第二話
「コリン大変!あなたの婚約者がラクス嬢と腕を組んで歩いてるのを複数の生徒達に目撃されてますわよ!それでケヴィン様には婚約者がいるのに大丈夫なの?って生徒会に苦情が来たんだけど……」
と慌てて生徒会室に入って来たメイリーン様が矢継ぎ早に喋りだしたのです。
「見間違いじゃない」
私はメイリーン様に心配させないよう冷静を装い否定しながラクス様の情報を頭の中で整理した。
確かラクス様は隣のクラスの生徒で準男爵令嬢。婚約者のいない方々によく近づいて媚を売っている方ですわね。ラクス様は商会長の後妻として嫁ぐことになっています。自分の父より歳をした方に嫁ぎたくないと、この学園で婚約してくれる方を探してると有名な方ですわね。でも婚約者のいる殿方には相手をしてなかったはずです。だからケヴィンは大丈夫だと思ってたのに……まさかあり得ないわ!きっと大丈夫!
と思っていたがケヴィンを完全に信じられない自分がいた。
「そう、それならいいんだけど……コリン!顔色悪いわよ!!」
メイリーンがコリンに近づき顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
そしてアバンにも声を掛けられ心配された。
「……えぇ、アバン様ありがとうございます。大丈夫です」
コリンは痩せ我慢をしているようだった。
「見るからに駄目だろ!今日はゆっくり休め。あとは俺らでやるから」
と、アバンに言われコリンはお言葉に甘えることにした。
「……すみません。お先に失礼致します」
コリンはこれ以上皆に心配されないよう、仕事を残し生徒会室から出て行った。
◆◆◆
トボトボと寮まで歩いていると突如ケヴィンと女性の声が隣の空教室から聞こえてきた。嫌な予感がし、コリンは扉に耳を当てた。
『僕が本当に愛しているのはラクス、君だけだよ』
『嬉しいですぅ!だけどケヴィン様には婚約者がいるじゃないですか!』
『アイツとは親が決めた婚約だから愛してなんていない。あんな地味な女、好きになるはずないだろ。僕は君みたいな可愛らしくて綺麗な子が好きなんだ』
『ありがとうございます。私は愛妾でも構いません。このままだとお父様に後妻として年老いた商会長に嫁がされることになってしまうんですもの。正妻じゃなくても私を愛してくれる方と一緒にいたいわ』
『僕もだよ。愛するのは君だけ。でもごめんね、アイツと結婚しないといけないんだ。親が気に入ってるし優秀だからね。僕が伯爵になったらアイツに領地運営を任せて僕達は悠々自適に愛を育んで暮らそうね。そして君と僕の子を継がせよう』
『えっ!大丈夫なんですか?』
『大丈夫、大丈夫。アイツには自分の子として届けを出せばいい。アイツは僕のこと愛してるから許してくれるだろうしね』
『あら!素敵な提案ね』
そして2人の声が急に聞こえなくなった。
『『……‥』』
ものすごく嫌な予感がした私は勢いよく2人のいる扉を開けた。
「あっ!!」
そこには抱擁して熱い口づけを交わしていた。ケヴィンとラクスが……
私にはしてくれたことないのに……
2人は口付けをしながら扉を開けた私を見た。その途端、2人は驚き離れた。
そしてケヴィンは私を見た。そんなケヴィンの様子が少しおかしい。普通なら不貞の場を見られたら慌てて後ろめたさを隠すが、ケヴィンは違った。今までの鬱憤を晴らすようにコリンに毒を吐いた。
「見られたらしょうがない。どうせ盗み聞きでもしてたんだろ。はぁー、この際だからコリンに僕の気持ちを教えてあげるよ。コリン、僕がクラスの皆に何て言われてるか知ってる?」
「……知らないわ」
「はぁー、まったくお前は僕の婚約者のくせに知らないのか!じゃあ、教えてあげる。コリンは優秀なのに僕は容姿だけの男なんだって陰口叩かれてるんだ!それでコリンと比較された僕が惨めな思いしてるの知らなかっただろ!コリンがいれば伯爵は安泰だって嫌味たらしく言われ事だってある!次期伯爵になるのは僕なのに。まるでお前が伯爵になるみたいじゃないか!僕はお飾りじゃない!お前みたいな可愛くない地味な女は僕にしか相手にされない可哀想な女のくせに!調子にのるなよ!僕には隣で寄り添ってくれる優しい女性がいいんだ!このラクス見たいにね」とラクスの肩を寄せ体を密着させた。
不貞を働いていたくせに、全ての原因をコリンに押し付け自分を正当化しているようだ。自分は何も悪くないと。
そんなケヴィンを許せない私は叫んだ!
「ケヴィンが離れようと言ったんでしょ!何で嘘つくの。私が優秀?そんなのあなたの為になると思って頑張って勉強してるんじゃない!ケヴィンと侯爵領を盛り立てるために頑張ってるんだよ!そんなのケヴィンだって知ってるでしょ。あとケヴィンが陰口言われてるなんてなんて知らなかったわ。何で私に相談してくれなかったの!?ケヴィンの婚約者は私よ!!私に相談しないで、そこの令嬢と不貞を働いていたなんて……」
「不貞じゃないね!真実の愛だよ。そんな言葉を使わないでくれる。不愉快だ!元々地味お前なんか初めから好きじゃないし、愛してもいなかったんだ!」
視線をケヴィンに向ければ、勝ち誇った表情を浮かべていた。もうお前なんか愛してないと。
……愛してない……地味……今までのは嘘だったのね……。
色鮮やかだったケヴィンとの思い出が色褪せていくようだった。
「怖いですぅ。自分が愛されていないからって睨まないでください」
「あなたのことなんて見てもいません。今ケヴィンと話ししてるんです!黙って!」
「ひぃっ」
「おい!彼女を怯えさせるな!」
そう、あなたは私よりこの女を取るのね。
「ふふっ、馬鹿な私……ケヴィンにずっと愛されてると思ってたなんて。初めから2人の間に信頼なんてなかったのね……うっ……」
コリンは泣くのをグッと我慢した。
そんなコリンの様子を見ていたケヴィンが再びコリンを傷つけた。
「はあー、信頼?何言ってるんだ。僕はただ、父さんに婚約者を大事にしろって言われてたから我慢して仲の良い婚約者を演じていたんだ。まぁ。信頼はなくても結婚はしてあげるから安心しなよ。結婚しないと両親に怒られるし。気が向いたら抱いてやってもいいけどね」
と、ケヴィンはニヤニヤと笑いコリンを嘲笑いながらクズな発言をした。
「えーっ!ケヴィン様は私だけを愛してるんだから駄目ですよ」
「はっはっは!わかったわかった。君が嫌がるならやめるよ。僕は君だけを愛するんだからね」
そして2人はコリンに見せつけるように再び熱い口づけを交わした。もう2人の世界に入ってしまったようだ。
「…………‥」
ピキピキ……ピキィン!!
再び2人の口づけを見せられたコリンの心が傷ついてしまった。もう、これ以上2人を見ていられない……もう耐えられそうにない……我慢すると自分の心が傷が広がり砕けちってしまいそうだから。
そして、
この場から逃げだした。もうこんな醜いケヴィンを見たくないと……
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