Dead or Alive(死ぬか生きるか)!?(1)
「ベヴァリッジ公爵令嬢、私と一緒に来てください!」
いきなりヒロインであるポメリアにそう言われ、私は「えええ!?」と驚くが、そばにいた騎士団長の息子であり、一緒に体育祭実行委員をしているケントがすぐに教えてくれる。
「今、一年生は借り物競争をやっているんです。多分、ポロロック男爵令嬢は、ベヴァリッジ公爵令嬢を借りたいのかと」
これには「ああ、そういうことね」となり、「玉入れの出場者の誘導は?」とケントに確認する。
「それは自分や他の体育祭実行委員のメンバーで対応するので大丈夫です!」
「分かったわ」
「ベヴァリッジ公爵令嬢、私と手をつないでください!」
今日は体育祭で、体育祭実行委員を手伝っている私は大忙しだった。
シュルエツ子爵令嬢の風邪は治って学校には来ているけど、病み上がりということで、結局私がケントと共に動くことになっている。
(本来、体育祭はヒロインであるポメリアとケントの好感度が爆上がりするはずのイベントなのに……。二人の接点はゼロで、私がケントと行動しているなんて……。でも仕方ないわ。私が代打で手を挙げてしまったのだから……)
そんなことを思いながら、ポメリアと手をつなぎ、全力疾走。
「わーい! 一番でゴールです!」
ポメリアは運動が得意なようで、ほとんと息が上がっていない。でも私はもう肩で「ぜい、ぜい」と息をしている状態! それでも私は公爵令嬢として、何とかみにくく見えないよう、必死だった。
「ポロロック男爵令嬢とカトリーナ、爆走だったね。ところでカトリーナを借りてきたということは、学校一の美女を連れてくる……そんなお題だったの?」
幼なじみであり、公爵家の嫡男であるカッセルがポメリアに尋ねると、彼女は瞳をキラキラさせ「違います」と答える。でもすぐにドヤ顔で口にしたのは……。
「『この世界で一番愛する人を連れてくる』というオーダーでした!」
そう答えて笑顔で私を見たのだ!
その瞬間、カッセルは「へぇー、なるほど。そうなんだぁ。奇遇だ。僕もそのお題を手にしていたら、カトリーナを連れて行ったと思うよ」と、顔は笑顔だけど、目は笑っていない状態で応じる。
「そうでしたか~。ブライト公爵令息とは趣味が合いますね!」
ポメリアが応じ、二人の視線が絡むと火花が散っているように思えてしまう。
(何というか二人とも、私のマッサージを気に入り過ぎて、よくこんなふうに火花を散らすのよね。まさに神の手はどっちのもの、みたいな感じで……)
やられる前にやることにしたが、ここまで執着されるとは思っていない。
(でもまあ、この調子なら私が断罪される気配は皆無よ。この執着もありがたいことと思わないと)
そんなことを思っている間に、借り物競争は終了。入選者には拍手と粗品が渡され、解散となり、玉入れの参加者の入場が始まる。
そこでシュルエツ子爵令嬢に声をかけられる。
「ベヴァリッジ公爵令嬢、次は一年生の障害物競走ですわ。出場されますわよね!?」
「そうね。今、向かいますわ!」
こうして私は体育祭実行委員として動くと同時に、参加者にもなり、忙しい時間を過ごすことになったが……。
「ベヴァリッジ公爵令嬢、救護用テントに向かってくれませんか!」
障害物競走も終わり、学年対抗リレーの出場者の誘導をしていると、ケントが血相を変えて駆けてくる。
「どうしました?」
「さっき父兄による五十メートル走がありましたよね? ゴールした瞬間に倒れたマダムがいて、救護用テントに運ばれました。養護教諭は男性ですが、マダムは太腿が痛むということで、できれば女性に見て欲しいと言っているのです。それにもし、ベヴァリッジ公爵令嬢のマッサージが効くならと思い……」
これにはピンとくるものがあるが、ひとまずケントと共に救護用テントへ向かい、マダムに会うことにした。
すると救護用テントの入口にいるのは困り切った顔の男性養護教諭と、エリック王太子!
「マダムのことは僕が救護用テントまで運びました。他の男性が運ぼうとすると『夫以外の男性には触れられたくありません!』というので、わたしが身分を告げ、抱き上げることを申し出ると『王太子殿下ならば……』と何とか応じてくれました。その際、聞いたところ、ゴールした瞬間に右足の太腿から『ぶちっ』と大きな音がしたそうです。同時に鋭い痛みが太腿の後ろ側でしたと話していました」
エリックの説明は明確で分かりやすい。それだけで、もうそれが何であるか分かってしまう。そこで養護教諭を見る。
「我々は患部を見て、病名や傷を判断します。症状を聞いただけでは何とも……」
「そうですよね……。その……肉離れという症状を先生はご存知ですか?」
「肉離れ、ですか? 聞いたことがありません」
そこで私は前世知識で知る範囲の肉離れについて説明する。
「なるほど。急な運動で、筋肉にかかった負担により、筋繊維が切れることを言うのですね。……それは初めて聞きました」
これには「仕方ない」と思うしかない。この世界の医療水準は前世とは比べ物にならないのだから。
「私の文献知識で恐縮です。肉離れが起きた時は安静にし、冷やした方がいいとか」
「瀉血を考えていたのですが」
「筋肉が痛んでいるので、それはやめた方がいいように思えます。素人の考えですが……」
この世界の医療、患部から悪い体液を抜く=瀉血がよく行われるが、ほぼその効果は不明。前世水準の医療を知っているだけに、これには少し鳥肌が立ってしまう。
(とはいえ、この世界は今、医療の黎明期。だから致し方ない!)
「ひとまずマダムに会い、私から話を聞いてみますね」
こうして養護教諭、エリック、ケントを残し、救護用テントの中へ向かった。
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そして始まりました!神の手を巡る戦い!
本日もう1話執筆して公開しますね〜
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