Dead or Alive(死ぬか生きるか)!?(15)
『ダイセン侯爵令息のこと、好きなんですよね!? 告白、してください。もし上手く行ったら、グループデートをしましょう!』
ベヴァリッジ公爵令嬢……女神様のこの一言は、まさにディープインパクトだった。
私がダイセン侯爵令息に告白し、もしお付き合いすることになったら、グループデートができる。つまりは女神様とエリック、私とダイセン侯爵令息の四人で、デートをしようということ。
(なんて夢みたいなお誘いなのかしら! 女神様とデートできるなんて……!)
俄然、実現したい気持ちになってしまう。そしてそのためにはダイセン侯爵令息に告白し「イエス」を引き出す必要があった。
(上手く行くかしら……?)
この世界の主人公であるベヴァリッジ公爵令嬢と違い、私は完全な部外者だった。その私が、もうお役御免になっているとはいえ、元攻略対象だったダイセン侯爵令息……ケントに告白して成功するのか。
(そんなこと、悩んではいけないわ! グループデートのためにも、ケントには首を縦に振ってもらわないと困る)
そこで告白する前に私がまず始めたこと。それは――。
ケントを知ることだ。
というのもケントに一目惚れをしてしまったが、実は彼のことを詳しく知っているわけではなかった。何せ転移前、ゲーム自体、ほぼプレイしていないのだ。どんな異性が好みなのか。どんな生活スタイルを送っているのか。騎士以外の関心事は何なのか――これらを知るのは最重要事項に思えた。
そのためにまず用意したのは、歩きやすいローヒールのミドル丈のブーツだ。
(驚いたけど、騎士を目指すケントは体力作りと筋トレの一環で、登下校は徒歩でしているのよね)
もし私が転移者ではなく、この世界で生まれ育ったのなら……。
徒歩通学するケントの後をつけるなど、まず無理だった。
貴族令嬢はあまり運動をしないし、移動は基本的に馬車を使うのだ。ショッピングでお店をはしごしているなどなければ、令嬢がやたら歩き回ることはなかった。ゆえに徒歩通学するケントの後を追える令嬢は……この国で私ぐらいだろう。
ということで授業が終わり、終礼の後、早速徒歩での帰宅を始めたケントの後を、慌てて追うことになった。
てっきり屋敷へまっすぐ帰り、その後は敷地内で騎士の訓練でも行うなのかと思ったら、違う。
学院を出るとその足で、すぐ近くにある王立建国記念公園へ向かったのだ。
王立建国記念公園はその名の通りで、建国を祝うために整備された公園である。その敷地は宮殿と同じぐらいと言われるほど、広々としていた。東西南北で出入口があり、北門のあるエリアは常緑樹が立ち並び、森林散策を楽しめる。真逆に位置する南門のあるエリアには、花壇が沢山ある。まさに花を散歩しながら楽しめる場所だ。東門には人工池があり、ボート遊びが楽しめた。西門がある辺りには乗馬スペースがあり、剣術や弓を練習するコーナーも設けられている。
てっきりケントは西門がある辺りへ向かい、そこで乗馬や武器を使った自主練でも始めるのかと思った。だが違う。どうやらケントは王立建国記念公園を横断し、帰宅しようとしているのだと理解する。だが公園内の道を歩いていると……。
「あ、ボート乗り場ですか。自分が案内しますよ」
「北門に行きたいのですね。いいですよ、自分がお連れします」
迷子らしき人たちに声をかけられてしまう。広大な公園だけに、そこにいる人は多い。そして迷子になっている人も沢山いるのだ。そう言った人たちがなぜかケントに声をかける。
(その理由は……体格もいいし、もう大人に見える。つまり騎士に見えるということ。騎士は弱者をいたわる騎士道精神を持っている。だからきっと道を尋ねても助けてくれると思っているのでは)
そんな人たちを助け、道案内を一時間ぐらいしてから、ようやくケントは公園を抜ける。
広大な公園を動き回るのだから、もはやひと労働したに等しい。公園を抜けると、ケントはスタンドショップのお店で飲み物を買うが……。彼の周りに子供たちが集まってくる。何事かと思ったら……。
「よし。今日も自分にじゃんけんで勝てたら、一杯おごろう。でも先着五名まで!」
「僕、僕だよ~」「私がじゃんけんするー!」「俺も参加するぞ」
ケントは自身とじゃんけんをして、勝った子供には飲み物をご馳走しているらしい。
(なぜそんなことをしているのか?)
全く分からない。それにそもそもじゃんけんを子供たちとすることになったきっかけも分からない。ただ子供たちに囲まれ、笑っているケントは……。
とても楽しそうだ。
(常に筋トレ、筋トレかと思ったら、そうではないと。ボランティアで道案内をして、慕ってくる子供たちの相手もしている。王道騎士道精神で、弱者に優しく接する……これを実地で行っている?)
何はともあれ、じゃんけんを終えたケントは、子供たちに見送られ、屋敷の方へと歩き出す。
これで帰宅かと思いきや。
途中で重い荷物を持つ老人を助けたり、妊婦が馬車道を横断するのを手伝ったり。屋敷に着くまでまだ一仕事待っていた感じだ。
それでもようやく帰宅したケントの後ろ姿を見送り、しみじみ思う。
(さすが元攻略対象の一人。脳筋男子ではあるけど、騎士道精神に違わぬ生き方をしている感じね)
ケントに告白し、成功するために、彼を追跡した結果。
学院では見ることがない彼の新たな一面を知り、さらに彼を異性として強く意識することになった。
お読みいただきありがとうございます!
グループデートのご褒美でヒロイン釣れたー!
続きは明日、公開します~
引き続きブックマークや☆評価で応援していただけると、とても励みになります!
よろしくお願いいたします☆彡