第4話 家族
第4話 家族
翌日、落ち着いてきた俺を見て、ライトとディアはいろいろ提案をしてくれた。
何も分からない僕に、この世界で生きていくために必要な知識と技術を教えてくれることになったのだ。
具体的には、現代文字、古代文字(魔法書の解読に必要)、計算法、歴史学、地理学、魔物学、薬草学といった座学と、魔法操作、剣術等の実技訓練だ。
それに、名前がなければ不便だろうと、僕にレンと名を付けてくれた。
自分で言うのも何だが、僕は優秀な生徒だった。
さらにライトとディアは優秀な先生であった。
そんなことで、いろんな知識や技術を瞬く間に吸収して行くことができた。
村での生活は楽しく充実していた。
ライトとディアは、我が子のように僕と接してくれ、そして育ててくれた。
そして僕の方も、いつの間にかそんな二人をお父さんお母さんと呼ぶようになっていた。
しばらくたったある日、ようやく僕は思い切って、自分のことを二人に打ち明けることができた。
気がつけば、自分は向日葵の咲く小山の上で寝ていたこと。
それ以前の記憶がなく、思い出そうとしても、頭にもやがかかって何も思い出せないこと。
自分の不思議な能力に気づき、それを使いながら魔物をやりすごし、未踏の森から脱出してきたこと。
そして、その不思議な能力とは、並外れた身体能力、気配察知能力、ステルス能力、時間操作のような能力等があることなどを話した。
二人は神妙な趣で話を聞いていた。
その後、二人から奇異な目で見られないか心配だったが、杞憂に終わり、二人は特に変わらず、僕に優しく接してくれた。
そして1年半ほどたったある日のこと。
いつものように皆で夕食をとっていると、二人から大切な話があるという。
「レン、おまえがここに来てから1年半になるな。ここの生活はどうだ?楽しめているか?さみしい思いはしていないか?」
「うん、大丈夫だよ、寂しいときもあるけど、楽しいことの方が多いよ。いつもありがとう。」
「そうか…。だがな、そろそろこれからのことを考えなくちゃいけない。おまえはここまでとても頑張ってきた。おまえは、私たちの優秀な弟子であり、それにもまして、とても大切な息子だ。私たち夫婦は、おまえがいてくれて、とても楽しく充実している。だがな、おまえはずっとここにいて良い人間じゃない。おまえはすごい才能を持っている。もっと広い世界を見て、いろんな経験を積んで、もっと成長する必要がある。」
「そうね。私もそう思う。レンは素晴らしい才能を持っているわ。身体能力も凄いし、生活魔法は本当に素晴らしい。まあ攻撃魔法の方はからっきしだけどね。みんなは普通に生活魔法を使えるけど、せいぜい1-2種類の属性しか使えないものなのよ。それなのにあなたは、火属性・水属性・土属性・風属性、何でも使えるもの、凄いわ!」
「それでな、私たちがそうだったように、レンも冒険者になったらどうかと思うんだ?冒険者登録は12歳からできる。レンが何歳かはっきりは分からないが、多分大丈夫だろう。もうスキルも発現しているし、体の大きさからも、多分それぐらいになっているだろう。それに、冒険者登録をするときに能力鑑定をするから、レンのスキルや能力、職業、年齢なんかもわかる。登録するには王都リベリスまで行かなければならないが、私たちが旅行がてらに連れて行ってあげるよ」
「それにな、話していなかったけど、最初にレンと会ったときから、おまえが転生者であると気づいていたんだ。まあなんだ、おまえは変てこな服を着ていたしな。それにレンが来た方角には未踏の森しかない。そしてその奥の丘には、異世界から転生し活躍した英雄の伝承が残っているんだ。もしかしたら、おまえは何か使命を持って転生して来たのかもしれないよ」
「…分かったよ、お父さん、お母さん、言う通りにするよ。ちょっと不安もあるけど、とても楽しみでもある。僕が冒険者になってここを出て行くことになっても、いつまでも元気でいてね。今まで本当ありがとう」その晩、今までの感謝の気持ちと離れていく寂しさで、あふれる涙を止めることはできなかった。
初投稿です。ぼちぼち頑張りますので、よろしくお願いします。