Dead or Alive(死ぬか生きるか)!?(7)
前世での手痛い失恋の記憶から、もう恋はしないと思っていたポメリア。それなのにケントのことを好きになってしまった。それでは自身が学習しない女になってしまうと、自らの感情を否定していたが……。
その件についてはそんなことはないと理解させることができた。ところが今度は……。
「でも……私みたいな家柄も見た目も大したことのない令嬢のことなんて……ダイセン侯爵令息は好きにならないと思います」
そんなふうに言い出すとは。
(乙女ゲームのヒロインなのに、なぜこんなに後ろ向きなのかしら!? もっと自信を持てばいいのに!)
この疑問の答えを後ほど得ることになるのだけど、今は自己評価が低いポメリアに前向きになって欲しいので、こんなことを話してみることにした。
「ポロロック男爵令嬢」
「はい」
「ご自身を卑下されていますが、それはダイセン侯爵令息のことも貶める発言になっていると、気づかれていますか?」
「え……」
ゆっくり肩をマッサージしながら伝えることにする。
「家柄も見た目も大したことのない令嬢のことをダイセン侯爵令息は好きにならない……ということは、ダイセン侯爵令息は家柄を気にして、見た目のいい令嬢を選ぶような男性と言っているのと同義になりますよ」
「え、そんな! そういう意味では……」
「私たちは貴族です。恋愛も結婚も、家門同士の話にもなるので、家柄を無視することはできないでしょう。それでもダイセン侯爵令息は、家柄ありきで相手を選ぶような男性には……私は思えません。相手の中身を見て、最後の方で『ああ、そう言えば家柄』となるようなタイプに思えます」
私の指摘にポメリアは「そうですね。……そうだと私も思います」と素直に応じる。
「容姿についても美人じゃなきゃダメ、可愛い子がいい、胸が大きくて、お尻はツンと上向いているのが好き……なんて公言する性格ではないでしょうし、そこばかりを気にするように思えません。何というか好きになった人がタイプだった……そんな感じに思えます。少なくとも『見た目が好みではないから、付き合いません』と言い出す人間には思えないです」
「それは……そう思います」
「そうですよね。自分のことなんて好きになってもらえないと、最初から諦める必要はないと思いませんか? 人生後ろ向きで生きるより、前向きで生きた方が気持ちが楽になります」
ポメリアは「!」となって私を見た。
その瞳には、今の言葉に同意を示しつつ、でもまだ何かあるように思える。
「……何か他にも気になることがありますか?」
「……あるのですが、何と言えばいいのか……」
そこでしばし考え込み、ポメリアはこんなことを話し出す。
「この世界にいる人間一人一人に役割があるとします。私は……エキストラです。その他大勢の一人。でもベヴァリッジ公爵令嬢は違うと思います。ベヴァリッジ公爵令嬢こそが、この世界のヒロインだと思うのです!」
この発言には「うん?」と思う。
「そしてダイセン侯爵令息、ブライト公爵令息、そしてエリック王太子殿下は……ヒロインのお相手となるヒーローだと思うのです。ヒロインを幸せにするために存在している三人の令息。その一人にその他大勢の私が手を出すなんて……間違いだと思うんです」
今のポメリアの言葉で、私の中の「うううん?」がさらに深まる。
(まさか、まさかとは思うけれど、ポメリアは自身がヒロインであると気付いていない!? 私が悪役令嬢であると、分かっていないの……?)
とんでもない可能性に気づいた私に、ポメリアは決定打となる言葉を放つ。
「ベヴァリッジ公爵令嬢はダイセン侯爵令息、ブライト公爵令息、そしてエリック王太子殿下のいずれかと結ばれる運命だと思うのです。そして私は肩こりを改善してくれるベヴァリッジ公爵令嬢を女神だと思っています。恋路を邪魔することはしたくありません!」
決意の表情で告げたポメリアを見て、確信する。
(間違いないわ! ポメリアは自分がヒロインだと分かっていない!)
こんなことがあるのかと思うものの。
乙女ゲーム『恋のラビリンス』こと“恋ラビ”をあまりプレイしていないが転移してしまった可能性は……ゼロではない。
(もしそうならポメリアは私がヒロインだと思っている可能性が高い。ヒロインの攻略対象の一人だから、ケントのことは好きだけど、どうにもならないと思っているのでは……)
ここで「そんな役割は存在していない。気にしすぎ」と伝えても、ポメリアは転移者なのだ。さすがに納得はできないだろう。では勘違いを指摘し「あなたがヒロインです!」と言っても……。パニックになるだけだ。それにヒロインはあなた!と指摘するには、私の立場だって明かす必要がある。そうなるとマッサージ・サロンもどきを毎週日曜日に開催している理由も明かす必要があり、探られたくない腹の内を探られることにもなりかねない。いざとなればそうするしかないが、ポメリアは相当混乱するだろうし、全てを知ったことが吉と出るか、凶と出るかは分からないのだ。
可愛いらしい子羊に見えても、その下は恐ろしい狼の可能性もある。弱々しい子羊でも、悪魔が味方したら、狼に豹変することだってあるのだ。自分がヒロインであると分かり、三大貴公子を攻略し放題と分かったら……。
カッセル、ケント、エリックを手玉にとり、私はヒロインのマッサージ奴隷にされる可能性もある。「断罪されたくないなら、言うことに従いなさい」――豹変したポメリアの薄ら笑いを想像し、少し背筋が寒くなってしまう。
(何かいい方法はないかしら……?)
考えるがすぐに浮かばないし、そろそろマッサージタイムは終了だった。
「ポロロック男爵令嬢。今の話はとても興味深いですわ。でもこの世界ではそれぞれが、各々の人生の主人公だと思います」
「そんなことはないんですよ! うまく説明できませんが、みんな役割があるんです!」
いつも「女神様♡」と崇めるように私を見るポメリア。しかし乙女ゲームの設定については、語気を強めて主張している。
(そう簡単にポメリアの考えを変えることはできなさそうね)
説得ができないまま、この話とマッサージは終了となる。
ただこの話については、月曜日の放課後に引き続き話そうということで、話はまとまった。
お読みいただきありがとうございます!
意外と手強そうなポメリアに私はどうするのか!?
明日も2話更新頑張ります=3
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