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第一話 モブAが先にざまぁされました

 とある令嬢が校門前に現れると周囲が騒ぎ出した。


『誰だ!あんな綺麗な令嬢、この学園にいたか!?』


『いないだろ!見た事ないぞ!もしかしたら留学生じゃないか』


と、男子生徒が喋っている。


『可愛いな……ふへへっ……痛てててぇ!!』


『鼻の下伸ばしデレデレしない!』


 見惚れていた男子生徒は婚約者に耳を引っ張られ怒られている。





 その謎令嬢は麗しかった。

 透き通った白い肌、目はキリッとし、知性を感じる顔立ち。そして、その令嬢が通った後はフローラルな香りを漂わせていた。そんな美しい令嬢は周りの目を釘付けだった。


 その令嬢とは、


『き、きれい!!か、わかいい!!きゃーっ!恥ずかしい!お母様、サリーやりすぎよ!』


 コリンは周囲の声を聞き、心の中で絶叫した!今まで言われたことがなく免疫が出来ていないのだ。



 コリンはメガネを外し化粧をするだけでいいと思っていたが、そうはいかなかった。


 学園を休んでいる間、母と侍女頭サリーに頭から足の爪先まで全て磨かれていたのだ。母が張り切るのは分かっていたが、侍女頭も張り切ってやってくれたことに驚いた。そして『最高!お嬢様最高ーっ!!』

と、鼻息荒く興奮していた。コリンは貞操の危機を感じた。それを母に相談しコリンの担当から外してもらうことにした。『そんな殺生なっ!やっと念願のお嬢様を綺麗にすることが出来たのに〜っ!』

と、連れさられて行った。さよならサリー。あなたのことは忘れないわ。

 こうしてコリンの貞操は守られたのであった。


 サリーのことを思い出し少し冷静になったコリンの行動は早かった。


『早く生徒会室に行かなきゃ!』


 周りから注目されたコリンはすぐにこの場から逃げ……れなかった。なぜなら、勇気ある男子生徒に話しかけられてしまったのだ。



「おぅ!美しい!まるで女神だ!私はデビット子爵令息と申します。麗しいあなた様はどちらの御令嬢ですかな?」


「はい?」


 この紳士ぶっているクズ……じゃなくて生徒は私と同じクラスメイトで私の陰口を叩いていた生徒だ。

『あの地味令嬢だろ!成績が良くてもな。あんなのと結婚したくないわ。生理的に無理、あんなのとじゃ、ち○○立たないしな!

……えっ!婚約者が既にいるって!はぁっ!そんな物好きな男がいるのか!……うん?……隣のクラスのケヴィン様だと!!や、やばぁ!こんなの聞かれたら弱小貴族の俺なんてすぐに潰されちまう!』

 と、クラスで堂々と言ってましたね。伯爵令嬢である私には不敬じゃないのかと、その時思いましたが何も言い返せませんでした。事実でしたからね。

 確かデビット様は嫡男ではないから婿入り先を探しているはず……もし、私の婚約解消が知られ、子爵家から釣書が来ても即お断りいたしましょう。こんな手の平返し、したような男はお断りね。

 コリンがそんな考えをしてると露知らずデビットが自分に酔ったように語りかけた。

「はぁぁあ、困っている顔も美しい!もしよろしければ私が学園を案内いたしましょうか?」


 『あなたに話しかけられて困ってるのよ!』と心の中で叫び身震いした。


 この気持ち悪い男から早く立ち去りたいと思っていると、デビットがコリンの手を取ろうとした。


『ひぃーっ!』

 コリンは固まってしまった。余りにもの変わりように。

 そして、デビットの手がコリンに差し迫った!だが、掴むことが出来なかった。

 なぜなら、


「痛てててぇ!」


「勝手にコリン嬢に触れるな!怖がってるだろうが!」


「痛い痛い!わかったから!触らないから離しで下さいーっ!」


「フン」

 ドテェ!

 腕を離しデビットは尻餅をついた。


「いてて……あ、あれがコ、コリン嬢だと!あの地味な令嬢が……」


 痛みよりコリンの変わりように衝撃を受けているようだ。コリンの陰口を叩き、鬱憤を晴らしていた相手がこんなにも美しい令嬢だったのかと!


 魔の手から救われたコリンは安堵していた。


「アバン様、ありがとうございます」


「おぅ!いいってことよ!後輩を助けるのは当たり前だろ」


 と、いつも通りのアバンに安心したがコリンの変化に気づいて欲しい気持ちがあり、勇気を出して聞いてみることにした。


「あ、あのう……どうですか……私変わりましたでしょうか」


 頬を赤く染めながらアバンに尋ねた。


「うん!?そんなの決まってるだろ!前にも言った通り可愛いし、綺麗な令嬢だ!今日は特に最高な令嬢になってるぜ。へへへ!」

 と、最後は恥ずかしそうに笑った。


「ふふっ、ありがとうございます」


 コリンは一番綺麗だと言われたかったアバンに言われ嬉しくなってしまった。


 すると再び周りが色めき立った。


『うわーっ!』


『天使かよ!』


『いやいや、女神だって!』


『素敵♡』


 コリンの笑い顔を見ていた生徒達は皆、コリンの魅了魔法にかかってしまった。

 ※この世界に魔法は存在しません。


「ハッハッハ!コリン嬢の笑顔は最高だ!ほら、周りを見てみな」


「まぁ!!」


「これがコリン嬢の魅力だ!自信持てたか」


「……少しは」


「ハッハッハ!そうか!そりゃあ、よかった。じゃあ、生徒会の皆に驚かせてやろうぜ!コリン嬢がもっと綺麗になったってな」


「はい!」


 と、二人並んで生徒会室に向かおうとしたら……


「コ、コリン嬢待ってくれ!俺……私は誤解していたようだ。だから……」


 不快な男の言葉を遮った。


「デビット様、私は成績だけの地味な女なのでこれからは、私に話しかけないでくださる。生理的に無理なんでしょ」


「えっ!」


 あの陰口を聞かれていたのかと驚くデビット! 



「大事な所が立つような方と結婚できればいいですわね」


 そして最後の止めを刺した。卑猥な言葉を聞かれていたと……

 周りの生徒達も『こいつ最低だな』と知れ渡ってしまった。直に醜態として学園中に知れ渡るだろう。

 最低な男だと……




 そんな末路をしったアバンは笑った。俺が制裁を加えなくてもコリン嬢の力で返り討ちに出来たと。


「ハッハッハ!一皮剥けて強くなったな」

と、コリンを称えた。


「そうですか!私、容姿だけじゃなく性格も変えていきたいと思ってるんです」


「大丈夫だ。コリン嬢は変われる。もう実際に変わってるしな」


 そして二人は周りのざわつきを気にすることなく、生徒会室に向かっていった。




 醜態を晒したデビットを残して。

 これからデビットは婚約者探しに苦戦するだろう。

 婚約者のいたコリンの容姿を貶すような男に婿に欲しい貴族はいない。もし、デビットが令嬢に打診しても『大事な所が立ちますか』と返される未来が待っているのだから。



読んで下さりありがとうございます。

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