第20話 プレゼント
ある休息日の話です。
第20話 プレゼント
それから、何度も迷宮に潜り、コボルト・キングと戦闘をした。
戦闘を重ねるたびに、コボルト・キングへの対処が上手くなり、危険を冒さずに倒せるようになっていった。
しかし、メンデスが言っていたように、第二層の攻略はほとんど進まなくなっていた。
前半部分でのモンスターのエンカウントが多すぎて、後半部分に入る頃には残りの魔力が乏しくなってしまうのだ。
後半部分でモンスターを1~2回も倒すと、呪文切れに近い状態となり、宿泊施設に戻り、休憩せざるを得なくなるのだ。
しかも、運が悪いことに、ようやくレベルアップを果たしたレイリアとサーシャは、新たに効果的な呪文を覚えることができず、呪文回数もあまり増えなかった。
レイリアは、レベル5で覚えることが多いエクストラヒールの呪文を、レベル4になったときに覚えたので、その影響が出たのかもしれない。
サーシャは、新たな攻撃魔法を習得したかったのだが、相手の防御力を下げる風属性のデバフ魔法しか習得できなかったのだ。
そんな状況下で迷宮探索を数日続けた後の休息日に、僕たちのパーティーは、みんなで一緒に買い物に出かけることになった。
僕は、マーリンに最近できたというレストランに予約を入れ、みんなで昼食時に集合するよう呼びかけた。
「ん、なかなか美味」
「本当なのです。美味しいのです」
「レン、メンデス、今日はありがとうね。とても美味しいわ」
僕たちは、美味しい料理に舌鼓をうち、気分転換を図るのだった。
「これ、僕とレンからプレゼント。どうぞ受け取ってね」といいつつ、メンデスはプレゼントを取り出した。
「レイリアとサーシャの二人には、それぞれこの指輪。これは魔力の指輪と言ってね、着けているだけで少しずつ魔力が回復するんだ。優れものだよ」
「リンにはこの短剣。これは切り裂く短剣といって、かなりの業物だよ。切れ味は、今までより数段上がるんじゃないかな」
「ありがとう!!とても嬉しい(わ、のです)」三人の声が重なる。
「この1ヶ月は迷宮攻略があまり進まなかったよね。気持ち的にはしんどい部分もあるけど、それでも僕たちは着実に経験値をためているし、懐も温かくなっているよ。だからみんなにお礼をと思って」
「本当にありがとう。とても気が利くのね?あなた達とパーティーを組んで本当に良かったわ」
「ん、感謝。これからもよろしく」
「ありがとうなのです。これからもみんなで頑張りましょうなのです」
「喜んで貰えて何より。さて、この後だけど、みんなで魔法道具屋へ寄ろうか」と僕。
「何かお目当てでもあるの?」
「まあちょっとね」
僕たちはレストランを後にすると、ギルド近くにある魔法道具屋に来ていた。
魔法道具屋には、各種のポーションをはじめ、薬草や毒消し草といった消耗品、それにいろいろなアクセサリーが、所狭しと並んでいる。
僕はアクセサリーコーナーに来ると、いろんな種類のアクセサリーが並んでいる中で、ひときわきれいに輝いているペンダントを手に取った。
このペンダントは、あらかじめメンデスとともに、チェックしておいた物だ。
一つ当たり2000ドールする。
「これを五つください」
「はい、合計で10000ドールになります。…ありがとうございました」
「10000ドールも!大丈夫なの?」と驚くレイリア達。
「大丈夫、問題ないよ」と微笑む僕とメンデス。
僕は買ったペンダントを一つずつ配ると、みんなに説明した。
「これは、僕とメンデスからパーティーメンバー全員へのご褒美。これは生命のペンダントといってね、身に着けていると徐々に体力が回復するペンダントなんだ。ここまで僕たちのパーティーはみんな無事にやってこられた。今後もみんな無事でいられるように、そう願いを込めて、全員で身に着けようと思って、メンデスと選んだんだよ」
「ありがとう!」
「うん、これからもみんなで頑張って行こうね」
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