第10話 模擬戦
第10話 模擬戦
遠征を終えて、王宮に帰ってきてからしばらくは、ゲイリーと剣術の練習をしたり、オリビアと魔術の練習をしたりして過ごした。
剣の腕はだんだん上がっていき、スロー・タイムを使わずとも、ある程度はゲイリーと打ちあえるようになってきた。
それを見ていた国王陛下が、あろうことか模擬戦をしようと持ちかけてきた。
「勇者ルナよ、かなり剣の腕をあげたようだな。時魔法を使っても良いから、余と模擬戦をしよう」
「国王陛下自ら模擬戦をなさるとか、一体いつ以来なんだ」
「さすがは勇者様、国王陛下自ら模擬戦だとは」
周囲がざわめいている。
「私のような未熟者で良ければ、お手合わせをよろしくお願いします」
「うむ、では鍛錬の間でいたそう。ついて参れ」
鍛錬の間では、野次馬は一人もおらず、ゲイリーとイオタとオリビアのみが見守っている。
「イオタよ、もしもの時は怪我の治療は任せたぞ」
「承りました」
「では、私が立会人を務めさせていただきます」とゲイリー。
「良かろう。ルナよ、遠慮せず全力でかかって参れ」
「お願いします」
「では、はじめ!」
国王陛下はこの国最強の戦士、流石に隙がない。
「どうした?来ぬのか?」
考えていても仕方がない、出来ることをするのみだ。
私は気合いの声を上げると、ゲイリーの教えの通りの攻撃の型でうって出た。
それを、一歩たりとも動かず、剣で軽く受け流すジュリアス王。
「どうした?その程度ではなかろう?」
「くっ!」
私は、再び攻撃の型通り、ジュリアス王にうちにかかった。
先ほどと同様に、軽く受け流す国王陛下。
そこで、攻撃の途中で、スロー・タイムを発動させ、更に自分の姿が見えにくくなるハイドの魔法を使った。
これでどうだ!
策を弄した渾身の一撃であったが、国王陛下に剣で受け止められていた。
「うむ、今の一撃は良かったぞ。今のは、時魔法を発動した上で、ハイドの魔法をかけたのか?私でなければ、やられていたであろうな」
「勇者ルナよ、しかとその剣を味わったぞ。その調子で研鑽を積むが良い。期待しておるぞ」
「ありがとう御座いました」
「ルナ、凄かったわ」
「ルナ、あの剣戟は僕でも受けられない。凄かった」
「ありがとう。でも、まだまだね。時魔法を使っても相手にならなかったわ」
「国王陛下は魔族最強の戦士だ、本当によくやったよ。それにまた修行を続ければいいだけ」
「ありがとう。頑張るわ」
それからは、日課となった剣の訓練は激しさを増すのだった。
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