Dead or Alive(死ぬか生きるか)!?(17)
「ベヴァリッジ公爵令嬢、次は私と一緒にメリーゴーランドに乗りましょう!」
綿菓子みたいなふわふわピンクのロングケープを着たポメリアが、嬉しそうにアイリス色のコートを着る私の腕に自身の腕を絡める。
「メリーゴーランドの次は観覧車にしましょう。観覧車は恋人同士で乗るのが定番です。ポロロック男爵令嬢もさすがに恋人をそっちのけにはしませんよね?」
難易度高めの白の細身のロングコートをスマートに着こなしたエリックが、一ミリの隙もない完璧笑顔でポメリアに尋ねる。さすがにこのスマイルを前にしたら、ヒロインでも反論はできないようだ。
「……そうですね。観覧車は……はい! ケントと乗ります!」
ポメリアが名を口にすると、黒のダッフルコートを着たケントは、まるで「ワン!」と返事をしそうな表情で彼女を見ている。もう全身から嬉しいオーラが溢れ出ていた。
最初に好きになったのはポメリアだった。だが騎士になるため、一直線だったように。のめり込みやすいのがケントの性格。ゆえに肉体は騎士見習いに全振りして、感情はすべてポメリアへ全力投球したようだ。交際開始一週間で、ケントがかなり前のめりとなり、「婚約の準備をしよう!」になった。そして今日は午前中にマッサージ会を行い、午後からは約束通りでグループデートをしていた。
季節は初冬、ちょうどホリデーシーズンが始まり、王都には移動遊園地がやって来ている。「グループデートをするなら、遊園地がいい!」とポメリアが言い出したのだけど、確かにそれはおあつらえ向き。そこでポメリアとケント、そしてエリックと私の四人で、早速やって来たわけだ。
(ポメリアが有言実行で告白してくれてよかったわ。これでヒロインも見事攻略対象とゴールインね。当然だけど、国王が婚約を許可するまで、まだ気を抜けない。でもおそらく問題ないと思うの。間違いなく、私の生存は盤石になった。やるかやられるかだったけど、結果的に最初に動いたことで、功を奏した感じね!)
そんなことを思いながら、メリーゴーランドへと向かう。
移動遊園地のメリーゴーランド、お子様向けのチープなものかというと、全然違っている。王都に来るような移動遊園地は、平民より貴族をターゲットにしていた。よって遊具はどれもお金をかけており、装飾は模造宝石や金メッキが使われ、ゴージャスだった。ゆえにメリーゴーランドは子どもから大人まで、優雅に楽しんでいるのだけど……。
「! あれはブライト公爵令息では!?」
ポメリアの目線を追うと、確かにそこにカッセルがいる。スレートグリーンのコートを着て、革手袋をつけた手が握っているのは……クリーム色のロングケープを着たシルバーブロンドに碧眼の美少女だった。
二人が乗っているのは馬車タイプで、隣り合って座っており、完全に二人の世界になっていた。
(そういえばカッセルには縁談話が出ていたはずよ。あの美少女がその相手では……?)
その縁談は政略結婚になるものだったはず。でもあの様子だと……。
(稀に見る当事者同士が相思相愛の政略結婚になるのかもしれないわね)
もしそうであるならば、今は奇跡的な状況だった。
ヒロインはケントを攻略している。カッセルは愛のある政略結婚。そして私は……。
チラッと見ただけなのに。エリックは私の視線に気づき、すぐに極上の笑みをこちらへと向けてくれる。一番人気の攻略対象のパーフェクトスマイル。
私はこのエリックと交際中……と言ってもこれは偽装交際なのだけど。
(偽装交際だろうと何だろうと、悪役令嬢なのにちゃんと生きているのだ。この世界、生きたもん勝ちよ!)
「ベヴァリッジ公爵令嬢! 馬車タイプに並んで座って乗りましょう!」
「分かったわ」
女子二人がメリーゴーランドに一緒に乗るとなった。ここでケントとエリックがそれぞれメリーゴーランドに乗るのは……乗って欲しかったが二人とも「メリーゴーランドは素敵な令嬢が乗ることに意味があります。わたしとダイセン侯爵令息は見守っていますから」と辞退してしまう。ザ・白馬に乗った王子様な二人を見られないのは残念だったが、すぐに順番が回って来たので、馬車タイプのメリーゴーランドに乗り込む。
カッセルは私たちに気が付かず、美少女と共に次のアトラクションへ向かって行く。
こうしてしばしメリーゴーランドを楽しみ、それが終わると一旦休憩で、蜂蜜ジンジャーミルクティーを皆で飲むことになった。
初冬を迎え、寒さはズンと深まっていた。温かいミルクティーに、たっぷりの蜂蜜、アクセントのジンジャーは、体をぽかぽかと温めてくれる。
「いい感じに暮れて来ましたね。これから夜の帳が完全に落ちるまでは、マジックアワーと呼ばれる青の時間と黄金の時間です。日没直前の温かみのある黄金色の景色、日没後の透明感のある青空の下の景色を、観覧車から楽しみましょう」
エリックの言う通りで、今から観覧車に乗るのは大正解。そして私たちは乗り場のすぐそばまで移動していた。
「順番にご案内します」
係員の誘導で、乗り場へと続く通路を進む。
今度はそれぞれカップルで、観覧車に乗り込むことになった。
お読みいただきありがとうございます!
ケントとエリックがメリーゴーランドに乗った姿……
ぜひ脳内補完を(笑)
続きは明日、更新します~!
そして明日は嬉しいお知らせもできるのでお楽しみに♪
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