第3話 出会い
この世界では、レンの初めての人との出会いです。
第3話 出会い
森林を抜けると、周囲には平原が広がっていた。
遠くにぼんやりと村が見えてきたが、歩くとまだしばらく時間がかかりそうだ。暗くなるまでに村に着きたいなと思い、思いっきりスピードを上げてみた。
すごいスピード、景色が飛ぶように流れる。
しばらく行くと、平原は踏み固められた道のようになり、その両側には畑が広がってきた。
さらに進んでいくと、畑仕事を終えたであろう壮年の男性が見えた。
この世界で初めての人だ!いや、初めての人って、そういう意味でじゃないよ。
うれしくなって、咄嗟に声をかけてしまった。
するとその男性は、一瞬キョトンとした表情をし、それから気を取り直したように笑顔を浮かべると、挨拶を返してくれた。
不思議なことに言葉は通じるようだ。
「やあ少年よ、君は一人かい?両親はどうしたんだ?この先は『未踏の森』しかないはずだが…いったいどこから来たんだ?」
えっ?少年?えっー…?今まで気づかなかったが、俺は少年なのか?
自分の体を確認し、驚愕した、気が動転している。
気持ちを何とか落ち着かせ、頭を回転させて会話を続けようとする。
…が、言葉が出ない。
「なんだか混乱しているようだね。子供が夜に一人では危険だ。私について来ると良い。私はライト、この先の村に住んでいるんだ。で、君の名前は?」
えっ、名前?…何だろう?名前さえも思い出せない。
「あの…記憶がなくて何も思い出せないんです。名前もわからない…。」
「そうなのか…、大変だったんだな。これからいろいろ思い出せるといいね…。このあたりの夜は危険だ。不安だろうけど、とりあえず私についてきて、村までおいで。」
困惑したままであったが、その笑顔を見ているとなぜかとても安心でき、素直について行くことにした。
俺、いや僕って少年だったんだ…と驚きながら。
*
村に着く頃には夜の帳が降りていた。
村の周囲は塀が囲んでおり、一カ所だけある門をくぐると、村の中が観察できた。村は小さく、広場を中心にして、家屋は30軒ほど散在しているのみだ。
広場の真ん中には、塔のような高い建物があり、見張りに使っているのか、人の姿が見える。
門のほど近く、他と比べやや大きめの家に着くと、中に案内してくれた。
「ただいま、ディア」
「お帰りなさい、ライト。あれ!その子は?」
「ああ、それなんだが、どうもこの子は記憶喪失みたいでね…。まあ後でゆっくり話そう。それよりこの子のご飯も用意してくれるかな。」
「もちろんよ。」そう言うと、ディアと呼ばれた女性はこちらに顔を向け、優しく微笑んで声をかけてくれた。
「私はディア。頼るあてがないんでしょ?でも安心して。しばらくここで暮らすと良いわ。ちょっと待っててね、すぐにご飯の支度をするから」
みんなで食べる食事はとてもおいしかった。
ラビフィンのステーキとサラダ、それに卵の入ったスープ。
調味料って大切だよね。
塩が入っているだけで味が全然違う!
食事をしながら、ライトとディアは自分たちのこと、この世界のことを話してくれた。
ライトとディアは、かつて名の通った冒険者だったらしい。
冒険者というのは、各地にある迷宮を攻略し、生計を立てる人たちのことだ。
その他にも要人の護衛、魔物退治、時には盗賊退治などいろんなことをこなす、人気の仕事だそうだ。
大きな町には冒険者ギルドがあって、そこで登録すれば冒険者となれるらしい。ライトとディアはかつて冒険者として同じパーティーに所属し、各地の迷宮を攻略した。
ライトは元戦士で、ディアは元魔法使い。
冒険者を引退した後、このリーズ村に移り住んできたそうだ。
村に来てからは、畑仕事をしながら、村を襲う魔物を退治したり、ときには相談役までこなしているそうだ。
かつて、子宝に恵まれたことがあったが、まだ小さいときに事故で命を失ってしまい、それからは二人だけで暮らしてきたという。
この世界は危険な魔物が存在している、過酷な世界である。
思ったよりも死は身近なものなのかもしれない。
ここリーズ村は、ユリアス大陸の中央部にあるリベリス王国という国の東にある辺境の村で、南西方向にある王都リベリスまでは馬車で1週間ほどの距離にある。北には大森林が広がっており、そのさらに先にはホクト海がある。
東には広大な砂漠があり、ムーア国の領土となっている。
西にはリベリス王国の穀倉地帯や牧草地が広がる。
リベリス王国は、大陸の中央部にある由緒正しい王国で、サリア教を国教としている。
代々、信心深い賢王による統治がなされており、比較的豊かな大国である。
ひとしきり話が終わると、俺のことにはふれず、寝室に案内してくれた。
そして僕はベッドに入ると、瞬く間に眠りに落ちるのだった。
初めての投稿です。ぼちぼち頑張ります。よろしくお願いします。