第2話 大森林
レン君の異世界での生活が始まりました。
第2話 大森林
森林の中を歩いている。
獣道はあるが、それを使っちゃ駄目だ。
曲がりくねった獣道を使うと、方向を間違えるかもしれない。
手刀を使って、雑草や木の枝をはらいながら、ただまっすぐ歩いて行く。
手刀の切れ味はすさまじく、何の抵抗もなく道を切り開いていける。
高い木を見つけると、時々木に登っては、村の方角を確認する。
木登りなんて、今の俺には朝飯前だ。
でも村はまだまだ遠いな。
日は暮れかけてきている。
ここらで野営の準備が必要だ。どうしたものか?
この世界で意識を取り戻してから、何にも食べてない。
喉も渇いているし、とても空腹だ。
まずは水と食事を何とかしなきゃ。
気を取り直して、改めて周囲の気配を探る。
どうやら、自分を中心に半径300mほどの円が察知できる範囲のようだ。
強そうな大きな魔物はいない。
ウサギやリスっぽい魔物がちらほらいる。
音もなく木から飛び降りると、10mほど先にいるウサギのような魔物まで気配なく近づき、手刀一発で仕留めた。
獲物は30cmほどの大きさのウサギ型の魔物だ。
なぜか、それがラビフィンという魔物だと認識できた。
倒すと情報が入ってくるのか?なんだかゲームみたいだな。
いろいろ気になることはあるが、するべきことをかたづけなくては。
まずは臭みをとるために血抜きをした。
それから血の匂いにつられて魔物が来るかもしれないので、血のついた場所を隠すように土や落ち葉で覆った。
そして速やかにそこを去ることにした。
索敵しながらしばらく移動していると、せせらぎの音が聞こえてきた。
喉が渇いているので、せせらぎの方を目指す。
すると、すぐに川にたどり着いた。
川の水量はそれほど多くはないが、河川敷はそこそこ広い。
水はきれいで飲めそうである。
それでも心配だったので、飲める水かどうか判断すべくじっと見てみた。
すると、なぜか毒がないことだけは分かった。毒の鑑定だけはできるのかな?
すぐに渇いた喉を癒やし、一息ついた。
それから、石を集めて四角に囲い、即席の竈を作った。
薪になる木の枝と乾いた枯れ葉を集めてきて、火をつける。
火をつけるのって大変なんだな。
何度もトライした後、最後には何かスキルが作用したみたいで、ようやく何とか着火することに成功した。
肉の下処理は手刀で難なくできた。
スキルって便利だ、自分の能力をちゃんと把握しておかなくては。
そんなことを考えながら、ラビフィンを焼き、この世界での初めての食事を終えた。
身体強化のためか、疲れを全然感じない。
いろいろ試して、自分の能力やスキルを確認する必要がある。
それからしばらくは、いろいろと実験を行い、ある程度の自分の能力やスキルを確認することができた。
身体能力はとても高い。
音もなくすごいスピードで移動でき、力一杯に跳躍すると、数m以上にジャンプすることができた。
暗闇の中で目をこらすと、ほとんど光がなくとも十分によく見えた。
遠視能力だけではなく、暗視能力もあるようだ。
強く意識すれば、聴力も驚くほど優れていて、遠くの音まで聞こえるのが分かる。
気配を消すのもお手のもので、ステルス能力もあるようだ。
鳥が飛び立つのに気づき、意識を集中して見る。
その途端、鳥の動きが遅くなる様に見えた。
元の半分くらいのスピードに感じる。
認知能力が高いのか?それとも思考速度が速くなるのか?
でもさっきの戦闘では、なんだか良くは分からないけど、違和感があった、なんだろう。
戦闘中のことを回想してみる。
あのとき、オークの動きは緩慢に感じたが、自分自身は素早く動けていたことに気がついた。
そこで、また実験である。
周りの動きが遅く感じられるときに、自分自身はどのように動けるかを試すことにした。
試してみると、周りのスピードが半分ほどに見えているときも、自分自身はすごいスピードで動けることが分かった。
これは認知能力の向上や思考加速といった類いではないようだ。
時間に干渉して、時間の流れが遅くなっているということか…?
よく分からない。
いろいろ検証する必要があるな。
気持ちがだんだんわくわくとしてきて、さらに実験を続けることにした。
今度は、先ほど竈に着火したときのことを考えた。
あのときは、手から火を出すことはできなかった。
試しに、手から火を出すイメージをしてみたが、やはり出てこない。
でも、少し手が熱くなる様に感じた。
今度は手が熱くなるイメージをして、川の水に手をつけてみた。
ジューッ!あたかも熱した石を水につけたような現象が起こった。
これは、手がかなり熱くなっているということだ。
これは何だ?手が熱くなる魔法か何かなのか?
…でもこれって何に使えるだろう?火を起こすとか、水を温めるとか、そんなことに使えるかな…?
それからも、他に何か魔法が使えないか試してみたが、火だけでなく水も氷も何も生み出せそうになかった、残念だ。
今日はここまでとしよう。
寝る場所を確保するべく森林へと戻り、周囲に大きな魔物がいないことを確認してから、大きな高い木に上り、樹上で眠ることにした。
翌朝、目が覚める。
変な体勢で寝ていた割には、身体は問題ない。
目指す村の方向を改めて確認すると、木から下り、その方向に進み始めた。
気配を察知し、索敵しながら進む。
大型の魔物を察知すると、気づかれないよう少し遠回りしながら進んだ。
スライムやラビフィン等の比較的小型の魔物は、こちらに気づくと、勝手に逃げていくことが多い。
時々襲いかかってくることもあるが、その時は手刀で一撃である。
そのように森林を進んでいき、もう一日を森林で過ごした。
そしてさらに翌日、ようやく森林を抜ける頃には、また陽が傾きつつあった。
初めての投稿です。ぼちぼち頑張ります。