第9話 アークワン迷宮
いよいよ迷宮探索が始まります。
第9話 アークワン迷宮
アークワン迷宮は、アーク島にある迷宮の一つで、三層からなる地下迷宮である。
冒険者ギルド・マーリン支部から、徒歩で1時間程の距離にある。
小山の麓に入り口があり、入り口付近にいるギルド職員に冒険者証を見せると、迷宮内部に入ることができる。
迷宮内部はレンガのような壁で覆われ、通路は複雑に入り組んでいる。
多数の部屋と様々な仕掛けが存在し、冒険者を待ち構えている。
ここの第一層に出現する魔物は比較的弱く、また深さも三層までと比較的浅い迷宮なので、初心者が最初に攻略すべき迷宮として知られている。
しかし、初心者向けの迷宮とはいえ、冒険者の命を奪うこともある危険な場所なのだ。
この迷宮を攻略すれば、一人前の冒険者と認められ、Cクラス冒険者と認定されるのだ。
ギルドから迷宮までは、乗合馬車を用いた送迎のサービスがあり、通常はそれを利用するのだが、今回は親睦を深めるために、それを利用せず歩いて行くことにしたのだ。
「メンデスさんが、いきなり声をかけてきたときには、とってもびっくりしたのです」とリン。
「そうですね。少し軽薄に見えたのでなおさらです」とレイリア。
「ん、ボクも危険なやつだと思った」とサーシャ。
「えっ、マジ?ボクは軽薄じゃないし、危険じゃないよ。レンのために頑張っただけだよ」と苦笑するメンデス。
「メンデス~、僕も君がそんなに軽薄だとは思わなかったよ!…なんて冗談だよ。痛い、頭をたたかないで」
たわいもない会話を続けながら、和気あいあいと森の中の道をみんなで歩いた。
迷宮が遠くに視認できる距離になると、「さて、ブリーフィングをしよう」とメンデスが話を切り出した。
「アークワン迷宮の通路は横幅、高さともに6mほどあるんだ。だから、小さめのモンスターでも横並びになれるのはせいぜい5体までだね。だから、それ以上の数が出現するときは、2列、3列…となるわけなんだ」
「で、僕たちは前衛と後衛の二列に分かれ、前衛は、左からレン、僕、リンの順で並ぶ。リンもある程度近接戦闘できるよね?」「うん」
「そして後衛は、左からレイリア、サーシャとしよう」
「ボス戦以外の通常のモンスターとの戦闘の場合は、敵の一列目が2体までなら僕とレンで対応し、他のメンバーは補助をお願いするよ」
「はい」
「敵の一列目が3体以上の場合は、リンも一体だけ対応を頼むよ。その他は僕とレンで対応する。但し、2列目以降にもモンスターが出現したときは、サーシャは後列の魔物に魔法攻撃をしかけてほしい」
「んっ」
「あっ、その時なんだけど、僕は少し前に出たかたちで戦闘するから、相手の2列目に近くなると思う。多分リンもそうなるのかな?なので、後列への魔法攻撃の際は、僕とリンの動きに注意してほしい。お願いします」
「んっ、分かった」
「そうだな、後は実際に戦闘しながら連携を深めていこう」
「了解!」
しばらく進んで行くと、やがてマークワン迷宮の入り口にたどり着いた。
僕たちは、ギルド職員に冒険者証を提示し、迷宮に入っていった。
入り口から中に入ると、下り階段だけがある小部屋となっており、僕たちは迷わず階段を降りた。
迷宮内部に入ると、薄暗いものの、20m程先までは見える。
迷宮の壁はレンガの様な物でできており、壁一面に生えている発光苔が淡く光っているため、何とかそのままでも視覚は確保されている。
ちなみに暗視のスキルを使うと、50m程先までは見えるようだ。
通路は数m先でT字路となっており、右に曲がる通路とまっすぐに続く通路に分かれている。
まっすぐに続く通路は、30m程先に扉が見えている。
「ライトの魔法をかけようか?メンデス」と僕。
「ああ、お願いするよ」
ライトの魔法は火属性の生活魔法で、これを使うと淡い光が出現し周囲を照らしてくれる。迷宮内でも約50m先まで見えるようになり、モンスターの奇襲攻撃に備えることができる。しかし、逆に相手にも気づかれやすくなり、こちらから奇襲攻撃を仕掛けにくくなるのだ。ソロで潜るときには不必要な魔法だな。
「レンさんは火属性の生活魔法が使えるのね」
「そうです、結構便利なんですよね」
「んっ、ボクも火魔法得意」
「サーシャさんは生活魔法も火属性が得意なんですか?」
「ん、火属性と水属性、生活には不可欠」
そのままT字路までやって来ると、見えていなかった右側の通路を確認する。
右側の通路は約50m先に壁が見えており、そこまでの通路の両側には、扉がいくつも並んでいる。
「扉の向こうは部屋になっていることが多いが、中にモンスターが待ち受けていることがよくあるよ。扉を開けるときには要注意だね」とメンデス。
「じゃあ、右側の通路の扉を開けていこうか」
「了解!」
いよいよ魔物との戦闘が間近となり、みんな少し緊張の面持ちである。
通路の右側にある一つ目の扉の前にたどり着くと、目配せをしてタイミングを見計らい、一気に扉を開け、一斉に中へと飛び込んだ。
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