第53話 ゴースト・エンペラー
第53話 ゴースト・エンペラー
「急いではいるぞ」ホークアイのリーダー、ジャジーが叫んだ!
一斉に部屋に入った僕たちの目の前には、悲惨な状況が広がっていた。
炎の大魔法を食らったのか、アークエンジェルの前衛メンバーはかろうじて立っているが、後衛メンバーはすでに膝をついており、パーティーは半壊状態である。
僕は即座に魔弾を一発撃ち込むと、左側よりゴースト・エンペラーに近づき、手裏剣での攻撃に移った。
魔法使い達は、攻撃魔法の詠唱を開始した。
僧侶達は、回復魔法の詠唱をすでに開始している。
エライザは僕の後を追うように移動し、シューティングスターで攻撃を開始した。
メンデスは、アークエンジェルの前衛の前に立ち、盾となっている。
ジャジー達ホークアイの前衛は、右側から接敵し、攻撃を開始した。
ゴースト・エンペラーの動きは速くなく、攻撃を当てることは容易だ。
しかし実体はこの世界に存在しないのか、手応えはまるで無い。
「魔法!」魔法攻撃の警告が入ると、僕たち前衛攻撃陣は、一斉にゴースト・エンペラーから距離を取った。
そこにサーシャ達のファイア・ストームが二連発で炸裂した。
炎の嵐が渦巻く中、静かにゴースト・エンペラーの詠唱が響きはじめた…。
「駄目だ、まだ倒せていない!」
「レン、呪文を受け入れて!」エライザが叫んだ。
エライザが詠唱を開始する。
次にゴースト・エンペラーの攻撃を受けることになれば、ライジングサンやホークアイのメンバーはともかく、治療の済んでいないアークエンジェルのメンバーには犠牲者が出てしまうだろう。
アークエンジェルのアヤカは、剣を構えて立っているが、ゴースト・エンペラーの呪文を避けようともしていない。
動く気力さえ無いのだろう。
それを見たメンデスは、ゴースト・エンペラーとアヤカの間に移動し、支えの盾を構え呪文に備えている。
「あれはニュークリア・バースト!駄目、みんな逃げて!」サーシャが叫んだ。
ファイア・ストームの炎が消え去ったと同時に、エライザの詠唱が完了した。
しかし、ゴースト・エンペラーの詠唱もすぐに終了しそうだ。
ゴースト・エンペラーの前に、核の巨大な炎が出現した。
「もう駄目だ」誰かのつぶやきが聞こえた気がした。
「いや、まだだ!」僕は時空間操作スキルを発動すると共に、強く心に願った。
「時間よ、止まってくれ!!」
その時、僕の耳には確かに聞こえた、遠くに響く荘厳な鐘の音が…。
それと共に時が停止した。
僕は無我夢中でゴースト・エンペラーに斬りかかった。
いつまで時間が停止しているのか分からない。
何発も何発も斬撃を加えていった。
そうして、ようやくゴースト・エンペラーの魔核があらわになった。
僕は迷わず魔核に手裏剣を突き立て、魔核を破壊した。
それと同時に、時は動き出した。
核の炎は消え去り、ゴースト・エンペラーは揺らめきながら、消失していく。
みんなは、何が起こったのか分かっていない。
それでもゴースト・エンペラーが完全に消失すると、歓喜に包まれた。
僧侶達の回復魔法が、回復ポーションがアークエンジェルのメンバーを癒やしていく。
誰も犠牲者はいない。
そんな中、ライジングサンのメンバー達だけは、状況を悟ったのか、僕に微笑みかけていた。
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