第58話 吸収
第58話 吸収
やっぱり効果ないわよね。ドラゴンには、鱗自体に魔法耐性があると言うけれど、あれは絶対魔法防御ほどではないけれど、かなり強力な魔法結界も併せ持っているわね。
やはり、定石通りに行くか…。
そう考えたエライザは、定石通りに味方にバフをかけ始めた。
真ん中の頭の上にいる僕は、僕を振り落とそうとする激しい動きに耐えながら、かつ、他の首からの魔法攻撃を避けながら、一点突破すべく、何度も何度も同じ部位に攻撃を与え続けていた。
今のところは、鱗に変化は見えない。
でも幸いにも、手裏剣の方にも影響は出ていない。
愚直にこれを続けていれば、何とか打ち破ることができるだろうか…。
何度も何度も攻撃を続けた。
しかし、変化は訪れない。
流石にもう無理か?とそう思い始めた。
エライザはドラゴンのブレス攻撃や魔法攻撃を華麗に躱しながら、いろんな部位に攻撃を加えている。
どの鱗も攻撃が通らないほどの強度を誇ってはいるが、剣の感触から、鱗によって強度が違うことがわかったからだ。
例えば腹部のある部分では、その他の部分より強度が明らかに劣っている。
もしかしたら、攻撃が通るような比較的脆弱な鱗が有るかもしれない。
そう考えながら、ひたすら場所を変え攻撃を加えている。
しかし、攻撃が貫通するような場所は見つからない。
これならば、少し強度が劣っていた腹部の鱗を、集中的に攻撃した方が良いかしら…、そう考え始めた。
分身体はドラゴンの背部で、三本の尻尾による鞭のような攻撃を躱しながら、隙を見いだしては、尻尾の付け根に攻撃を加え、切断した。
先ほどは切断した尻尾が再生したが、再生する回数にも限度が有るかもしれない。
そう思い、何度も尻尾を切り落とした。
しかし、何度やっても同じ事だった。
それならばと、違う尻尾を切断したり、切断する尻尾の順番を変えたりと、いろいろ試してみたが、結局は10秒ほどで尻尾が再生し、元通りとなってしまうのだ。
そこで意を決して、もう一度共通部分の付け根を攻撃したが、こちらも先ほどと同様に、攻撃が通じない。
これは厳しいかもしれない…、そう思い始めた。
その時である、ルナは意を決したように、ドラゴンに向かって走り出した。
そして、僕達に退避するよう警告を発した。
僕と分身体は瞬間移動して安全圏に脱した。
エライザも、攻撃を避けながら退避を始めた。
それを確認したルナはストップ・タイムを発動させた。
一瞬ドラゴンの動きが止まったが、ドラゴンは対抗し、時間停止を上書きした。
ルナはすかさず、アルティメット・グラヴィティを発動し、ドラゴンの動きを封じにかかる。
それでも、動き出しそうだったので、完全に動けなくなるまで何度もアルティメット・グラヴィティを重ねがけした。
完全に動かなくなるまでに、かなりの魔力を消費した。
魔力欠乏の症状が出始めている。
それにもめげずドラゴンへと向かっていった。
僕は瞬間移動した後に、状況の確認をした。
ルナがストップ・タイムで時間を停止させた。
エライザは時間が止まっても、そのまま退避行動を続けている。
ドラゴンが時間停止を上書きした。
ここで、僕も時間停止を上書きしようかとも考えたが、ドラゴンがどの程度時間を停止できるのかがわからないうちは、得策ではないと思い、そのまま状況を注視することにした。
ルナはアルティメット・グラヴィティを重ねがけしているようで、完全にドラゴンを封じてはいるが、魔力切れが心配だ。
ルナはドラゴンのもとまで来ると、アルティメット・グラヴィティの範囲に、わざと少し開けた穴から飛び出している、ドラゴンの足に触れた。
そして、尽き欠けた魔力を全力で吸収し始めた。
ルナは、レンに魔力を譲渡したことはあったが、他人から吸収したことはなかった。
でも原理は同じなので、上手くいくと確信していた。
three-headed dragon kingの魔力は膨大で、直ぐに魔力の半分ほどが回復している。
そこで、アルティメット・グラヴィティを更に重ねがけし、魔力を消費した。
それからは、魔力の残量が6割くらいになるように調節しながら、魔力の吸収と呪文の発動を続けた。
しばらく続けていると、three-headed dragon kingの魔力が尽きてきているのがわかる。
しかし、時間停止も終了してしまいそうだ、急がなきゃ。
気持ちに焦りが生じたとき、レンが時間停止を上書きし、私の下に瞬間移動してきた。
これで私が動けなくなっても何とかなるわね、そう思った瞬間、ほぼ魔力がつき身体を維持できなくなったthree-headed dragon kingが超重力により肉の塊のように潰れてしまった。
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