第54話 消失
第54話 消失
ニュークリア・バーストの炎がワイバーン三体を捕らえた。
そう見えた瞬間に、淡い光のベールがワイバーン三体を覆った。
「!!あれは絶対魔法防御!なぜ…?ワイバーンに絶対魔法防御なんてあり得ない…。一体何が…」と困惑するオリビア。
ニュークリア・バーストの炎は、未だにワイバーンを覆い尽くし、激しく燃えている。
しかし、全くダメージを与えていない。
むしろ、炎に包まれている間は攻撃をすることもできず、ワイバーン三体は急激に回復しつつあるようだ。
「くそっ!気を抜くなよ!炎が消えたら、もう一度一斉に攻撃だ!」グランデが叫ぶ。
しかし、前衛の三人はそれまでの疲れと、先ほど大技を使ったことで、今は十分に力を発揮できそうにない。
おまけに絶対魔法防御のために魔法攻撃は意味をなさない。
「なんてことだ…」
そうしているうちに、ニュークリア・バーストの炎の勢いが徐々に衰えてきた。
「うおおおおお!」クーガが気合いの叫び声を上げた。
グランデもメンデスも気合いを入れ直した。
そして、ニュークリア・バーストの炎がふっと消失した。
それと同時に、なぜかワイバーン三体も消え去ってしまった。
「えっ!!消えたのか…?」
「一体何が起こったんだ?」
「…まだ気を抜くなよ!俺が確かめてくる」グランデがそう言いながら、ワイバーンがいた所に歩いて行った。
グランデはその辺りを調べているが、ワイバーン三体は跡形もない。
それに魔物の気配も完全に消失している。
「何だかわからないが、助かったようだな…」
「とにかくありがとう。おかげで生き延びたよ。君たちの助けがなかったら、命はなかっただろう。本当に感謝する」
「どう致しまして。リンダさんの依頼です、彼女に感謝して下さい。ところで、自己紹介がまだでしたね。僕がメンデス、彼女が魔法使いのオリビア。そして彼女がヒーラーのイオタです。今更ですが、宜しく」
「ああ、こちらこそ宜しく。俺がリーダーのグランデで、こいつがクーガ。それに、シェリルとレナだ。本当にありがとう」
「しかし、何が起こったんだろう…。ギルドには起こったことを報告するしかないが、俺達なりの考察が必要だな…。誰か、説明できるやつはいるか?」
「わからないな、初めての経験だ」とクーガ。
「私たちにもわからないわね」とシェリルとレナ。
「メンデス達はどうだ?何かわからないか?」
「そうですね…、何もわかりません」
「ワイバーン三体が突然に消えたのも不思議だけど、その前のニュークリア・バーストのときの絶対魔法防御も、通常はありえないと思うわ…」とオリビア。
「あの状態で、ワイバーンが絶対魔法防御を発動できたとは思えないし、私が知る限り、今まででワイバーンが絶対魔法防御を使った記録はないはずよ…」
「私の知る限りでもそんな記録はないわ」とレナ。
「博識の魔法使いが二人共に知らないか…。それなら、そちらも問題だな…。なぜワイバーンを絶対魔法防御が守ったのか…。そして、どうしてワイバーンは消え去ったのか…。もしかしたら第三者の介入があったのか…?俺には、俺達とワイバーン三体以外には気配は感じられなかったが…。誰か第三者の気配を感じたやつはいるか?」
皆、否定的に、首を横に振っている…。
戦いの途中で、感覚を研ぎ澄ましたAクラス冒険者に気付かれずに、その場に存在するなど、普通ではあり得ない。
謎は深まるばかりである。
「考え込んでも仕方がないか…。とりあえずギルドに戻って報告だ。君たちも一緒に戻るか?」
「そうしようか。オリビア、イオタ、良いよね?」
「ええ。今日はジャイアント討伐も有ったし、早く、ゆっくりと休みたい気分だわ」とイオタ。
「えっ、ジャイアント討伐?それは、ミーレでの話か?」
「ああ、ミーレにジャイアントが接近してきたんだよ。まあそれは、帰る途中に詳しく話をするよ」
「そうか。じゃあ、早速だが、皆が良ければ出発しよう」
「OK」僕達は、洞穴の入り口へと歩き出した。
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