第45話 理由
第45話 理由
アークニート迷宮まで行くのには、ギルドの送迎馬車を用いる。
アークニート迷宮は、馬車で一日程の距離にあり、徒歩で行くのには少し遠いからである。
送迎馬車は一日一便だけあり、通常は三馬車編成となっている。
それぞれの馬車は6人乗りとなっており、一度でおよそ三パーティーを運ぶことが出来る。
これは一見少ないようにも思えるが、一旦迷宮攻略を始めると、しばらくは戻ってこないことが多いので、十分であるらしく、空きが出ることも頻繁にあるようだ。
僕たちのパーティーは、送迎馬車に乗るべく、ギルドに来ていた。
「では、アークニート迷宮攻略の手続きをしておきます。気をつけて攻略を進めてください。迷宮のすぐ近くにあるギルド直営の宿泊施設には、ギルドのカウンターがあります。迷宮攻略中は、そこを利用して下さいね。ではお気をつけて」
今日、アークニート迷宮へ出発するパーティーは、僕たちのパーティーを合わせて、三つあるようだ。
僕たちライジングサン、それにBランク冒険者のパーティーが二つ、アークエンジェルとホークアイだ。
アークエンジェルは、6人の女性からなるパーティーで、リーダーは人間族であるアヤカがしている。
ホークアイは、5人の男性からなるパーティーで、リーダーは犬族のジャジーである。
「Cランクパーティーのライジングサンです。今回は宜しくお願いします」と僕たちは、先輩であるBランクの冒険者パーティーに挨拶をした。
「こちらこそお願いするよ」とホークアイの面々。
「宜しくお願いね」とアークエンジェルの人たち。
「それじゃあ隊列は、僕たちホークアイが先頭で、真ん中にライジングサン、後方にアークエンジェルでどうかな?」
「異論は無いですよ」
「それじゃあ宜しくお願いします」
*
馬車の旅はあまり快適とは言えなかった。
とにかく揺れが酷いのである。
短時間なら問題ないが、長時間ともなるとお尻が痛くなる。
僕は、初めて王都に向かったとこのことを思い出しながら、ボーと外を眺めていた。
「ねえ、レン、ちょっと聞きたいことがあるのだけれど…」
「何かな、エライザ?」
「模擬戦で、レンは本気を出してなかったんじゃない?」
「えっそんなことはないよ…?」
「そう?じゃあ言い方を変えるわ。持てるスキルを駆使していなかったでしょう?レンには時空間操作スキルがあるのに、どうして使わなかったの?」
「あー、そのことか…。話せば、少し長くなるけどいいかな?」
「ええ、知りたいわ…」
「時空間操作スキルは強力で、切り札になるスキルだよ。だから、少し前まではスキルのレベルを上げるのに躍起になっていた。レベルが上がるとね、時間に干渉する力が強くなって、時間の流れをより遅くすることが出来る。その上、スキルの持続時間が長くなっていくから、レベルを上げることで、すべて上手くいくと思っていた。だけど違ったんだ…」
「何が違ったの?」
「この前、魔族との戦闘があったんだ。その時、時空間操作スキルを使ったんだけど、時間の流れが遅くなった中で、相手も僕と同じような速さで動くことが出来たんだ。最初は、レベル差から来る速度の違いかとも思ったけど、僕もステータスをカンストしてみて、そうでないことが分かった。もし、魔族のスピードの上限が、僕たち人間族よりも遙かに上だったら、その限りではないけど、そんなことは多分無いと思うから…」
「それなら、やっぱり相手も時空間操作スキルを使ったってこと?」
「おそらく、そうだと思う」
「それなら、やっぱり時空間操作スキルのレベルを上げることが重要じゃない?それにスキルを用いて戦闘する練習も同じく大切だと思うわよ?」
「もちろんそう。でもね、僕の時空間操作スキルはレベル9で、カンスト間近なんだ。これ以上の上乗せはあまり期待できない…」
「!!」
「だから、時空間操作スキルを使って同じ土俵に立ったときに、より上手く戦えるように、スキルを使わない状態で戦闘技術や剣技を極めていきたいんだ」
「なるほど…分かったわ。私もできるだけ協力する」
「エライザ、改めてお願いするよ」
「レン、勿論よ」
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