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追放貴族の【土地鑑定】スキルで辺境開拓 ~役立たずと勘当された僕のスキルは、実は大地を創造する【神の視点】でした~  作者: かるたっくす
第5部

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第97話:ミズガルズという名に込めた想い


 僕が王になることを決意してから、数日が過ぎた。

 聖獣の郷は、来るべき建国宣言と、その後に避けられないであろう王国との戦いに向けて、郷全体が一つの意志を持ったかのように動き出していた。


 その日、僕は執務室で、ミリア、グルドさん、リアム、そしてセブンと共に、建国宣言の式典に関する最終的な打ち合わせを行っていた。


「式典の会場は、中央広場。日時は、三日後の正午。民には既に通達済みです」


 ミリアが、手元の資料を読み上げながら、滞りなく報告を進めていく。宰相としての風格も、日に日に増しているように見える。


「防衛設備の準備も万端だ。グルドの奴らが、昼夜問わず城壁の補強と、迎撃用のバリスタの設置を進めている」


 グルドさんも、腕を組みながら満足げに頷く。


「物資の備蓄も問題ありません。リアムの商会ネットワークを駆使して、周辺地域から密かに食料や薬草を買い集めています。少なくとも、半年は籠城できる計算ですな」


 リアムも、商人らしい抜け目のない報告を付け加えた。

 みんな、それぞれの立場で、完璧な仕事をしてくれている。本当に、頼もしい仲間たちだ。


 一通りの段取りの確認が終わった時、それまで黙って話を聞いていたリアムが、ふと、思い出したように口を開いた。


「ところで、リオ様。一つ、基本的なことをお伺いするのを忘れておりました」


「基本的なこと?」


「はい。我らがこれから建国する、新しい国の名前です。一体、どのような国名になさるおつもりで?」


 リアムの問いに、その場にいた全員の視線が、僕に集まった。

 確かに、これまで僕たちのコミュニティを「ミズガルズ」と呼んではきたが、それが正式な国名になるとは、誰も思っていなかったのかもしれない。


 僕は、集まった仲間たちの顔をゆっくりと見回し、そして、静かに告げた。


「国名は、以前開催した祭りの名前にも使った、『ミズガルズ』にしようと思う」


「ミズガルズ……ですか。あの統一祭の……」


 ミリアが、その言葉を確かめるように、小さく繰り返す。

 グルドさんが、不思議そうに首を傾げた。


「ミズガルズ、ねえ。確かに、呼び慣れてはいるし、祭りの名前としてもしっくりきていたが……。改めて国名と聞くと、どういう意味なんだ、その言葉は?」


 グルドさんの素朴な疑問に、答えたのはセブンだった。

 彼女は、僕の隣で、すっと手を挙げる。


「解説します。ミズガルズとは、古代語で『中央の囲い』を意味する言葉です。転じて、神々の住まう天界や、魔物の住まう魔界ではない、『人の住まう世界』そのものを指す、というのが一般的な解釈です」


「ほう、『人の住まう世界』、か」


 リアムが、興味深そうに顎に手を当てる。

 僕は、セブンの解説を引き継ぐように、言葉を続けた。


「そう。僕がこの国の名前に込めた想いは、まさにそこにあるんだ」


 僕は、立ち上がると、窓の外に広がる僕たちの郷を見下ろした。

 そこでは、獣人も、ドワーフも、エルフも、皆が当たり前のように、肩を並べて暮らしている。


「この世界では、人間だけが『人間』で、獣人やドワーフやエルフは、亜人として差別されてきた。でも、それは間違っている。僕たちは、姿形は違えど、皆、同じように笑い、泣き、怒り、そして誰かを愛おしいと思う心を持っている。皆、等しく『人』なんだ」


 僕は、仲間たちの方を振り返り、はっきりと告げた。


「だから、この国は、ミズガルズ。ここは、獣人も、ドワーフも、エルフも、そして、僕のような人間も、全ての種族が、亜人ではなく、対等な『人』として、共に生きていく国だ。その理想を、僕はこの国の名前に込めたんだ」


 僕の言葉に、執務室は静まり返った。


 やがて、ミリアの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。


「……人の、住まう世界……。私たちは、亜人ではなく……人……」


 彼女は、迫害され、人間から石を投げつけられてきた過去を思い出したのだろう。その声は、感極まったように震えていた。


 グルドさんも、リアムも、言葉を失っていた。

 彼らもまた、人間たちから、その出自を理由に、心ない差別を受けてきた経験がある。

 だからこそ、「人として生きる」という言葉が、どれほど重く、そして尊いものであるかを、痛いほどに理解していた。


「……最高の国名じゃねえか」


 グルドさんが、涙声で、しかし、満面の笑みでそう言った。


「ええ。これ以上の名前は、万の言葉を探しても見つからないでしょうな」


 リアムも、心から同意するように、深く頷いた。


 僕が掲げた、新国家の理想。

 それは、仲間たちの胸に、確かな希望の光を灯した。


 僕たちは、ただ王国から独立するのではない。

 この世界の歪んだ常識を覆し、全ての種族が真に共存できる、新しい時代を、僕たちの手で創り出すのだ。


 その決意を胸に、僕たちは、三日後の建国宣言の日を迎える。


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