第53話 ワイバーン
第53話 ワイバーン
僕達が奥へと進んでいくと、戦闘の気配がしてきた。
「急ぐよ。イオタは治癒魔法の準備をしておいて」
「わかっているわ」
僕達は急いで洞穴の奥までたどり着いた。
そこはかなり広い空間となっており、二人の戦士と三体のワイバーンが戦闘を繰り広げている。
二人の戦士のうち一人はまだ余裕がありそうだったが、もう一人はかなりダメージを受けていて危険な状態だ。
その後方には、二人の冒険者が倒れている。
「イオタ、先に戦士の一人の治療をして!」僕はイオタに頼んでから、二人の戦士の間に割って入った。
「助けに来た。タンクは任せて」
そう言いながら目の前のワイバーンに斬りかかっていった。
ヘイトを稼ぐため、わざと大振りしながら、一体のワイバーンにダメージを与えた。
僕と入れ替わる形で、ダメージの大きかった一人の戦士が後退していった。
僕はすかさず流星剣をくり出し、無数の突きをヒットさせ、一体のワイバーンを瀕死の状態にまで追い込むことができた。
その攻撃で上手くヘイトを稼ぐことができ、他の二体のワイバーンは僕に標的を変え、僕を攻撃してきた。
僕は、盾を用いてワイバーンの攻撃を巧みにいなしながら、もう一人の戦士に話しかけた。
「ヒーラーと魔術師もいる。一旦ここは僕に任せて、パーティーを立て直して」
「わかった。だが、気をつけろ。あいつらは普通じゃない。統制がとれた動きで、パーティーのようにお互いを助け合っている」
「わかった」
そうしている間も、二体のワイバーンは瀕死のワイバーンを庇うように動いている。
僕は、瀕死の一体にとどめを刺そうとするが、そうすることができない。
瀕死に陥っていたワイバーンも凄い勢いで回復しつつある。
「厄介だな。倒しきらないと、元の木阿弥か」
僕は、中途半端に攻撃をしてリスクを負うよりも、戦況が整うまでは防御に徹する方が得策だと考え、適度にヘイトを管理しながら、防御に徹することにした。
その間、グランデの指示で、イオタは戦士に次いでtime is moneyのヒーラーに回復魔法をかけている。
またグランデは、ワイバーンが高レベルのため魔法耐性が高く、ほとんどの攻撃魔法が無効化されてしまったことから、オリビアにはパーティーにバフをかけるように指示を出している。
グランデは適切な指示で、パーティーを立て直していった。
僕は集中を切らさず、ダメージを受けることなくワイバーンの攻撃をしのいでいたが、瀕死の状態に陥っていたワイバーンが回復を終え、三体で僕を攻撃してくると、流石に捌ききれなくなってきた。
オリビアのバフがなければ危なかっただろう。
それでも、何とか攻撃に耐えていると、戦士二人が戻ってきた。
「よし、ここからは一気に攻める。ヒーラーが二人も居る、ある程度は捨て身で一気に行くぞ」
「了解」
先陣を切ったのはメンデスだ。
メンデスは戦士の究極技の一つである重撃滅壊陣を使った。
この技は、中規模の範囲技で、自らが高速に回転しながら敵を斬り刻んでいく技である。
メンデスは、ワイバーン三体に大きなダメージを与えながらかけぬけ、少し離れたところまで退避した。
次はグランデだ。
「魔剣、五月雨!」
グランデは、美しい型から、流れる様に、舞う様に、無数の斬撃をワイバーン三体にヒットさせた。
更にもう一人の戦士クーガが、流星剣を炸裂させ、ワイバーンは三体共に瀕死の状態となった。
通常、魔法耐性が高い魔物といえども、瀕死の状態ではその耐性が下がり、魔法攻撃が有効になる。
オリビアはその判断から、僕たちに魔法攻撃の警告をした後、ニュークリア・バーストの呪文を炸裂させた。
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