Dead or Alive(死ぬか生きるか)!?(11)
まさかカトリーナとエリック王太子殿下が交際することになるんて!
(寝耳に水とはまさに今のような事態を言うのではないか!)
ショックだった!
まだ非公式の段階、婚約者になったわけではない。だが堂々と共に登校し、双方の両親が既に二人の交際が始まったことを知っているのだ。
婚約するかまだ分からないなら、ひっそり交際するはず。王家の婚姻絡みは国家の関心事になる。中途半端な行動は許されない。まだ非公式段階、正式に婚約はしていないというが、それは言葉のあやのようなものに思える。
(二人は間違いなく婚約するんだ……)
悔しい気持ちは募るが、相手がエリック王太子殿下となると、どうにもならない。いくら貴族の序列では最上位の公爵家でも、相手が王家では敵わない。
(そもそもブライト公爵家は王家とは遠縁なんだ。対立するなんて許されない)
それにしても最悪なタイミングだった。今朝、父親は朝食の席で突然縁談話を始めたのだ。
『実は宰相から紹介されたのだよ。ツーリア侯爵令嬢。来年、デビュタントになる。お前より一歳歳下だが、才媛だと聞いたぞ。一度会う機会を作るから、顔を合わせてみるといい』
そんな提案をされ、僕は大いに慌てることになる。
『父上、待ってください! 急な話で僕は……』
『何を言っている。お前は嫡子だ。縁談話が突然降ってこようと、堂々としなければならない。来週の日曜日。茶会を我が家で開催する。異論は認めん!』
父親はこうと決めたら考えを変えない頑固なところがある。そしてヘッドバトラーに聞いたところ、ツーリア侯爵の先祖は戦争で功を立てた軍人ではあるが、平和な世の中になった後は、運輸業に手を出したという。その結果、造船業で成功を収め、かなりの財を成していた。宰相と仲がいいのも、新たなる交易では船が必須であり、そこで関係性が深まった結果らしい。
(今、大陸の国々は新たなる交易相手を探し、海にどんどん出ていた。造船業はここしばらく発展すると言われている。しかしブライト公爵家は商会をいくつも有するが、物流に強いわけではない。ツーリア侯爵家と婚姻関係で結ばれるのは……まさに願ったり叶ったりだ)
つまりツーリア侯爵令嬢との縁談話、一度会う機会だけでは終わらないはず。その一度で全てが決まる。……僕はツーリア侯爵令嬢と絶対に婚約することになるんだ……。
そんな事実に打ちのめされそうになっていたら、使用人がざわついていることに気がつく。どうしたのかと尋ねると、朝から王家の馬車がカトリーナの屋敷に向かったと言うのだ。
(なぜこんな朝一番に? しかもそろそろ登校時間ではないか。……いや、つい王家というと、同級生であるエリック王太子殿下のことを思い浮かべてしまうが、その馬車に乗ってるのが彼とは限らない)
そうは考えたが、では他に誰が乗っているのか。
国王陛下……まずあり得ない。用事があったら宮殿に呼びつけるはず。
王妃殿下のはずもなかった。こちらも必要に応じて貴族を呼びつけるのが自然。
では王女……?
王女が訪問するなら、その相手はカトリーナだろう。そしてカトリーナと王女は、面識はあるだろうが……。こんなに朝早くに訪問するわけがない。何より、カトリーナはこれから学院へ登校するのだ。
そうなると王家の勅使を乗せている……?
いや、使用人の話だと馬車は王家のものだった。護衛の騎士が騎乗で馬車の前後についていたというのだから間違いない。
(やはり馬車に乗ってるのはエリック王太子殿下だ。しかしなぜこの時間に……?)
なんとも胸騒ぎがして、ツーリア侯爵令嬢との縁談話の件は頭から吹き飛び、ひとまず僕も学院へ向かうことになる。そして学院のエントランスで、エリック王太子殿下、カトリーナ、ケントと遭遇する。その上で衝撃の一言を聞くことなる。
『実はわたしとカトリーナ嬢は相思相愛であると分かり、交際することにしたのです』
昨日、いつも通りでみんなマッサージをしてもらい、そしてエリック王太子殿下がカトリーナに対してこう提案した。
『わたしは何度かベヴァリッジ公爵令嬢にセルフマッサージの仕方を教わり、自分なりに会得したつもりです。よって夕食までまだお時間があると思うので、わたしがベヴァリッジ公爵令嬢にマッサージをしてもいいでしょうか?』
この提案を出来たエリック王太子殿下は、僕の一歩二歩どころではない。何百歩も先をいっていたと思う。
この時点で気がつくべきだった。
カトリーナと二人きりになるチャンスをエリック王太子殿下が得た意味を。なぜこんな気遣いが出来たのかを。その根底にあったものに、気がつくべきだった。
だがもう遅い……。
相手が王太子でなければ動いた……いや、それでも無理だ。ツーリア侯爵令嬢の件がある。
かくして僕の初恋は唐突な形で終わることになった。そして次の日曜日。恒例のマッサージに参加できず、ツーリア侯爵令嬢とお茶会をすることになるのだが……。
お読みいただきありがとうございます!
衝撃を受けるカッセル!
しかも自身には縁談話が浮上し……。
続きは明日、公開します~
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