第66話 苦悩と決心
悩んだあげくに決意します
第66話 苦悩と決心
「エライザ、診察というんだけど、おなかを触らせてくれない?」
「えっ、そんなの、はず…」
「ごめん。それがいやなら、病気の状態を鑑定させてくれない?おなかの痛い部分をみながら、鑑定スキルを発動するだけ。ダメかな?」
「ええ、お願いするわ」
「じゃあちょっと見せてね」
「鑑定!」
鑑定スキルを発動すると、エライザの病状が手に取るように分かった。
虫垂には虫垂炎の原因となる糞石は無い。
しかし、虫垂は炎症で腫れており、痛みの原因はこれで間違いない。
炎症は虫垂全体に及んでおり、周囲の脂肪組織に波及している。
周囲に腹水の貯留はあるが、きれいで汚染はされていないようだ。
前世でなら、手術が望ましいが、抗生剤で治る可能性も十分にあるといった所か。
この世界には抗生剤はないな。
クリーン・アップの呪文で、体の表面の病原菌は除去できるが、体内ではどうだろう。
…体外からの呪文では無理そうだな。
お腹を切った状態で、患部周辺に直接唱えれば効きそうだが…。
どうせお腹を切るなら、手術で切除はできないか?
麻酔は?…大丈夫だ。
消毒は大丈夫。
手術器械は?…うーん、何とかなるか。
結紮に使う糸は?…これはどうしようもないな…。
まてよ、糸を使わずにシーリングすればいいか、いける!
では傷を縫い閉じるのは?…いけそうか…。
でも一人ではできない、助手は?…あっ大丈夫だ。
点滴は?…薬を投与するルートという意味では、魔法で代用するから必要ないな。
でも出血したときや脱水を予防するために、水分を投与することは、点滴がないとどうしようもないか…。
しかし今回は虫垂炎だ、一般的には、難易度の低い手術だし、時間もそんなにかからない。
僕が普通に手術できれば、時間の問題も大丈夫だし、何の問題もないはずだ。
それこそ、このまま迷い続けて、時間が経って病状が増悪してからの手術になれば、どんなことが起きるか分からなくなる…。
手術をするなら、今のタイミングだな…。
ただ、前世ならともかく、今の僕に手術の経験はない。
知識は戻っていても、ちゃんと手が動くのだろうか…。
そもそも、前世では合法的に他人に傷をつける(メスを入れる)ことの出来る職業であったが、今はそうじゃない。
倫理的にも問題がある…。
しかし、このまま手をこまねいていても…、エライザは…。
…僕は決心した。
「エライザ、僕が前世でやっていた方法で治療できると思う。僕に任せてくれないか?」
「…わかったわ。このままでは駄目かもしれない。お願いするわ」
「ちょっと難しい話だけれど、どうするつもりか説明する。聞いてくれる?」
「待って、難しい話なのよね?痛みが少し和らいだとはいえ、今の私には辛いわ。レンのことは信じているから、思い通りにして」
「…そうだよね。無理を言ってごめん」
「エライザ、少しだけ、時間を頂戴。道具の準備をして、十分に手順をシミュレートしてから開始するよ」
「もう少し我慢していてね…。いや、エライザ、今もかなり辛いなら、先に魔法で眠っておく?」
「そうね…、レン、お願いするわ」
「エライザ、僕も精一杯頑張る。目が覚めたら元気になっているはずだから、エライザも頑張ってね」
「分かったわ。レン、ありがとう。じゃあ、お願い」
僕は、エライザにスリープの魔法を唱えた。
少し深めに眠りを設定しておく。
「ゆっくり眠っておいてね、僕が必ず助けるから…」
読んで頂き有り難う御座います。宜しければ、高評価、ブックマーク登録をお願いいたします。




