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追放貴族の【土地鑑定】スキルで辺境開拓 ~役立たずと勘当された僕のスキルは、実は大地を創造する【神の視点】でした~  作者: かるたっくす
第5部

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第86話:星空の下のダンス


 エルフのランタンが灯る幻想的な光の中、祭りの夜は更けていく。

 広場の中央ではドワーフたちが持ち込んだ樽酒が振る舞われ、陽気な音楽が奏でられていた。

 自然と輪が生まれ、人々は手を取り合ってダンスを始める。

 それは特定の様式があるわけではない。心と体を音楽に任せるだけの、自由な踊りだった。


 僕もミリアやグルドさんたちと、その輪のすぐそばで談笑していた。

 ミリアはちらちらと僕の顔色を窺い、何かを言いたそうにもじもじしている。その頬は、お酒のせいか、それとも別の理由か、ほんのりと赤く染まっていた。


「あの、リオさん……!」


 意を決したように、ミリアが僕の名前を呼ぶ。その瞳には確かな勇気の光が宿っていた。

 彼女が何を言おうとしているのか、朴念仁な僕でもさすがにその場の雰囲気で察することができた。きっと、一緒に踊ろうと誘ってくれているのだろう。


 僕が彼女の言葉を待った、その瞬間だった。


「――マスター」


 音もなく、僕の隣にセブンが現れた。

 彼女は僕に向かって、まるで騎士が姫にするかのように優雅に一礼してみせる。


「ダンスのプロトコル、ロード完了しました。エスコートの準備は万全です。さあ、こちらへ」

「え?」


 セブンは真顔でそう言うと、僕の手を取って広場の中央へと歩き出す。

 あまりに自然で完璧なエスコートに、僕はなされるがままだった。

 後に残されたミリアは、差し出しかけた手を宙で固まらせ、呆然と僕たちの後ろ姿を見送っている。


「ちょ、セブン!? 僕はダンスなんて踊ったことないんだけど!?」

「問題ありません。私のリードに合わせていただければ、周囲からは完璧なダンスに見えるよう私が補正します」


 セブンはそう言うと、僕の腰にそっと手を添えステップを踏み始めた。

 僕はぎこちなく彼女の動きに合わせる。確かに、彼女の完璧なリードのおかげで素人目にはそれなりに様になっているように見えた。


 しかし、問題はそこではなかった。

 僕たちのすぐ隣で、ミリアが頬をこれでもかと膨らませ、一人でくるくる回りながら僕とセブンを追いかけてきているのだ。

 その瞳には明らかな対抗心と、少しばかりの涙が滲んでいた。


「はっはっは! 若いってのはいいもんだな!」

「やれやれ。朴念仁も、ここまでくると一種の才能ですな」


 広場の隅で、グルドさんとリアムが僕たちの様子を肴に楽しそうに酒を飲んでいるのが見えた。


          ◇



 ――その頃。聖獣の郷の平和な喧騒が届かない、遥か南の王都。


 宰相ダリウスは執務室で一人、リアムの商会を通じて聖獣の郷から献上された品々を冷ややかに検分していた。


 一つは、ドワーフが打ったという短剣。王国のどの職人が作ったものよりも硬く、鋭い。

 一つは、エルフが調合したという回復薬。王宮の薬剤師が作る秘薬に匹敵するほどの効果を持つ。

 そして極めつけは、手のひらサイズの箱に詰められた季節外れの果物。冬を前にして、これほど瑞々しく糖度の高い果物を生産するなど、常識では考えられない。


「……マルクス」


 ダリウスの低い声に、部屋の隅に控えていた男が顔を上げた。聖獣の郷を一度調査に訪れたことのある、良識的な文官マルクスだ。


「はっ」

「貴殿は、かの地を『将来有望な辺境の村』と報告したな。しかし、これはどうだ。有望すぎる。もはや、我々の富を脅かす『病巣』だ」


 ダリウスの瞳に、嫉妬や焦りといった感情はない。

 ただ、自らの身体に巣食った癌細胞を摘出する外科医のような、冷徹な光だけが宿っていた。


「奴らは、我々の知らぬ技術を持っている。放置すれば、いずれ王国の秩序を根幹から揺るがしかねん。そうなる前に、摘み取る必要がある」

「……宰相閣下。しかし、彼らに敵意は……」

「敵意の有無など関係ない。危険なのだ、存在そのものが」


 ダリウスは立ち上がると、窓の外に広がる王都の夜景を見下ろした。


「マルクス。貴殿に命ずる。再び聖獣の郷へ赴き、国王陛下の勅令を伝えよ」

「勅令、でございますか」

「うむ。内容は二つ。一つ、これまでの不遜を詫びるための『懲罰的重税』。二つ、王国の兵力に貢献するための『若者の徴兵』だ」


 そのあまりに非情な内容に、マルクスは息を呑んだ。

 それは聖獣の郷の富と未来、その全てを奪い尽くすに等しい要求だった。


「……それは、あまりに……」

「断れば反逆と見なし、正規軍を派遣する。奴らに選択の余地はない。富を差し出して我々の支配下に下るか、全てを失って滅びるかだ」


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