第47話 白の鍵
第47話 白の鍵
今のメンバー体制になって、前衛は左から僕、メンデス、エライザの並びになり、後衛は左からミーニャ、レイリア、サーシャと並んでいる。
第一層は、昆虫型の魔物しか出現しない。
昆虫が嫌いな女性陣のために、できるだけ戦闘を避けながら移動を続けている。
僕が索敵をしつつ、ミーニャがマップを確認し、第二層への階段へ最短距離で進んでいく。
しかし、第一層ではどうしても確保しなければならないアイテムが二つある。
白の鍵と黒の鍵である。
白の鍵は、第一層のボス部屋へと通じる通路の途中で必要となり、黒の鍵は、ボス部屋に入るために必要となるようだ。
白の鍵を守るのは、ヒュージ・センティピードだ。
これは超大型のムカデの魔物で、鋭い顎による噛みつき攻撃が危険である。
この攻撃を受けると、高確率で毒状態となり、継戦が難しくなる。
また動きが素早い上に、皮膚はとても硬く、物理攻撃では倒しがかい魔物である。
しかし幸いなことに、魔法攻撃に対する耐性はなく、火属性の魔法が有効である。
「サーシャ、ヒュージ・センティピードへの攻撃は炎の魔法が効果的だ。グロテスクで気持ち悪いかもしれないが、頼んだよ」
「ん、頑張る」
「僕たち前衛はいつも通りで。レイリアとミーニャは戦闘補助をお願い」
「了解ですわ。解毒はお任せあれ」
「さあ、戦闘開始だ」
扉を開け、僕たちのパーティーは一斉に部屋に飛び込んでいった。
大きな部屋の中心部分に、それはいた。
体長が10mを超えそうな巨大なムカデの魔物である。
42本もある足をせわしなく動かしながら、中央部付近で動いていたが、僕たちを確認したとたん、急激な方向転換と共に、僕たちに向かってきた。
「っつ」女性陣は声にならない声を発している。
僕は、グロテスクな姿に騒つく気持ちを何とか抑え、先ほどからチャージしていた魔弾を、頭部にめがけて発射した。
しかし、ヒュージ・センティピードはそれを素早くよけたので、頭部にはヒットせず、体部に着弾した。
魔弾は硬い皮膚を貫通し、緑色の体液が漏れ出している。
しかし、動きは変わらず速く、そのままこちらへ向かってきた。
それを正面から受け止めたのが、メンデスだ。
支えの盾を巧みに使い、相手の攻撃を無効化している。
エライザは、その横に並び立つように陣取り、流麗な所作から攻撃を連発している。
僕は魔弾を撃った後、そのまま接近し、手裏剣での攻撃を繰り返している。
「魔法行く!」そこへサーシャの声が響く。
それと同時に前衛陣は一旦離脱した。
そこにタイミング良く、ファイア・ストームの呪文が炸裂した。
炎の嵐がヒュージ・センティピードを包んでいる。
魔法に耐性のないヒュージ・センティピードなら、これで倒せるかもしれない。
そう考えていたが、思ったよりも相手はタフであったようだ。
弱りながらも、悪臭を漂わせながら、まだこちらに向かってくる。
再びメンデスが、正面からそれを受け止める形になった。
その横でエライザが、そして魔物の右側より僕が攻撃を加えていく。
ヒュージ・センティピードは、流石に動きが悪くなっており、また硬かった皮膚も炎の影響で脆弱化しており、容易にダメージを与えることが出来た。
僕が手裏剣で、エライザがシューティングスターという業物の長剣で、攻撃を加えていき、ついにはとどめを刺すことに成功した。
相手の攻撃を受けることもほとんどなく、完勝と言える内容であった。
しかし、女性陣の顔色は決して良くない。
「みんな大丈夫?」
「ギリギリですわ」と女性陣の声が重なる。
「僕(私)も何とか…」と僕とミーニャ。
「そうか…。僕は大丈夫だけどね」
「メンデス余裕だな…。ところで、念のために聞いておくけど、この迷宮にアレはいないよね?」
「アレって?」
「アレだよ…ほらGだよ!」
「G?何のことだよ!はっきり言えよ!」
「Gって言ったら決まっているだろ?ゴ、ゴキブリだよ!」
「レンは苦手なのか?」
「正直、戦えるという確信が持てない…」
「そうか…。幸いなことに、この迷宮での目撃例はないようだよ」
「良かった…。でも、念のために、安い投擲用のナイフを大量に買っておこうかな…」
「Gは本当におぞましいですわ。やっぱり第一層では、戦闘をできるだけ避けましょう」力なく言ったレイリアの手には白の鍵が握られていた。
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