざめていたところだ。誰にも言っていないはずなのに。


「まさか、水晶玉で見たんですか?」

「ううん。今日はこのダウジングで、手帳のありかを探しに行こうと思って」


 先輩は僕にL字ロッドを一本押し付けると、もう一本を自分の右手に持った。

 強引に部室の外へ連れ出される。


「先輩、言っておきますけど、ダウジングは科学的に説明がつくんですよ。『不覚筋動イデオ・モーター』現象です」

「ふかくきんどう?」

「はい。何かを見つけたいという無意識の願望が、微細な筋肉の動きとなって棒を動かすんです。超常現象じゃなくて、ただの自己暗示です」


 廊下を歩きながら、僕は早口でまくし立てた。

 先輩のペースに巻き込まれないための、精一杯の防御策だ。


「ふーん。透くんは相変わらず理屈っぽいねぇ」

「事実ですから。だから、こんな棒で手帳が見つかるわけが――」


 その時だった。

 先輩が突然立ち止まり、僕の方へ振り返る。

 僕と先輩の距離、わずか五十センチ。

 先輩の手にあるロッドが、くるりと回転して、ピタリと僕の胸元を指した。


「……動いた」

「え?」

「透くんの方を向いたよ。この反応は……『運命の人』を探知したのかな?」


 先輩は真顔でそんなことを言う。

 廊下の静けさも相まって、破壊力は抜群だった。


「なっ……! ふ、不覚筋動です! 先輩が今、僕をからかおうと意識したから筋肉が動いただけです!」

「あはは、また顔真っ赤。反応が良すぎて楽しいなあ」


 先輩はコロコロと笑うと、再び歩き出した。

 僕は熱くなった頬を手の甲で冷ましながら、その後ろをついていく。くそ、また遊ばれた。


 たどり着いたのは、昇降口の下駄箱前だった。


「ここだよ。反応が一番強い」

「ここって……僕の下駄箱じゃないですか」

「開けてみて」


 言われるがままに扉を開ける。

 上履きの上に、見慣れた黒い手帳がちょこんと乗っていた。


「あった……!」

「ほらね。ダウジングの導きは絶対なんだよ」


 先輩は胸を張る。

 確かに見つかった。見つかったが、納得がいかない。

 僕は手帳をポケットにしまいながら、ジト目で先輩を見る。


「……先輩。これ、最初から場所を知ってたんじゃありませんか?」

「まさか。疑り深いなぁ」

「じゃあ、なんで昨日の時点で僕が無くしたことを知ってたんですか」

「それは……昨日のクレープ屋で、透くんがリュック開けた時に落としたのが見えたから」

「やっぱり! じゃあ、その時に教えてくださいよ!」

「だって、教えちゃったら……」


 先輩は言葉を区切ると、少しだけ寂しげな笑みを浮かべた。


「こうやって一緒に、学校の中を探検できなかったでしょ?」


 ――ズキュン。

 胸の奥で何かが撃ち抜かれる音がした。

 反論の言葉が喉で詰まる。そんなふうに言われたら、怒れるわけがない。

 論理的思考がまたしてもショートする。


「……次は、もっと早く教えてください。困りますから」

「はいはい。善処します」


 先輩は満足そうに微笑むと、踵を返して歩き出した。

 夕日に照らされたその背中は、やっぱり魔女みたいに掴みどころがない。


 ――もちろん、僕は知らない。

 静久先輩が、手の中のダウジングロッドを強く握りしめていることを。


『……危なかったー。実は下駄箱に入れたの私だって言ったら、透くん怒るかな』

『でも、昨日の帰りに私が拾って預かってたなんて言ったら、わざわざ今日こっそり戻した工作がバレちゃうし……』

『ま、透くんと長く一緒にいられたから、いっか』


 オカルト部の魔女先輩は、今日も僕の論理を煙に巻き、ほんの少しの独占欲を隠している。

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