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追放貴族の【土地鑑定】スキルで辺境開拓 ~役立たずと勘当された僕のスキルは、実は大地を創造する【神の視点】でした~  作者: かるたっくす
第4部

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第78話:叡智の継承


 セブンの重い言葉は僕たちの心に深く突き刺さった。

 しかし僕たちはいつまでもここで立ち尽くしているわけにはいかなかった。


「……今は考えても仕方がない」


 僕がそう言うと、仲間たちははっと顔を上げた。


「僕たちが今すべきことは、目の前にあるこの古代の叡智を確実に地上へ持ち帰ることだ。それがいずれ来るかもしれない『脅威』に対抗するための力になるかもしれない。そうだろ?」


 僕の言葉に仲間たちの瞳に再び光が宿った。

 そうだ。僕たちは絶望を見つけただけではない。それと同じくらい巨大な希望も手にしているのだ。


 僕たちはセブンの案内で再び遺跡の各施設を見て回ることにした。

 今度は侵入者としてではなく、この遺跡の新たな継承者として。


「――起動します」


 セブンが農耕ゴーレムの格納庫でそう呟いた、瞬間だった。


 ガ、ガ、ガ、ガ、ガ……!


 それまで沈黙していた数百体の蜘蛛型のゴーレムたちのセンサーが一斉に青白い光を灯したのだ。


 一糸乱れぬ完璧な連携でその多脚を折りたたみ、ゆっくりと立ち上がっていく。

 その光景は壮観という一言では言い表せないほど圧倒的だった。


「こ、こいつら……。本当に動いたぞ……」


 グルドさんが興奮したように声を上げる。

 セブンは僕たちに向き直ると静かに告げた。


「これより私のデータベースに記録されている各種技術情報の転送を開始します。対象者はリアム、およびグルド。よろしいですね?」


「ああ、望むところだ!」

「ぜひ、お願いします!」


 セブンが二人に手をかざすと、彼女の指先から淡い光が放たれ二人の額へと吸い込まれていった。


「――なっ!? こ、これは……! なんだ、この合金の構造式は……! 常温で自己修復する金属だと……!?」


「信じられない……! この植物の遺伝子情報……。光合成の効率を極限まで高める配列……。これさえあればどんな不毛の地でも……!」


 グルドさんとリアムはその場に座り込み、頭を抱えていた。

 彼らの脳内に今、数千年分の古代の叡智が直接流れ込んでいるのだ。

 その膨大で高度な知識に二人の知的好奇心は完全にパンク寸前だった。


 その光景をミリアは少し複雑な表情で見ていた。


「……すごいですね。これだけの技術があれば私たちの村は本当に豊かになる。もう誰も飢えることはなくなる……」


 彼女は心から喜んでいるようだった。

 けれどその笑顔にはどこか一抹の寂しさが滲んでいるのを僕は見逃さなかった。


 彼女は誰よりも土を愛し、自らの手で作物を育てることに誇りを持っていた。

 その彼女が培ってきた経験や伝統的な農法が、この圧倒的な技術の前では不要になってしまうのではないか。

 そんな不安を感じているのだろう。


 僕は彼女の隣にそっと寄り添った。


「……ミリア。君の力がなければこの技術も宝の持ち腐れになる」


「え……?」


「機械は土の状態を分析することはできる。でも土の声を聞くことはできない。風の匂いを感じることもできない。君が長年培ってきた知識と経験。その農夫としての勘とこの古代の技術が合わさって、初めて本当の豊かさが生まれるんだと僕は思う」


 僕の言葉にミリアの表情がぱっと明るくなる。

 彼女は嬉しそうに僕に何かを言おうとした。


 しかしその言葉は無機質な声によって遮られた。


「――訂正を求めます、マスター」


 いつの間にか僕たちの隣にセブンが立っていた。


「月の満ち欠けや個人の経験則に依存する農法は極めて非効率です。私の管理する環境制御温室は天候や季節に一切左右されず、常に99.8パーセントの精度で最適な収穫量を保証します。そこに感情や勘といった不確定要素が介在する余地はありません」


 セブンの言葉には一切の悪意はなかった。

 彼女はただ純粋な事実を論理的に述べただけだ。


 その悪意のなさが逆にミリアの心を深く傷つけた。


 ミリアの顔から笑顔が消えた。

 彼女は何も言い返さず、ただ固い表情でセブンを見つめている。


 その大きな赤い瞳に初めて明確な対抗心の炎が宿ったのを僕は確かに見た。


 僕たちの間に奇妙で気まずい沈黙が流れる。


「……そろそろ地上に戻ろう」


 僕はその空気を振り払うように言った。


「この遺跡の機能はすべて把握できた。一度村に戻って、今後の計画を立て直そう」


 僕の提案に仲間たちは頷いた。

 僕たちは地上への帰路についた。


 僕の半歩後ろを寸分の狂いもなくついてくるセブン。

 その完璧な従者の横顔をミリアはどんな思いで見つめているのだろうか。


 僕の知らないところで新たな戦いの火種が生まれようとしていた。


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