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追放貴族の【土地鑑定】スキルで辺境開拓 ~役立たずと勘当された僕のスキルは、実は大地を創造する【神の視点】でした~  作者: かるたっくす
第5部

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第95話:我らが王


 中央広場での出来事は、まるで燎原の火のように瞬く間に聖獣の郷全土に伝わっていった。


 王国騎士の横暴。突き飛ばされたドワーフ。連行されかけた犬獣人の若者。

 そして、その全ての理不尽から民を守るために立ち上がり、聖獣の神威を背に王国に対して断固たる拒絶を宣言した、若き領主リオの姿。


 その話は人々の口から口へと語り継がれるうちに熱を帯び、一つの神話のように昇華されていった。


「聞いたか!? リオ様が、王国騎士を一睨みで黙らせたらしいぜ!」

「ああ! なんでも、背中に白い龍を背負って天が割れるほどの光を放ったとか!」

「すごい……! リオ様は、やっぱり我々をお救いくださる伝説の英雄だったんだ!」


 尾ひれはついていたが、本質は間違っていない。

 民衆は、リオが示した王としての覚悟とその圧倒的な力に熱狂した。

 これまでリオは優しく、慈悲深い領主だった。しかし、民は心のどこかで、それだけではこの厳しい世界を生き抜けないことも理解していた。


 だからこそ、彼らは歓喜したのだ。

 我らが主は、ただ優しいだけではない。我々を守るためならば、悪を討つ雷霆の如き力も振るえる、真の王なのだ、と。


 王国への恐怖は、リオへの絶対的な信頼と熱狂に塗り替えられた。

 聖獣の郷の独立への機運は、この日、決定的で不可逆なものとなった。



 その夜。

 僕は再び執務室にいた。

 しかし、そこに昨夜のような孤独と重圧の空気はもはやなかった。


 僕の前にはミリア、グルドさん、リアムをはじめ、聖獣の郷を構成する各種族の代表者たちがずらりと顔を揃えていた。

 彼らの表情は昼間の熱狂が嘘のように、厳かで真剣そのものだった。


 代表して、グルドさんが一歩前に進み出た。

 彼はその場に片膝をつくと、深く頭を垂れる。


「リオ様。本日のあなたの雄姿、我ら一同、しかとこの目で見届けました」


 リアムもグルドさんの隣に並び、同じように膝をついた。


「あなたは、我々の予想を遥かに超える器の持ち主だった。我々は、あなたという存在を見誤っていたようです。心から、お詫び申し上げます」


 そして、ミリアも。

 彼女は僕の目の前で、静かに、そして優雅にひざまずいた。


「あなたは、ご自分のことを王の器ではないと仰いました。ですが、それは違います。あなたこそ、我々が永きにわたって待ち望んでいた、真の王です」


 三人の行動に続くように、その場にいた全ての代表者たちが僕の前にひざまずき、忠誠の姿勢を示した。


 僕はその光景に息を呑んだ。

 昨日、民の総意として「共に戦わせてほしい」と懇願された。僕はその想いを受け止めたつもりだった。

 しかし、彼らが求めていたのはそれだけではなかったのだ。


 グルドさんが顔を上げ、僕の瞳をまっすぐに射抜いた。


「我々は、あなたと共に死ぬ覚悟もできています。ですが、それはただの領主殿のためではありません。我らが忠誠を誓い、この命を捧げるに値する、唯一無二の王のためです」


 リアムが言葉を続ける。


「我々は、もはやあなたの『仲間』であるだけでは満足できない。あなたの『臣下』として、この国を支える礎となりたいのです」


 そして、ミリアが涙を浮かべながら、しかしはっきりとした声で言った。


「どうか、我らの王になってください、リオ様!」


 その言葉は、彼ら個人の願いではなかった。

 聖獣の郷に住まう五千の民の、魂からの願いだった。


 僕はゆっくりと目を閉じた。

 もう、迷いはなかった。僕が王の器であるかどうかなど、もはや問題ではない。

 民が僕を王として求めてくれるのならば。僕が王になることでこの国が一つになり、未来を切り拓けるのならば。


 僕の答えは、とうに決まっていた。


 僕はひざまずく彼ら一人一人の顔を見回し、そして、静かに、しかし力強く頷いた。


「……みんなの想い、受け取った」


 その声は、自分でも驚くほどすっきりと、そして迷いなく響いた。


「僕は、聖獣の郷の王になる」


 その瞬間、代表者たちの顔に安堵と、そして歓喜の表情が広がった。

 ミリアの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちるのが見えた。


 これは、誰かから与えられた王位ではない。

 僕が、民と共に自らの意志で掴み取った、僕だけの王位だった。


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