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1-6 石像との邂逅

 「今、なにか音が⸺」


 そう呟いた瞬間だった。


 「誰かぁ!!!」


 悲鳴が石造りの回廊に響きわたった。

 声は、若い男性のものだ。近い⸺


 (すぐに助けに行かないと!)


 セラフィナは息をするのも忘れて駆け出した。革靴が石の床を打つ音が、やけに大きく耳に響く。遺跡の空気は冷たいはずなのに、汗が滲むほど身体は熱く、心臓の鼓動が喉までせり上がってくる。

 悲鳴が聞こえた方角へと、角を一つ曲がった瞬間。目に映ったのは異様な光景だった。


 「あっ……!た、助けてくれ!!」


 尻餅をつく青年。それを首を傾げて睨みつける石像。

 その右腕は大きく振り上げられていた。


 「危ない!!」


 セラフィナは躊躇いなく、杖を振り抜く。

「《ライトニング・シャワー》!!」


 無数の雷の矢が石像に向かって飛んでいく。鋭く光る矢は空気を切り裂き、次々と石像の身体を貫いた。

 だが、雷の嵐に遭ってなお、石像は動きを止めなかった。


 「っ……!効いてないの!?」


 青年は尻餅をついたまま動かない。いや、動けないのか。


 「あなた!ここは私が引き受けるから、早く逃げなさい!!」


 「あ、あ……」


  「早く!!!!」


 セラフィナの声で青年はやっと我に返った。尻餅をついたままじりじりと後退すると、慌てて立ち上がり、出口へと一目散に駆け出した。


 石像の頭部が、ギギギとこちらを向く。

 セラフィナへと腕を伸ばし、一歩、右脚が前に出る。


(さっきの魔法は身体を貫いたけれど、動きは止まってない。なにか条件があるんだわ)


 セラフィナは杖を構え直すと、石像から距離を取った。狙うは心臓部分。弓のように左手で魔力を引き絞ると、一気に解き放った。


 「《エレクトロ・スナイプ》」


 雷光は一直線に、石像の胸元へと吸い込まれていく。その身体に、大きな穴が開いた。

 石像はそのままガラガラと崩れていく。

 けれど、その瞳に宿った赤は、まだ鈍く光っていた。


 「まだ死んでないの!?どうなってるのよ……」


 石像は、崩れたにも関わらず、まだ動こうとする。その様子を眺めていると、セラフィナは一つの仮定を思いついた。


 「何かを探している?」


 セラフィナは、崩れた石像の動きを凝視した。瓦礫と化した胴体から、まだ赤く光る"目"の部分が動いている。

 左右にゆっくりと、焦点を定めるように。


 (誰かを、あるいは⸺何かを探している。明確な意志がある)


 初め、セラフィナは、石像は人を襲っているんだと思った。けれど、それは違う。石像は"襲っていた"のではない。"探していた"のだ。おそらく、これは防衛装置。


 「この遺跡の奥に、何かがあるのね。もしくは、あったけれど、奪われたか」


 奥に進みたい気持ちはあった。けれど、先程の青年が心配だ。それに、少しこの遺跡について調べてみる必要がある。


 セラフィナは一度、街に戻ることにした。

読んでくださり、ありがとうございます。

これくらいの文量で2~3日に1回、更新していけたらいいなぁと思っています。

少しでも続きが気になる、面白いと思っていただけたら嬉しいです。

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