Dead or Alive(死ぬか生きるか)!?(14)
ベヴァリッジ公爵令嬢に幸せになって欲しいと思っている。さらにこの世界の主人公として、攻略対象であるエリックと結ばれることは正解だと分かっていた。
(でもエリックにベヴァリッジ公爵令嬢を……女神を奪われたようで寂しい!)
もやもやした気持ちを抱えていると……。
「ポロロック男爵令嬢」
四時限目の授業が終わってすぐ、ベヴァリッジ公爵令嬢から声をかけられた。しょんぼり気味だった私はハッとして女神の顔を見上げる。
「よかったら二人でランチしません?」
「! ふ、二人で……よろしいのですか!?」
チラリとシュルエツ子爵令嬢たちの方を見ると、自身は誘われていないからだろう。「ズルいですわ、ポロロック男爵令嬢」という顔で見ているのが分かるけれど……。
(無視、無視。何かされたらベヴァリッジ公爵令嬢にチクッちゃうもんね!)
ということで女神のお誘いに応じ、食堂へ向かう。すると!
「実は食堂にはVIPルームがあるの」
「! そうなのですか!?」
「ええ。少人数のおもてなしで使う個室と、晩餐会も行える広めのホールがあるの。広めのホールは、少人数の舞踏会も行える広さなのよ。学院を訪れるVIPの父兄のために用意されている」
(そんな部屋があるなんて、知らなかった~! でも王侯貴族が通う学院。そういう部屋があってもおかしくない!)
「今日はその個室を使えるよう、手配してもらったの。殿下に頼んで」
「!」
私とのランチのために、わざわざ個室を押さえてくれたことに対して、嬉しい気持ちが湧き上がった。だがしかし、その個室はエリックにより手配されたということに嫉妬も覚える。
「ランチはスペシャルコースを用意してもらったの。でも昼休みは一時間十五分しかないから、少し急ぎ足になるけど、楽しみましょう」
これを聞いた瞬間、嬉しい気持ちが勝った。「はいっ! ぜひそうしましょう!」と応じている。
こうして到着した個室はさすがVIPルーム!
個室……とは思えないぐらい広々としている。
天井には黄金の装飾があしらわれたシャンデリア、床の絨毯はふかふか、壁に掛かるのは名画の数々。窓からは美しい蓮池の庭園が見えており、柔らかい陽射しで部屋全体も明るい。しかも見た目ハンサムなバトラーが二人待機しており、席へと案内してくれる。
「さあ、お座りになって」
着席するとすぐに前菜が到着し、食事がスタートする。
「私と殿下がお付き合いすることになった件。驚いたかしら?」
「はい。とてもビックリしました。毎週日曜日、公爵邸で会っているメンバーに王太子殿下もいたのに。お二人がそういうお気持ちだったこと。全く気がつきませんでした」
「ふふ。それはそうよ。殿下も私もバレないようにしていたから。おほほほ」
スープとパンが到着し、コース料理の提供はハイピッチで進められていた。だが給仕をするバトラーは料理を出すと退出し、女神と私はちゃんと二人きりの状態で会話ができる。その辺りのプライバシーが配慮されているところは、さすがVIP向けの個室だ。
「ともかく殿下と私はお付き合いがスタートしたわ」
「そうですよね。近いうちに婚約となり、そうなるとベヴァリッジ公爵令嬢は王宮で暮らすようになりますよね。もう恒例の日曜日のマッサージ会はなくなってしまうのでしょうか」
しょんぼり顔で尋ねたが、女神は「そんなことないわ」と微笑む。
「王族の婚約者はそう簡単には決まらないわ。いろいろあるから半年はかかると思うの。それにたとえ婚約しても、あのマッサージ会は続けるから安心して欲しいわ。だからこれからもポロロック男爵令嬢、仲良くしてくださいね」
これには「もちろんです!」と元気に答える。
変わらず女神と仲良くできることが分かり、私は嬉しくて仕方ない。
そこで魚料理が到着する。秋鮭のムニエルでバターのいい香りが一気に室内に広がった。
その香りも相俟って、ニコニコする私の鏡みたいに、ベヴァリッジ公爵令嬢も女神の笑みを浮かべ、こんなことを言う。
「私は殿下と交際している。だからもうポロロック男爵令嬢は何も案じる必要はないのよ」
「と申しますと……?」
「以前、ポロロック男爵令嬢は私にこう話したこと、覚えているかしら?」
そこで女神が口にしたのは私のこの発言だ。
――『ベヴァリッジ公爵令嬢はダイセン侯爵令息、ブライト公爵令息、そしてエリック王太子殿下のいずれかと結ばれる運命だと思うのです。そして私は肩こりを改善してくれるベヴァリッジ公爵令嬢を女神だと思っています。恋路を邪魔することはしたくありません』
まさに私の言う通りになったので、ベヴァリッジ公爵令嬢は大いに驚いたと言う。そして――。
「ポロロック男爵令嬢が私を邪魔するなんてことはないと思うの。だって私はもう殿下との交際が始まっているのだから。それにダイセン侯爵令息、ブライト公爵令息、この二人はもう自由の身でしょう?」
「それは……そうですね」
「私、自分だけが幸せなのは申し訳なく思うわ。みんなが幸せになってくれたら嬉しい」
(さすが女神だわ……! やはりベヴァリッジ公爵令嬢は優しいと思う!)
「今度はポロロック男爵令嬢が幸せになる番だと思うの」
「えっ!」
「ダイセン侯爵令息のこと、好きなんですよね!? 告白、してください。もし上手く行ったら、グループデートをしましょう!」
お読みいただきありがとうございます!
ご褒美にグループデート!?
まさかそんなもので釣れるはずが……
続きは帰宅してから更新しますね~
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