彼女の視点(2)
昼休みの食堂は大混雑だった。
今日はあいにくの花冷えの雨で、いつもなら中庭やテラス席で昼食を取る生徒も、食堂に集結している。よって空いている席を見つけるのが困難な状況だったのだけど……。
四人席に、金髪のやけに姿勢がいい男子が一人で座っている。
二人掛け席が空いていないので、四人席に座っていると思うのだけど、誰も彼の周囲の空いている席には座ろうとしない。
(もしかして問題児なのかな!?)
入学してまだ三日目だが、王都の王侯貴族が通う学院なのだ。前世のような昭和の不良や問題児はいないと思う。
ということで意を決して声をかける。
「あ、あの、こちらの席、空いています~?」
そこでゆっくり振り向いた彼の顔を見て、鳥肌が立つ。
(が、顔面偏差値高過ぎのこの顔、知っている……!)
サラサラのブロンドに、宝石のような碧眼、鼻が高く、形のいい唇。女子が羨むような美肌をしており、頭には小ぶりの王冠を載せたくなる。
(間違いない! 彼はこの国の王太子、超VIP、攻略対象の一番人気のエリック・ロシュ・ロマンだ!)
「ええ、空いています。どうぞ好きな席にお座りください」
“容姿端麗、文武両道、温厚篤実で完璧な王太子”と称されるエリックは、どこにも隙のないパーフェクトスマイルで私の問いに答えてくれた。
(しまった! 王太子であるエリックと同席なんて……!)
王太子と同席なんて、恐れ多いという忖度をみんなしており、誰も彼のテーブルの空いている席に座ろとしていないんだ――そう気づいても後の祭り。
王太子が許可しているのに「あ、やっぱり結構です」なんて言えるわけがなかった。
そこで半ば仕方なく座るが、頭の中では「早く食べて席を立とう」がぐるぐる回っている。もう「いただきます」と押し殺した声で言った後は、猛烈な勢いでチキンのソテーを食べていく。
「君……大丈夫!? この後、何か用事があるのですか? そんな勢いよく食べては……きちんと噛んでいますか?」
エリックは私の食べっぷりに仰天したようだ。心配で声をかけてくれたと分かる。
「はい、大丈夫で」
「ポロロック男爵令嬢、探したんですよ!」
エリックに問われ、答えようとすると、その言葉に被せるように令嬢の声が聞こえる。
顔を上げ、その令嬢を見ると……。金髪の巻き毛で碧眼、王立ミディ学院のピンクにグレーのチェック柄のスカートに、グレーのブレザーを着ている彼女は……。
(シュルエツ子爵令嬢だ!)
「せっかく一緒にランチしようと思っていたのに。あちらに皆さん、お待ちですよ」
これには正直、「聞いていないよ~!」だった。しかもシュルエツ子爵令嬢が言うあちらを見ると、そこにいるのは侯爵令嬢、伯爵令嬢、子爵令嬢……。
(ううん!? こ、公爵令嬢もいる!)
カトリーナ・マリアンヌ・ベヴァリッジ公爵令嬢。
ベヴァリッジ公爵のご令嬢で、学院では“高嶺の花”としてとても有名だった。才色兼備で、令息からの人気もダントツなご令嬢だ!
(クラスメイトだけど、私は男爵令嬢で、彼女は公爵令嬢。接点がゼロ過ぎて挨拶以外の会話をしたことがない。それなのに一緒に昼食を取ることになっているなんて!)
驚いたが、嬉しくもある。
なぜなら。
この学院ではそもそも男爵令嬢の数が少ない。それもそのはずだった。
(学費がとんでもなく高いから……!)
完全に高位貴族向けの学校であるため、学費は青天井に近い。特に「今年度の寄付」というのがくせ者と言われている。ここの金額が低いと、平気で退学させられるとかさせられないとか、噂はたえない。
ともかく学費の高さから、男爵令嬢クラスではなかなか学院に入学できなかった。
(それを考えるとお父様には感謝なんだよね……)
ともかくそんな事情があるため、どこか男爵令嬢はハブられやすいところがあるというか……。時々、本当に私は学院にいてもいいのかしら?と思ってしまうこともあった。
よってまさかの学院における高嶺の花、貴族令嬢のトップである公爵令嬢からお昼に誘われているらしい事態は……ビックリだがラッキーに感じていたのだ。
そこでエリックには「お気遣い、ありがとうございます」と頭を下げ、シュルエツ子爵令嬢と共に、ベヴァリッジ公爵令嬢の待つ六人席へ向かう。
「ポロロック男爵令嬢、来ていただけて嬉しいわ」
ベヴァリッジ公爵令嬢の声は実に涼やかで素敵だった。
「こちらこそ、誘っていただき、ありがとうございます!」
私が着席すると、昼食がスタートになる。
ベヴァリッジ公爵令嬢を中心になされる会話は、演劇、演奏会、オペラなど、洒落おつなもの。聞いている私はセレブな女子たちの会話が楽しくてならない。
そしてそれは唐突に起きる。
「そうそう。実は今日、公爵邸のパティシエに作らせたスイーツを持参していますの」
食堂ではスイーツの提供が行われていない。よって生徒はスイーツを持参して、昼休み中に食べることが認められていた。そしてベヴァリッジ公爵令嬢は、ジャム入りクッキーを持ってきていたのだ。
「どうぞ、召し上がってくださいね」
ベヴァリッジ公爵令嬢はそう言いながら、この場にいる全員のお皿に、イチゴジャムがたっぷり載せられたクッキーを配り始めたのだ。
(そんな給仕のようなことを、公爵令嬢自らがするなんて!)
私は転移者であり、生粋の貴族ではない。そこで椅子から立ち上がり「ベヴァリッジ公爵令嬢、お手伝いします。私が配りますよ」と申し出る。
「まあ、ポロロック男爵令嬢。なんて優しいのかしら」
笑顔のベヴァリッジ公爵令嬢は喜び「ではお願いします」とクッキーの入った籠を私に渡してくれたのだけど……。
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ポメリアは天然系ヒロイン〜
続きは明日のお楽しみ♪
(裏では必死の執筆&校正作業がw)
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